事例
特定非営利活動法人日本ファイナンシャル・プランナーズ協会

目標から逆算した戦略設計と確実な実行。日本FP協会のメディアサイト刷新を成功に導いた包括的アプローチ

デジタル化の波は営利企業だけでなく、NPO法人や業界団体にも等しく押し寄せ、従来の情報発信のあり方、顧客や会員とのコミュニケーション手法の見直しにも及んでいます。特に会員制組織では、デジタル世代と従来型のコミュニケーションを好む層の両方に対応しながら、効果的な情報発信のあり方を追求しなくてはなりません。

特定非営利活動法人日本ファイナンシャル・プランナーズ協会(以下、日本FP協会)様は、1999年創刊の月刊会報誌『FPジャーナル』を2025年7月から季刊発行へと変更することを決断しました。しかし、これによって会員20万人との貴重な接点を減らすのではなく、オンライン版「FP Journal Online」を全面刷新することよってこの課題に立ち向かうと決意。シナジーマーケティング(以下、当社)は、長年培ってきたデジタルマーケティングの知見を活かし、Webサイトリニューアル、構築、サイトとシステムの改修に加えて、認知拡大や利用促進まで見据えた総合的な戦略立案と施策実行をご支援しました。プロジェクトの背景から今回の取り組みによる成果、そして今後の展望まで、日本FP協会様と当社のプロジェクトメンバーに話を聞きました。

インタビュー参加者

写真右より

(前列)

東 海登
シナジーマーケティング株式会社 クラウド事業部 第1デジタルマーケティングG

清水 敦史
シナジーマーケティング株式会社 DX事業部 プロフェッショナルG マネージャー

中山 雅士
シナジーマーケティング株式会社 クラウド事業部 第2デジタルマーケティングG

住吉 翔太
シナジーマーケティング株式会社 クラウド事業部 第2アカウントソリューションG

(後列)

前田 陽二 氏
NPO法人 日本FP協会 編集出版部 FPジャーナル課長

宿久 実緒 氏
NPO法人 日本FP協会 編集出版部 FPジャーナル課

前田 美弥 氏
NPO法人 日本FP協会 編集出版部 FPジャーナル課 主任

正岡 裕史 氏
NPO法人 日本FP協会 編集出版部 FPジャーナル課 主任

※部署名・役職は取材当時(2025年11月)のものです

1. 会員20万人との接点を進化させる会報誌のデジタル刷新を決意

住吉 2025年7月に会報誌『FPジャーナル』のオンライン版である「FP Journal Online」のリニューアルが実施されました。この背景をお聞かせください。

前田(陽)氏 1999年の創刊以来、会報誌『FPジャーナル』では経済の時事ニュースや法改正情報などをトピックスに取り上げ、会員の継続学習と情報収集を支援してきました。発行部数20万部で、すべて会員宛に郵送しています。従来のオンライン版「FPジャーナルOnline」は2018年にリリースしたものの、紙面の転載を中心とした最小限の体制にとどめていました。会員層の年齢構成が高めだったこと、また社内での制作体制が整備されていなかったことなどを考慮すると、オンライン版の独自展開はまだ現実的ではないと考えていました。

しかし、昨今のデジタル化の加速は無視できず、次第に紙媒体ならではの課題も感じるようになりました。印刷物だとどうしても情報提供が一方通行になり、会員のニーズや関心事を的確に把握することが困難です。一方、オンラインであれば、双方向のコミュニケーションを強化でき、より密接な関係構築や、タイムリーな情報発信が可能になると考えました。

住吉 そうした中で、会報誌の大きな転換点を迎えたのですね。

前田(陽)氏 2025年7月から会報誌の月刊から季刊への移行が決まりました。ただ会員20万人との貴重な接点である会報誌が年12回から年4回へ、単純に減ることには強い危機感を抱きました。改めて、Webでの情報提供の形を本格的に見直す必要があると考え、オンライン版の全面刷新を決断しました。従来のような紙面の転用ではなく、Webメディアの特性を最大限に活かしたコンテンツ設計、最適な更新頻度の設定など、メディアとしての質を追求することに決めたのです。

住吉 日本FP協会様はNPO法人ですが、会員エンゲージメントの維持・向上やコンテンツの設計や制作体制の構築といった課題は、株式会社など営利企業と本質的には変わらない印象でした。

