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【連載:SaaS多機能化の罠 第4回】「何でもできる」の終焉。現場が本当に求めている「等身大」の選定基準

【連載:SaaS多機能化の罠 第4回】「何でもできる」の終焉。現場が本当に求めている「等身大」の選定基準

皆様、こんにちは。シナジーマーケティングの和田直之です。 前回の第3回では、ツールの見直しを阻む最大の壁として「決裁者と現場の認識ギャップ」についてお話ししました。決裁者は成果を求めて「機能が足りない」と嘆き、現場は日々の業務に追われて「今の機能すら多すぎる」と悲鳴を上げている。この評価軸の決定的なズレが、組織のSaaS見直しを停滞させているという構造を見てきました。

では、このギャップに経営陣が気づき、現場の悲鳴をすくい上げて「いざ、新しいツールへ乗り換えよう」と決断したとき、企業はどのようなツールを選ぶべきなのでしょうか。

今回は、これからのSaaS選定において、従来とは全く異なる「新たなスタンダード(価値観の逆転)」が起きている事実を、ユーザーのリアルな声から紐解いていきます。

全5回で扱うテーマ

全5回で扱うテーマは、次の通りです。

SaaS選定の常識が逆転。All-in-One型(何でもできるツール)の時代は終わった

SaaSツールを選ぶ際、これまでの常識や暗黙のルールといえば「将来への保険をかけること」でした。 ツール選定の会議室では、よくこんな会話が交わされます。 「今はメルマガを打つだけだが、3年後には高度なスコアリングやAI分析もやりたくなるはずだ」 「どうせシステムを入れ替えるなら、他部署の業務もカバーできる網羅的なツールにしておこう」 「大は小を兼ねる。一番機能が豊富な『All-in-One型』のパッケージを選んでおけば間違いない」

決裁者やIT部門からすれば、将来の拡張性や事業成長を見据えた、極めて合理的で前向きな判断に思えます。しかし、日々システムに向き合う現場の担当者は、その経営陣がかけた「保険」をどう感じているのでしょうか。

今回の調査で、「もし、次に新しいツールを導入・更新するとしたら、どのような点を最も重視するか」を聞いたところ、これまでの常識を覆す非常に象徴的な結果が出ました。

最も多かったのは、「必要な機能だけを選んで契約でき、無駄がないこと(ビルディングブロック型)」で、過半数の56.0%を占めました。一方で、かつての王道であり、経営陣が好みがちな「機能が豊富で、あらゆる業務を1つでカバーできること(All-in-One型)」は、わずか18.8%にとどまったのです。

「もし、次に新しいツールを導入・更新するとしたら、どのような点を最も重視するか」を聞いたところ、最も多かったのは、「必要な機能だけを選んで契約でき、無駄がないこと(ビルディングブロック型)」で、過半数の56.0%

この「56.0% 対 18.8%」という圧倒的な差は、SaaS選定の価値観が完全に逆転しつつあることを示しています。 現場はもう、「何でもできる多機能ツール」を求めていません。むしろ、自社の業務レベルや担当者のリテラシーにジャストフィットした「無駄のない、等身大のツール」を強烈に求めているのです。

「ビルディングブロック型」が支持される理由

なぜ、現場はここまでAll-in-One型を敬遠するようになったのでしょうか。 それは、現場の担当者が身をもって「使わない機能は、ただそこにあるだけではない」という事実を痛感しているからです。

たとえば、シンプルな顧客リストの管理とメール配信だけを行いたい現場の担当者を想像してみてください。 All-in-Oneツールを開くと、画面には「高度なカスタマージャーニー設計」「複雑なスコアリングルールの設定」「外部API連携の高度なトリガー」といった、今の自分たちには到底使いこなせないメニューがズラリと並んでいます。たった1通のメールを送るだけなのに、それらの複雑な設定画面をいくつも遷移し、エラーが出ないように気を配らなければなりません。

決裁者が「いつか使うかもしれない」と良かれと思って用意した機能の数々は、現在の現場にとっては、視界を塞ぐノイズであり、操作ミスを誘発する地雷であり、マニュアル検索の時間を奪う「負債」でしかないのです。 「将来への先行投資」のせいで、「今現在」の業務効率とモチベーションが著しく犠牲になっている。この不条理に現場は疲弊し、「もう、必要な機能だけをシンプルに使わせてくれ」と心の中で叫んでいます。

「共に育つ」ツールへ。現場が真に求めている柔軟性

さらに重要なのは、現場が求めているのが「最初から機能が少ない、安価なだけのツール」というわけでもない点です。 調査で、「必要な機能だけを自由に組み合わせ、不要になったらそこだけ外せるような柔軟なツールがあれば利用してみたいか」と尋ねたところ、「非常にそう思う(22.0%)」と「ややそう思う(57.6%)」を合わせ、約8割(79.6%)のユーザーが強い利用意向を示しました。

「必要な機能だけを自由に組み合わせ、不要になったらそこだけ外せるような柔軟なツールがあれば利用してみたいか」と尋ねたところ、「非常にそう思う(22.0%)」と「ややそう思う(57.6%)」を合わせ、約8割(79.6%)のユーザーが強い利用意向を示す

つまり、現場が求めているのは「成長を否定するツール」ではありません。「自社の成長フェーズや現場の習熟度に合わせて、一緒に育っていけるツール」です。 最初は基本機能だけでシンプルにスタートし、現場が使いこなせるようになって新しい施策に挑戦したくなったタイミングで、必要な機能をブロックのように追加する。もし合わなければ外す。 これこそが、多機能化の罠に苦しんできたユーザーがたどり着いた、1つの理想形(ビルディングブロック型)なのです。

第4回で押さえておきたい結論は、ここです。 「大は小を兼ねる(何でもできるツール)」の時代は終わりました。これからのシステム選定において真に評価されるべきは、機能の網羅性ではなく、現場にノイズを与えない「無駄のなさ」と、変化に合わせて機能を取捨選択できる「柔軟性」です。

現場を機能の海で溺れさせないために、経営・決裁者は「引き算の選定」をする勇気を持たなければなりません。「あれもこれも」という足し算の誘惑を断ち切り、現場の現実を直視することから、本当の業務効率化は始まります。

では、この「等身大のツールを使いこなす組織」へと生まれ変わるために、経営層やツール導入の責任者は、明日から具体的に何をすべきなのでしょうか。 いよいよ最終回となる次回・第5回「機能を削ぎ落とし、成果を最大化する。持続可能なSaaS運用へのロードマップ」では、これまでの連載の総括として、多機能SaaSに振り回されない組織をつくるための「3つの実践アクション」を提示します。

SaaSツール利用に関する統計調査2026

多機能化するSaaSツールの理想と現実

SaaSツール利用に関する統計調査2026

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