シーズナル商品の売上を拡大
伊藤久右衛門のCRMデータを活用した広告施策

株式会社伊藤久右衛門

ギフト商品や季節にちなんだ商品を製造・販売している企業にとって、バレンタインや母の日などのイベントごとは、一年の中でも商品が特に多く売れる商戦期にあたります。とはいえ、同じ立場の企業も多く、リスティング広告の入札価格は高騰。多くの費用を掛けずに、売上を上げることが難しくなっています。

そんな中、伊藤久右衛門はCRMデータを活用した広告配信により、679件のコンバージョンを獲得し、商戦期の売上拡大に成功しました。どのような施策を実施し、何が成果を上げるポイントとなったのか、お話を伺いました。

インタビュー参加者

写真左より

金佐 朋美
シナジーマーケティング株式会社 西日本事業部

足立 容子 氏
株式会社伊藤久右衛門 WEB営業部 マネージャー

光山 誠一
シナジーマーケティング株式会社 アドレサビリティー事業部

※部署名・役職は取材当時(2017年6月)のものです

観光地から離れていてもファンがわざわざ足を運ぶ伊藤久右衛門の店舗

江戸時代からお茶づくりを行ってきた老舗の伊藤久右衛門が、本社ならびに本店を構えるのは京都・宇治。宇治茶の産地であり、10円玉のモチーフになった平等院鳳凰堂があることで他県の方にも有名です。駅から平等院鳳凰堂へ続く道は飲食店やお土産屋も多く、いつも多くの観光客でにぎわっています。

一方、伊藤久右衛門の本店があるのは、平等院鳳凰堂と反対方向にある住宅街の道沿い。観光地からはかなり離れた場所です。しかし、店舗にはいつも多くのお客様が訪れており、お茶ができる茶房には常に順番待ちのお客様が並んでいます。観光のついでではなく、伊藤久右衛門のブランド体験を求めて、わざわざ足を運ぶファンが多い証拠です。

伊藤久右衛門 本店

商戦期、シーズナル商材の売上拡大が課題

伊藤久右衛門は、インターネットでの販売にも力を入れてきました。楽天市場やYahoo!ショッピングに出店する他、自社でもECサイトを持っています。EC部門の統括を行っているWEB営業部のミッションは、「宇治茶の伝統を時代にあわせた形でインターネット世代に伝え続けていく」こと。そのため、近年ではお茶だけでなく、お茶を使ったスイーツやお酒も積極的に販売するなど、歴史あるブランドを大切にしつつ、商品開発や最先端のマーケティング施策にも意欲的に取り組んでいます。

商品が特によく売れるのは、バレンタイン、母の日など季節のイベントの際です。これまで、商戦期にはメールやLINEを用いての告知、さまざまな広告施策にチャレンジしながら販促活動を行ってきました。しかし、なかなか売上拡大には至らなかったと、WEB営業部マネージャーの足立さんは話します。

「過去に商品を購入いただいたお客様にアプローチする手段であるメールは、スマートフォン普及の影響もあってか開封率が下がってきていました。また、商戦期のメイン施策としてリスティング広告を実施していましたが、『バレンタイン プレゼント』などのキーワードはもちろん他社も狙ってくるため、入札価格が高騰してしまい手が出せません。そのため、『京都 チョコレート』など、ニッチなキーワードの出稿を積み重ねて、どうにかお客様に接触していましたが、売上の大幅アップとはなりませんでした。商戦期の売上拡大に役立つ新しい施策を常に探していました。」(足立さん)

これまでの施策について語る足立さん

CRMデータを活用した2種類の広告配信を実施

伊藤久右衛門から相談を受けたシナジーマーケティングは、CRMデータを活用した広告配信を提案しました。施策の軸は、大きく2つ。1つ目は、過去購入者への広告配信です。ここ数年シーズナル商品を購買しているお客様を中心に、広告でアプローチしようと考えました。もう1つは、以前シーズナル商品を購入されたお客様に嗜好や属性が似ている方に対しての広告拡張配信の実施です。

CRMデータを活用した2種類の広告配信

「提案の意図としては、これまで実施されていたリスティング広告の施策では、自らシーズナル商品を探しに来る顕在層のお客様としか接点が持てません。検索はしていなくても需要のあるお客様はいるはずで、アプローチの裾野を広げたいと思いました。特に、以前バレンタインや母の日に伊藤久右衛門でギフトを買ってくれたお客様は、接点ときっかけさえあれば、思い出してまた購入してくれる可能性が高いのではないかと考えました。」(光山)

「この提案に正直最初は不安もあったんです。以前、過去にWebサイトへ訪れた方に対して、広告でシーズナル商品を訴求する施策リターゲティング広告を実施したことがありました。しかし、その際は成果があまり良くなくて。今回の提案内容に関しても半信半疑でしたが、コストもそれほど高くなかったので、リスクは無いと判断して実施を決めました。」(足立さん)

バレンタインと母の日で合計679件のコンバージョンを獲得

施策は、バレンタインと母の日の二度のタイミングで実施しました。広告は、Yahoo!とFacebookで配信。特に画像サイズが大きくクリエイティブの自由度が高いFacebook広告と相性が良かったと足立さんは話します。