前田(陽)氏 そうですね。Webサイト構築の経験者がほとんどいない中で、紙媒体の制作と並行して新サイトの制作も進めなくてはならず、経験面でもリソース面でも大きな挑戦でした。しかし、今回のタイミングを組織全体でデジタルシフトし、会員サービスの質をさらに向上させる絶好の機会だと捉え、新たな一歩を踏み出すこととなりました。

会報誌のデジタル刷新を決意、従来のような紙面の転用ではなくメディアとしての質を追求することに決めたと語られる前田(陽)氏

2. サイトを刷新するだけでは足りない。認知拡大まで含めた提案がパートナー選定の決め手に

住吉 パートナー候補として複数のシステム開発会社を比較、検討する中、マーケティング支援を強みに置く企業である当社は異色の存在だったのではありませんか。

正岡氏 今回のプロジェクトは、サイト基盤をゼロから構築する必要があったため、当初はシステム開発に強みを持つ企業を中心に選定を進めていました。しかし、当時サイト開発のプロジェクトリーダーだったメンバー(現在、育児休業中)が、たまたまシナジーマーケティングのホームページに辿り着き、「システム開発だけでなく、マーケティングにも精通している企業と組んでみるのも面白いのではないか」と興味を持ち始めました。システム改築に加えてマーケティング戦略まで支援してもらえるという点に新たな可能性を感じ、コンタクトを取りました。

問い合わせてすぐお打ち合わせと直接何度も訪問もしていただき、そのスピード感にまず驚きました。さらに提案まで5回ほど打ち合わせを重ねたのを通して「ここまで熱意を持って向き合ってくれる会社がいるのか」と心を動かされたのを覚えています。

中山 ご提案の前に、日本FP協会様が直面している課題の本質や、理想とする将来像について深く理解する必要があると感じました。認識のズレを防ぎ、最適なソリューションを提供するため、対面でのヒアリングとディスカッションを重ねることで、当社が課題の本質に対する理解の解像度を高めるとともに、相互の細部にわたる疑問点も解消できたと思います。

正岡様はシステム開発のプロジェクトマネージャーのご経験をお持ちということもあり、いただいたRFPは、システム要件が整理された完成度の高いものでした。その上で、我々はマーケティングの観点から付加価値を提供できると確信しました。会員との接点が、従来の会報誌郵送というプッシュ型から、能動的なサイト訪問を前提とするプル型へと変化する中で、単なるサイト構築にとどまらず、いかに会員をサイトへ誘導し、継続的な利用を促進するかという戦略設計こそが成功の鍵になると考えたのです。

我々はマーケティングの観点から付加価値を提供できると確信、戦略設計こそが成功の鍵になると語る中山と住吉

正岡氏 サイトへの訪問者数増加は重要なKPIの一つでした。RFPの要件を満たすサイト制作は必須として、さらにデジタルマーケティングを統合した包括的な提案に大きな価値を感じました。当初は、サイト構築を第一優先とし、告知や集客施策は次のフェーズで検討すべき課題と捉えていたのが本音です。しかし、サイトとマーケティング戦略はセットで考えるべきだと、同時並行で設計する重要性を提案いただき、我々にとって大きな気づきが得られました。

▼点から面へ、本質的な課題解決で価値を最大化するための提案イメージ

※点から面へ、本質的な課題解決で価値を最大化するための提案イメージの図

住吉 まず会員・非会員の区分、サイト訪問履歴の有無などでユーザーセグメントを体系的に整理し、各セグメントに対する最適なアプローチ方法を具体的に提案させていただきました。さらに、各施策から期待できる流入数の定量的な試算もご提示しました。

正岡氏 こうしたプロセスを通じて、実現可能性の高い戦略であることが理解できました。目標達成への具体的なロードマップを提示してくれたのは、シナジーマーケティングさんだけでした。理想とする到達点を明確に定義し、そこから逆算して必要な施策を策定する。その過程で浮上する課題には適切な対策を講じる。この逆算思考によって確実に目標へと導くアプローチこそが、真のマーケティングだと実感しました。

クライアントと同じ目線に立ち、徹底的な調査と分析に基づいて提案する姿勢は他社とは一線を画していました。プロジェクトの成功に向けた強いコミットメントが伝わり、満場一致でパートナーとして選定しました。

3. 最初の要求整理が、スケジュール通りのプロジェクト進行を実現

正岡氏 プロジェクトのキックオフ後、まず要求整理から着手いただきました。遠回りな作業に思われるかもしれませんが、我々が実現したいビジョンや目指すべき姿を具体的に可視化し共有できたという点で、有益なプロセスでした。

