LTVが見せる会員データの別の顔
UR CLUBをLTV分析してみた

株式会社アーバンリサーチ

かつて、ECサイトにとって「会員数とその増減数」は重要な指標でした。もちろん現在でも重要な指標であることに違いありませんが、手法の進化に伴い「会員そのものの質」をはじめとした、多くの項目が計測、算出されるようになっています。一方で、多様さが増す指標やデータをどう読み解き、成果につなげていくのかということは専門性に富み、多くの企業にとって困難な課題です。

そこで役立つと考えられるのが「LTV(顧客生涯価値)」という指標です。今回はその有効性について、成長を続けるアパレルブランド  アーバンリサーチの会員組織「UR CLUB」をもとに解説していきます。

株式会社アーバンリサーチのご担当者様

写真左より

齊藤 悟 氏
株式会社アーバンリサーチ 販売促進部 シニアマネージャー

西川 友規 氏
株式会社アーバンリサーチ UR CLUB課 チーフ

深沢 真也 氏
株式会社アーバンリサーチ カンパニープロモーション課大阪

企業に顧客視点を持ち込むための指標「LTV」

まず、「UR CLUB」についてご紹介しましょう。「UR CLUB」は、店舗と公式オンラインストアの両方で利用できる会員サービスです。UR CLUBには、年間の商品購入金額にもとづき4つの会員ステージが用意されており、会員ステージごとに購入によるポイント還元率やサービスが異なる仕様になっています。UR CLUBの目的について、アーバンリサーチの齊藤氏は語ります。

「UR CLUBの目的は、アーバンリサーチの商品を購入してくださったお客様にファンになってもらうことです。それには、お客様のマインドを理解することが何よりも重要です。そのために、UR CLUBにおけるマーケティング活動を通じて獲得したデータを分析しています。これからの時代、データは財産ですから。データを分析することで、よりよりマーケティングを実現していきたいと考えています。」(齊藤氏)

齋藤氏と深澤氏

UR CLUBを「会員情報」「店舗やオンラインの購買履歴」「アンケート」「そのほかマーケティングコミュニケーションの行動履歴」などのデータをもとに分析すると、一般的には以下のような内容になるでしょう。

■UR CLUBの会員ステージと一般的な分析内容イメージ
UR CLUBの会員ステージ
もちろん、現状を把握したりするためにこういった分析は重要です。しかし、ビジネスの目標である「売上を増大させる」そしてそれを「継続できる」企業になるためには、「顧客視点」に基づく分析が必要であるとシナジーマーケティングは考えています。

「LTV」とは何か?何が分かったのか?

そこでアーバンリサーチにご提案したのが「LTVを軸にしたUR CLUB会員の分析」です。
「LTV(顧客生涯価値)」とは、Life Time Valueの略です。一人、あるいは一社の顧客が、特定のブランドの利用開始から終了までの期間内にどれだけの利益をブランドにもたらすのかを算出したもので、マーケティング指標のひとつとして用いられます。
顧客との関係性を「時間」と「サービスの対価」で定量化するLTVは、顧客との関係を良好に保つことで利益を向上させるCRMとの親和性が高く、内容的にも分かりやすい指標であると言えます。

今回のLTVは以下の方法をもとに算出しました。

LTV(円) = 会員一人あたりの1回での購入金額の平均(円) × 会員一人あたりの購入回数の平均(回)

※今回活用したデータセットをもとに設定した計算式です
※購入回数は原則1日1回ですが、店舗とオンラインをまたぐ場合は両方ともカウントします
※LTVの算出の他、“一人あたりの購入期間” や “購入期間中の平均購入回数”など、「時間」を考慮した数値も合わせて算出しています

このLTVを軸にUR CLUBを分析してみると、今までは見えてこなかった、継続した成長につながるであろうと考えられる2つのポイントが浮かび上がってきたのです。その2つのポイントとは、