「写真を大きく表示できるFacebook広告は、当社で以前から力を入れている『商品写真のシズル感』を活かすことができました。そのため、お客様の目を引いてECサイトに訪れてもらうことができたのではないかと思います。また、掲載面が狭いと『セール』や『早割』のように短くて強いコピーしか載せられないのですが、掲載面が広かったためにメッセージングも工夫することができました。」(足立さん)

実際にバレンタインに配信したFacebook広告

広告のクリエイティブは、3つ作成して週ごとに変更し、どのクリエイティブが良いのか効果測定を実施。一番成果が良かったのは、人気シーズナル商材をランキング形式で紹介するものでした。

「クリエイティブの案出しをする中で、光山さんからご提案いただきました。ランキング形式で商品を紹介しつつ、1位の商品はあえて隠して、続きはECサイトで見てもらうというものです。興味を持ってくださったお客様が、大勢ECサイトに訪れてくれました。」(足立さん)

施策実施の結果、二度とも通常の広告施策と比べて少ない費用で多くのコンバージョンに結び付き、バレンタイン施策で321件、母の日施策では358件のコンバージョンを獲得しました。バレンタイン施策では、一昨年以降購入のなかったお客様からの数年ぶりの購入があり、母の日施策では、コンバージョンの半数以上を過去購入者に似た属性の方への広告拡張配信から獲得できました。

「前例の無い取り組みこそチャレンジしたい」その思いが予想以上の成果を生んだ

「久々に商品を購入してくださったお客様もいて、古なじみのお客様と再会できる施策だと思いました。ここ数年購入されていないお客様に対して、メールやLINEで一方的にプッシュすることには抵抗がありましたが、今回は広告でのアプローチだったため、お客様のご迷惑にならない範囲で接点を持つことができたように思います。また、過去に購入いただいたお客様に似た属性の方への広告配信が効果的だったことには驚きました。」(足立さん)

拡張配信でこれほどの成果が出るとは、シナジーマーケティングでも予想していませんでした。
「成果が出たポイントは、以前バレンタインや母の日に伊藤久右衛門の商品を購入しているお客様に似た属性の方に絞り込んでアプローチができたからだと思います。サイト訪問者や、通常商品のみ購入経験のあるお客様に似ている方への訴求以上に、ピンポイントでニーズを持った方にアプローチできたのかなと。CRMデータを活用することで、幅広い広告配信ができることは実感いただけたのではないかと思います。」(光山)

拡張配信の結果について語る光山

結果として、シーズナル商品の売上拡大に繋がったこの取り組み。しかし、開始当初はお互いに手探りでのスタートでした。

「実はこの取り組み、提案時は実績や事例がまだ無い状態で…、当社にとっても挑戦でした。そんな中、足立様に『やりましょう』と言っていただけてとても心強かったです。」(金佐)

「他社と同じことをやっていても、その領域はすでにレッドオーシャンでしょう。むしろ、前例の無い取り組みの方がチャレンジしたくなるんです。」(足立さん)

伊藤久右衛門の社員には、チャレンジ精神旺盛な方が多いそうです。『実績があることを行うのではなく、一緒に実績を作っていくことに面白さを感じられる。』そんな足立さんのスタンスがあったからこそ、予想を超える成果が生まれました。

お客様へ手書きのお手紙も送付 喜んでもらう体験を広く届けるためにツールがある

メール、LINE、SNS、CRMデータを活用した広告配信など、デジタルマーケティング施策に積極的に取り組む伊藤久右衛門ですが、最近はアナログの施策に回帰しているといいます。

実際にお客様にお送りした他が気のお手紙

「いろいろなデジタル施策に取り組んだ上で、アナログの重要性も再認識していて。最近は購入いただいたお客様に社員から手書きのお手紙を送っています。とはいえ、アナログだと手を掛けられる数に限りがあるので、アナログで好評だった取り組みを多くのお客様に届けられるように、ツールを活用したいと思っています。」(足立さん)

デジタルマーケティングのトレンドは素早く移り変わっており、ツールや技術もどんどん発達しています。だからこそ、お客様にどのようなメッセージを届けたいのか、どのような体験をしてほしいのかを改めて意識し、届ける手段としてのツールであることを忘れずにいたいものです。

お客様へのおもてなし精神を第一に、ブランド体験を伝え続ける伊藤久右衛門の施策を、シナジーマーケティングはこれからもご支援していきます。

※記載されている内容は取材当時のものであり、一部現状とは異なることがありますが、ご了承ください。

株式会社伊藤久右衛門
WEB営業部 マネージャー
足立 容子 氏

株式会社伊藤久右衛門

株式会社伊藤久右衛門は、京都の宇治に本店を置くお茶屋です。近年では、お茶の他に宇治茶を使ったお菓子やお酒も積極的に販売し、茶房もオープンするなど、時代の変化に合わせた独創性も大切にしながら、宇治茶の伝統とブランドの世界観を伝え続けています。

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