価値観マーケティング分科会は「顧客を知ることでマーケティング活動の成果を最大化したい」と考えるマーケター、CMO、経営層を中心とした共創コミュニティです。今回は『CRMベストプラクティスの創出とその原動力とは』をテーマに、第1部では「2015 CRMベストプラクティス賞」を受賞された株式会社モリタ様に、CRM活動の概要をご紹介いただきました。
また第2部では「CRMを推進するうえでの課題と解決方法や、CRM活動を推進するための原動力」について、パネラーの皆様とともにディスカッションを行いました。ディスカッションは、テーマの一部を抜粋しご紹介します。

第1部「2015 CRMベストプラクティス賞を受賞した活動の概要と今後の構想について」

講師 株式会社モリタ マーケティング本部 お客様相談センター 部長 石川拓哉様

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歯科医療の総合商社としてトップシェアを誇る株式会社モリタ様。CRMベストプラクティス賞の「歯科医療における顧客の声・活用モデル」として表彰された同社の取り組みを紹介いただきました。

まず、モリタ様が創業当初から経営理念として掲げられている、「四恩の精神」について。この精神は、同社の社会的存在意義に関わる重要なものだと全社的に認知されると共に、モリタ様のCRM活動の方針を決定している大切な理念であるとのことです。次に、この理念を体現するCRM活動として、2013年に「お客様相談センター」を開設し、お客様との関係を強化すると同時に、お客様からいただいた声を社内に報告・共有することで、企業活動や製品開発の改善に結びつけていることを説明いただきました。

㈱モリタ様ご講演スライド1

また、デジタルコミュニケーションの観点からは、Synergy!iNSIGHTBOXを導入いただき、一般会員向け、勤務医向け、臨床医向けの3種類のメールマガジンを配信し、お客様とのコミュニケーションの深化に取り組んでいらっしゃいます。iNSIGHTBOXを用いて配信対象とコンテンツのマッチングをおこなうことにより、メールの解除がゼロであった成果(嫌われないマーケティングの実現)についても紹介いただきました。そして最後に今後の展開として、お客様の価値観理解を軸とした接点強化に取り組み、CRM活動がモリタ様の中心的活動になるよう推進していくことを力強く宣言されました。

第2部「CRMを推進するうえでの課題と解決方法や、CRM活動を推進するための原動力について」

パネラー リンナイ株式会社 管理本部 eビジネス推進室 室長 福本啓史様
     株式会社モリタ マーケティング本部 お客様相談センター 部長 石川拓哉様
     株式会社財コンサルティング 内藤仁様

テーマ 「上司や現場の理解が得られないときどのように突破し解決してきたか?」

ディスカッション:組織理解

  • 社内のさまざまな部門(営業・お客様センター・商品開発)の部門長に集まってもらい、毎月定例会を開催し、お客様の声を伝え続けることを行なった。このような活動を継続することで、活動を少しずつ理解してもらい、徐々に協力を得ることができるようになった。
  • CRM推進部門を社長直下の部門にしてもらった。また経営層の出席する会議において、お客様の声を紹介する時間をもらうようにした。お客様の声を説明する社員は、比較的若手の社員や女性社員に担ってもらうことで、経営層も理解しようとしてくれた。
  • 既存のマーケティング手法だけでは厳しい現状を直接経営陣に伝えるとともに、経営陣から信頼を得ている社員の力を借りて、間接的に新しい施策へのチャレンジが必要であることを伝えてもらった。また、経営陣や主要メンバーに集まってもらい、その新しい施策の勉強会を開催した。

テーマ 「みなさんを突き動かす原動力はなにか?」

ディスカッション:原動力

  • お客様の生の声が私も含めスタッフの原動力になっている。(満足度が向上している・感謝の声が増えるなど)
  • お客様軸のCRM活動が企業活動の中心的活動にする(なってきた)という実感は原動力になる。また、これらの活動を次の世代のメンバーに伝えていきたい(伝えないといけない)という使命感も原動力になっている。
  • 「新しい施策にチャレンジしたい」という気持ちや、「他の人がやったこともないことをやりたい」というモチベーションが原動力になっている。

分科会を終えて

第1部で講演いただいたモリタ様では、顧客を知るための取り組みが同社の企業理念である「四恩の精神」と密接に結び付き、理念を体現する活動の一つとしてCRMが位置付けられていることは非常に興味深い点でした。また同社のお客様相談センターが、社長様直下の部署となっている点や、お客様の声を収集・検証するためのシステムを社長様ご自身が「Kikuzoサイクル」と命名されるなど、同社のCRM活動がトップマネジメントにより力強く推進されている点も、ベストプラクティスと言われる所以であると感じます。

同様にパネルディスカッションにおいても、CRMを一部門の活動としてではなく、経営戦略と位置づけ、経営層や他部門をうまく巻き込みながら協力を得ること。そして誠実にお客様と向き合い、お客様の声を自らの原動力とし、地道に改革を進めること。これらの重要性を再認識しました。

レポート記:マーケティングコミュニケーション部 川口