  1. 相互送客の重要性
  2. 離脱会員による機会損失

です。では、それらを個別に見ていきましょう。

1. 相互送客の重要性

店舗とオンラインを利用してもらうことでファンを増やす

まず「相互送客の重要性」は、店舗しか使っていない会員をオンラインに送客し利用してもらう、オンラインしか使っていない会員ならその逆です。と言うのも、一般的に「店舗とオンラインを併用している顧客は、どちらか片方しか利用していない顧客と比較して、購買金額や購入回数が多く、LTVが高い」とされています。今回の分析の結果、UR CLUBでも同様の結果が明らかとなりました。

店舗とオンラインの顧客の相互送客

このことから「店舗とオンラインで会員を相互送客」することでファンを増やし、UR CLUB全体の売上を向上させることができると考えられます。この内容について西川氏はこのように語りました。

「担当者として、”何となく”という感覚ではわかっていましたが、数値として計測したことはありませんでした。こんなふうに構造として理解できると、とてもわかりやすいですね。実際に取り組むには課題もありますが、これからは相互補完的な取り組みができるようになってくるのでヒントになると思います。」(西川氏)

2. 離脱会員による機会損失

離脱会員による損失をLTVから計算すると・・・

すべての会員組織に必ずつきまとう問題。それが「会員の離脱」です。従来は単純に会員数の低下やブランドイメージの低下などで語られていたこの問題を、LTVをもとに「想定逸失金額(離脱会員が離脱しなかった場合にもたらされたであろう利益)」を算出したのです。

想定逸失金額(円) = 年間の離脱会員(人) × LTV(円)

算出された金額は、アーバンリサーチにとって想像以上の金額でした。もちろん、あくまで想定金額ですが、定量化することで離脱防止のための施策に最適な投資をするための基準や、売上のための市場として捉えることもできます。

想定逸失金額に対する割合から、離脱会員には傾向があることもデータから読み取ることができました。つまり、特定の会員に対して、傾向から立案した仮説に基づく施策を実行することで、離脱会員を低減できると考えられます。
離脱会員による損失インパクトについて齊藤氏は、今まで考慮したことがない事項だと語ります。

「正直なところ、これほどの金額は想像していませんでした。実際にこれほどの金額になるかは分かりませんが、損益が出ていることは間違いありません。何か対応しなければならないと思います。また、会員獲得のためのコストの重さも改めて認識しましたね。」(齊藤氏)

LTVの計算をもとにした想定逸失金額に話す齋藤氏

LTVから会員の「ポテンシャル」を知る

UR CLUBの会員組織に対するLTVを軸とした分析は、売上の向上につながる2つの気づきを導き出しました。実際の分析レポートを見た感想を深沢氏はこのように語ります。

「UR CLUBの会員様が他社ブランドに乗り換える理由は、商品が気に入らないとか、店舗での接客とか、いろいろな理由が想像されます。その会員様を引き止めるための施策に、会員様一人ひとりのポテンシャルを知ることが重要で、そのひとつの指標としてLTVは活用できるのではないでしょうか。」(深沢氏)

齊藤氏は、LTVを活用することは経営の効率化にもつながるのではと話します。

「LTVという概念はもちろん知っていましたが、活用しようとしたことはありませんでした。今回の提案で、これは使えるなと思いました。カスタマージャーニーが複雑化する中、どうしても指標の数は増え、複雑になりがちです。ですが、LTVはとてもわかりやすい指標ですし、私が考えているお客様の行動のモデル化にも使えると考えています。まずは、経営や現場での共通言語として使うことを経営層に提案してみたいですね。」(齊藤氏)

※記載されている内容は取材当時のものであり、一部現状とは異なることがありますが、ご了承ください。

株式会社アーバンリサーチ
販売促進部 シニアマネージャー
齊藤 悟 氏

株式会社アーバンリサーチ
UR CLUB課 チーフ
西川 友規 氏

株式会社アーバンリサーチ
カンパニープロモーション課大阪
深沢 真也 氏

株式会社アーバンリサーチ

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