中山 本プロジェクトの目的・ターゲット・新サイトが提供すべき価値を明らかにした上で、要望の優先順位を整理しました。ヒアリング段階で豊富なアイデアが出たため、限られたリソースの中で真に実現すべきものを見極める必要があったためです。
プロジェクトの全体像を明確化することで、後工程での認識齟齬や手戻りを未然に防ぐ目的もありました。

正岡氏 要望の優先度を事前に決められたため、本当に重要な領域にリソースを集中投下できました。
私は経験上、プロジェクトが遅滞なく進むかは、最上流の工程(スタート)の段階でリリース(ゴール)までの道筋を描き切れるかでほぼ決まると考えています。要求整理でプロジェクト全体の指針となるものを作れたことが、その後のスムーズな進行につながった一番の要因だと思います。Webサイト構築の経験がないメンバーでも、この指針があることで迷いなく進めることができました。

清水 プロジェクト進行中は、週次定例会議を軸に進捗共有と課題解決を図りました。進行状況や協議内容はすべて課題管理表に集約し、両者で常に最新情報を共有することで、細部に至るまで取りこぼしなくスケジュール通りに進行できました。

正岡氏 定例会議では、事前のアジェンダ配布、当日の目的明確化と充実した資料準備、会議後の議事録送付と次回までの宿題整理まで、一連のプロセスが徹底されていたため、安心して会議に臨めました。

最初の要求整理でプロジェクト全体の指針となるものを作れたことが、その後のスムーズな進行につながった一番の要因だと思うと語られる正岡氏

 ご負担をかけてしまった点もありましたが、それでも必ず期限内にタスクを完了する日本FP協会様の姿勢には、私たちも全力で応えなければならないと激励を受ける気分でした。

前田(美)氏 たしかに短期間での検討が必要な事項もありましたが、適切なタイミングでリマインドをいただけたので、停滞することなく、常に前進を続けるリズムを維持できました。私たちもシナジーマーケティングさんの熱意に対して、遅れるようなことがあってはならないと業務分担して臨みました。

住吉 今回のリニューアルでは、ロゴからデザイン、サイト構成に至るまで全面的に刷新。さらに会員とのコミュニケーション基盤としてメール配信システム「Synergy!」を導入し、サイトと連動した会員向けメールマーケティングも実施しました。Synergy!と会員基幹システムを自動連携させ、会員に対してWebサイトと連動したシームレスな体験を提供するメディアサイトとして完成させることができました。

▼システム連携とマーケティングが循環する最適なユーザー体験の提供イメージ

※システム連携とマーケティングが循環する最適なユーザー体験の提供イメージの図

正岡氏 マーケティング施策では、会員向けアンケートで詳細な調査を実施。利用者属性や利用目的、潜在ニーズを分析してペルソナとカスタマージャーニーマップを策定していただきました。会員からの認知と利用定着が必要なため、定期的なおすすめ記事のレコメンドや新着記事のご案内、新規会員向けのサイト紹介ステップメールなども企画から実装まで一気通貫で支援いただきました。その後のサイト運用でも、こうしたペルソナとカスタマージャーニーマップが役立っています。
また、既存会員向けにはリニューアル特設サイトや紹介動画を制作し、メールによる事前告知も計画的に実施できました。この辺りの施策も、適切かつ効果的な内容だったと思います。

4. 公開初月でKPI 200%達成!早期成果を実現した計画力と実行力

住吉 リニューアル後、成果が出始めたときの率直なご感想をお聞かせください。

前田(陽)氏 サイト公開初月で主要KPI200%達成という想定を大幅に上回る成果には、正直驚きました。デザインやコンテンツ、UI/UXに至るまで、私たちのこだわりを結集したサイトでしたから、会員の皆様に評価いただける自信はありましたが、その期待を超える反響でした。
この成果はサイトリニューアル単体の効果ではないと理解しています。各種マーケティング施策の綿密な事前設計と、計画通りの実行支援があってこその結果だと考えています。

正岡氏 シナジーマーケティングさんから提案いただいた各種マーケティング施策の綿密な事前設計と、計画通りの実行支援があってこその結果だと考えています。公開時期に向けて負荷がかかった時期はあったものの、メール配信や訪問者数の測定など自動化も進めたことで省力化を実現し、持続可能な体制が構築できました。

