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コロナ禍の「デリバリーサービス需要」など、同じ消費行動でも価値観により差異が見えた定量調査の結果 〜独自の価値観セグメンテーションモデルにより利用行動の背景要因を考察〜

シナジーマーケティング株式会社
代表取締役社長 田代正雄

シナジーマーケティング株式会社(所在地:大阪市北区、代表:田代 正雄、以下当社)は、全国47都道府県に在住する20~69歳の男女5,000名を対象に「コロナ禍における消費行動の変容とライフスタイルに関する定量調査(2021年5月度)」を実施。当社独自の価値観セグメンテーションモデル「Societas(名称:ソシエタス、以下Societas)」(※1)を活用し、従来の属性やWeb行動履歴などだけでは掴みきれなかった生活者の行動や態度の背景にある要因の分析を行いました。本リリースでは調査結果の中から、特にコロナ禍で増えた「デリバリーサービス需要」に焦点をあて、価値観別に見えてきた差異の考察を行いました。

(※1) 価値観セグメンテーションモデル「Societas」
簡単な設問に回答するだけで、独自に分類した12タイプの価値観類型に紐づけることが可能なセグメンテーションモデルです。各タイプは価値観や性格、嗜好性などが網羅されています。この価値観モデルを定量調査に活用することで、より詳細な顧客理解が可能になります。(各タイプの大まかな特徴を含むSocietasの概要は末尾をご参照ください)

FINDING 1:コロナ禍のデリバリーサービス需要は相対的に増加したものの、継続利用に対する意向は価値観タイプによって異なっていることが示唆された。

<グラフ1>コロナ禍における購買行動について(複数回答)

本調査で購買行動について聞いたところ、新型コロナがきっかけで、テイクアウトやフードデリバリーなどを初めて利用した人は全体の17%、普段から購買している他カテゴリーに比べても高い数値になっていました。また、「コロナ禍での利用が増えた」が19.8%、「今後も利用したい」が27.3%と、コロナ禍で外出が制限されるなどの状況により、新しい消費行動の流れができていることが示唆されました。

<グラフ2>コロナ禍におけるデリバリーサービスの利用について(価値観タイプ別 INDEX)

<グラフ1>の「テイクアウトや宅配、デリバリーサービスでの購入」を「スーパー等の宅配サービス」と「短距離のフードデリバリー」に分けて「初回利用」、「利用頻度」、「継続利用意向」を価値観タイプ別で比較<グラフ2>すると、以下のような差異が見られました。

  • 価値観タイプ 2-1
    宅配サービスの初利用や頻度は増えたものの、継続利用の意向はない
  • 価値観タイプ 4-2
    全体的に利用経験が高く、継続利用意向もスーパー等での宅配、フードデリバリーともに非常に高い
  • 価値観タイプ 5-1
    宅配サービス、フードデリバリーともに利用頻度が増えた。宅配サービスについては継続利用意向が4-2とともに最も高いが、フードデリバリーはそれほど高くはない

FINDING 2:家族想いの深い層がデリバリーサービスの利用頻度・継続が比較的高いことが示唆された。

<グラフ3>「商品やサービスなどの購入の決め手は」は、全般的に「自分主体」になっていますが、デリバリーサービスの利用頻度や継続意向が高かった価値観タイプ4-2、5-1は「家族が喜ぶかどうか」を重視している傾向が比較的多く見られました。また、<グラフ4>「自分の時間と優先度」において、価値観タイプ5-1は、自分の時間がなく多忙でいるにもかかわらず、家族や子供の予定を積極的に優先することが全体の中で最も高いことがわかりました。これらの結果から、宅配やフードデリバリーの利用頻度や継続意向の高かった層における家族に対する想いの差があることが示唆されました。

<グラフ3>商品やサービス購入の決め手について

<グラフ4>自分の時間と優先度について

宅配やフードデリバリー継続利用意向が高かった価値観タイプについての考察

コロナ禍における消費行動の変化として「デリバリーサービス需要」に焦点をあてました。その中で宅配やフードデリバリーの利用者を価値観タイプ別で比較すると、家族や友人など対人関係を重視する層に継続利用意向が高いことがわかりました。以下、特徴的であった価値観タイプ4-2、5-1について、Societasで分類されている価値観や性格と合わせて、簡単な考察をいれました。

▶︎価値観タイプ 4-2

全体的に利用経験が高く、特にフードデリバリー継続利用意向が全体の中で最も高かった価値観タイプ4-2は、冒険心が強いがリスクもしっかり考慮するタイプです。情報感度が高く、協調的で家族や友人、人付き合いをとても大切にし、12タイプの中で最も我慢強いほうです。性格的には、自己成長欲が強く、自己愛も強い。繊細で批判的になりやすいようです。