前田(美)氏 公開初月のKPI200%達成後も、目標値を大きく上回る高い水準を維持し続けることができました。そして、3ヶ月後の10月には初月をさらに上回る成果を記録することができたんです。10月は季刊誌の発行月でしたので、紙面PDFの掲載や継続教育テスト用テキストの公開時期をそこに戦略的に合わせにいきました。そうして持たせた「紙とWebの連動性」が、非常に効果的に働いた形です。たしかな戦略に基づいて初期の成果がきちんと出せたからこそ、こうした応用的なアイデアも生まれてくるのだと思います。

継続的に記事制作を進められる安定的な体制構築も、初動の成功を支えた重要な要因だと語る東と清水

 サイトの認知拡大と集客にはこうした誘導施策も重要ですが、本質的にはサイト内に魅力的なコンテンツが充実していることが不可欠です。日本FP協会様にはサイト公開までに相当数の記事をご準備いただきました。プロジェクト関連業務と並行しながら、継続的に記事制作を進められる安定的な体制構築も、初動の成功を支えた重要な要因だと思います。

正岡氏 コンテンツは、過去の転用をほぼ行わず、すべて新規制作しました。サイトリリース時の第一印象がとても大事だと思ったため、公開初日から充実したコンテンツラインナップをそろえるようこだわりました。

前田(美)氏 記事制作は、言わば私たちの本業、最も得意な分野です。取り上げるテーマの選定から制作スケジュールまで、計画的に進行できました。これもシステム開発が滞りなく進んでいたからこその賜物だと思っています。

 現時点(取材当時:2025年11月)ではメール施策によるサイト流入が最も大きな割合を占めています。配信テーマや頻度など、事前に戦略的な設計ができていたことが功を奏したと考えています。当初は週1回の配信でしたが、現在では週2回に増やされています。リリース直後から、データに基づいて自発的に改善サイクルを回している事実には、当社としても感嘆させられます。

宿久氏 Synergy!の運用は今回が初めての経験でしたが、画面や操作方法がわかりやすく、マニュアルも充実しているおかげでスムーズに運用できています。不明点が生じた際も、シナジーマーケティングの担当者に問い合わせれば、迅速かつ的確な回答をいただけるため、非常に心強いです。

前田(美)氏 メール配信はチーム内でも有力な集客施策として捉えています。今後も継続的な改善を図っていく予定です。また、アンケートフォームを通じて会員の声を直接収集できる環境も整ったので、さらなる品質向上に活かしていきたいですね。

公開初月でKPI 200%達成、Synergy!もスムーズに運用できていますと語られる前田(美)氏と宿久氏

5. 継続改善からブランド形成へ。メディアのさらなる成長への伴走に期待

住吉 今後に向けて見えてきた課題や次のチャレンジについてお聞かせください。

正岡氏 サイトをまだ利用したことがない会員も多くいるので、未利用層へのアプローチを強化する必要があります。すでに利用している方にも、より満足してもらえるように品質改善にも取り組みたいですね。多くの人に身近で「毎日使いたい」と思われるサイトを目指します。

住吉 運用開始から3ヶ月以上が経過し、ユーザーの流入経路やサイト内行動パターンなど、貴重なデータが蓄積されてきました。分析結果から、今後重点的にアプローチすべきユーザー層も明確になってきたため、これらのインサイトを活用した戦略的な改善を進めていきます。

さらに次のフェーズでは、まだ会員ではない方々にも「FP Journal Online」の存在、およびその価値を認知していただくため、新たな施策の企画・実行を並行して進めているところです。

前田(陽)氏 「FP Journal Online」が広く浸透し、最終的には日本FP協会全体のブランド価値を支える存在になれるとうれしいですね。「日本FP協会といえばFP Journal Online」と自然に思ってもらえるような、組織を代表するメディアプラットフォームに成長させていきたいと考えています。

中山 当社としても、協会会員の皆様にとって日常的に欠かせないメディアへと成長させるため、引き続き全力でサポートさせていただきます。SNSやLINE、YouTubeなど、まだ活用していないチャネルも含め、データに基づいた最適な施策をご提案させていただきます。

正岡氏 シナジーマーケティングさんは、私たちに不足しているマーケティング視点やノウハウを的確に補完してくれる、かけがえのない存在です。今回のプロジェクトを通じて、メディアを共に育てていく長期的なパートナーシップが確立されたと実感しています。次なるフェーズ、そして最終目標の実現に向けた戦略立案においても、引き続き伴走をお願いします。

▼今回のプロジェクトに参加したメンバーでの集合写真

今回のプロジェクトに参加したメンバーでの集合写真

※記載されている内容は取材当時のものであり、一部現状とは異なることがありますが、ご了承ください。