好奇心旺盛で、新しいことを積極的に試してみることが多く、家族や友人を喜ばせるのが好きなので、コロナ禍においても率先してデリバリーサービスを利用したのではないかと推測されます。また、継続利用意向が高い背景には、おうちで過ごす家族や友人との時間の大切さを実感している可能性が高いと考えられます。

協調性のあるこのタイプは、近年増加している応援行動・消費に対して積極的であると想定され<グラフ5>、様々な情報ソースへのアクセスも多く<グラフ6>、自分が良いと思ったものを家族や友人に共有することが多いと思われます。情報感度も高く自分自身で調べて納得するタイプでもあり、企業が持つ社会的価値などに対する共感性を重視するほう<グラフ7>なので、信用を得られれば、強固な関係性を築ける可能性も高いタイプであると考えられます。

<グラフ5>応援行動やオンラインコミュニティについて(価値観タイプ別 INDEX)

<グラフ6>情報入手するメディアとその信頼度(価値観タイプ別 INDEX)

<グラフ7>企業の社会貢献度などソーシャルグッドについて(価値観タイプ別 INDEX)

▶︎価値観タイプ 5-1

宅配サービス、フードデリバリーともに利用頻度が増え、宅配サービスについては継続利用意向が非常に高かった価値観タイプ5-1は、冒険心が弱めでリスクを考慮、多少利己的で面倒を避ける傾向があるタイプです。12タイプの中では、最も多忙で自由な時間も少ないと感じていますが、飛び抜けて家族想いが強い層です<グラフ8>。初めてのことに積極的ではないのですが、コロナ禍でデリバリーサービス利用頻度が高まった背景には「家族を喜ばせたい」という気持ちが強く働いているようです。金銭的な余裕がないと感じており節約を心がけるほうですが、多忙で時間がない中、利便価値があるものに対しては多少の対価を厭わないことも多いようです<グラフ9>。このような考えもあり、家族のためにと利便性のある宅配やフードデリバリーの利用頻度が増えた可能性が考えられます。このタイプは、自ら積極的にいろいろ調べて納得するという行動は少なく、ネット上の口コミや比較サイトに対する情報よりも家族や友人からの情報を信用する傾向が強いようです<グラフ10>。このタイプに対するコミュニケーションのポイントとして、本人ではなく家族に対しての利点やメリットがあるメッセージなども効果的だと考えられます。

<グラフ8>コミュニケーション相手としての重要度について(価値観タイプ別 INDEX)

<グラフ9>金銭的な余裕と利便性に対価を払うことについて(価値観タイプ別 INDEX)

<グラフ10>情報ソースに対する信頼度について(価値観タイプ別 INDEX)

まとめ

未曾有のパンデミックによって、社会全体がここで一度立ち止まり、本当に価値があるものは何かを冷静に見つめ直す契機となりました。それに伴い消費者の行動や考え方も変化し、さらに多様化しています。企業のマーケティング活動も、今までの「手段」や「体裁」ではもはや心に響かないものになっている可能性があります。今回の調査では、大きく動いているように見える消費行動の変化なども、価値観別に観察すると様々な差異が存在することがわかりました。短絡的に消費行動が変化したと捉え、顧客とのコミュニケーションを一律に変更するのではなく、一人ひとりの本質を理解した上で日々のコミュニケーションを実行することがビジネスにおいては重要と思われます。今一度、コロナ禍においても顧客特有の変化のある要素とない要素を把握し、今後のマーケティングや顧客とのコミュニケーションのあり方をリフレーミングする必要がありそうです。

価値観セグメンテーションモデル「Societas」について

価値観セグメンテーションモデルSocietasは、生活者の心理特性を理解するための「ものさし」です。購買行動は、生活者の価値観、ライフスタイル、性格や嗜好などの心理的な要素が大きく影響していると言われており、当社では2008年から膨大なマーケティングデータを分析、日本人の価値観や行動の要因となる約100の「特性パターン」を選定、そこから当社独自の手法で価値観別に12タイプのセグメンテーションモデルを作りました。簡単な質問(※2)で価値観を特定できるので、企業が保有する顧客データにSocietas情報を付加し、顧客一人ひとりの「価値観」や「特性」に合わせた効果的なコミュニケーションシナリオが構築可能になります。

※2 基本8つの質問(60個の選択項目)に回答。選択項目数を変えずに案件によって質問数の調整は可能

▶︎Societas 12タイプの大まかな特徴

なお、コロナのような極端な環境変化においても、価値観タイプの構成比に大きな変化は見られませんでした。

<グラフ11>Societas価値観タイプ別の構成比 2021 vs 2018

調査概要

調査手法 インターネットリサーチ
調査地域 全国47都道府県
調査対象 20~69歳の男女
回答者数 男女5,000名
調査期間 2021年4月28日~5月6日
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