生成AI活用で顧客理解をより深く、より身近に
象印マホービン様による商品開発プロセス再構築への挑戦
写真右より
多久 南美子
シナジーマーケティング株式会社 クラウド事業部 サービスデザインG
阪口 奨
シナジーマーケティング株式会社 クラウド事業部 サービスデザインG マネージャー
奥平 博史
シナジーマーケティング株式会社 常勤取締役 代表取締役社長 兼 CEO
岡島 忠志 氏
象印マホービン株式会社 商品企画部 デザイングループ長
月田 基義 氏
象印マホービン株式会社 商品企画部 デザイングループ マネージャー
遠藤 麻美 氏
象印マホービン株式会社 商品企画部 デザイングループ マネージャー
※部署名・役職は取材当時(2025年9月)のものです
暮らしに寄り添う魔法瓶や調理家電でおなじみの象印マホービン様。生活スタイルの多様化が進む中、商品企画にはこれまで以上に顧客理解の深さが求められるようになってきました。従来は多大な労力やコストのかかる調査が中心で、細やかな顧客理解は容易ではありませんでしたが、同社では生成AIを活用したサービス「DAYS GRAPHY」の利用を開始。現在はデザイングループの一部で試験導入を進め、アイデア創出や調査効率化といった効果を実感し始めています。今回は、「DAYS GRAPHY」を通じてどのような気づきや変化があったのか、そして今後の展望について詳しくお話を伺いました。
「DAYS GRAPHY」は、生成AI技術を活用して顧客理解を深める弊社の新たなシステムです。顧客の日常や生活状況を深く理解することで、顧客のまだ満たされていないニーズまで捉えられるので、商品企画やマーケティング施策のアイデアを生み出しやすくなります。口コミやレビューコメントをインプットするだけで、日常や生活状況が描かれている顧客像を生成できるため、顧客ニーズを深く理解できるだけでなく商品開発やマーケティング施策などにつながる具体的なアイデアの想起をサポートします。
▶「DAYS GRAPHY」の製品詳細はこちらをご確認ください。
今回は、象印マホービン様が抱えていた課題の解決策として「DAYS GRAPHY」に着目いただいた背景や、実際に取り組まれている中での感想、現状の試行錯誤について詳しくお伺いしました。

<目次>
当時、抱えていたお悩みを教えてください。
顧客ニーズが多様化し細分化していく中で、商品開発のためにこれまで以上に深い顧客理解が必要になってきました。私たちは従来、対面でユーザー調査(デプス調査)を実施してきましたが、実施に伴う準備の手間や移動コストが大きく、頻繁な実施は難しい状況でした。また、商品によっては適した調査対象者を集めにくいことも課題でした。さらに、ユーザーの気分や調査員とのコミュニケーション方法によって回答が左右されることもあり、安定した深い回答を得る難しさも感じていました。
このように、深掘りした顧客理解を得るには、どうしても時間やコストがかかってしまうことが課題でした。
「DAYS GRAPHY」を試してみようと思ったきっかけを教えてください。
2024年7月に、株式会社アイディーエイ様が主催した顧客交流イベントに参加した際、シナジーマーケティングの登壇スピーチを聞く機会がありました。そこで紹介されていたのが、生成AI技術を活用したサービス「DAYS GRAPHY」でした。
そのスピーチを聞いて、顧客理解に対して斬新かつ面白いアプローチをするシステムだと感じました。「これは、ユーザー調査の課題を解決するヒントになるかもしれない」と直感的に思い、口コミをもとに顧客像を生成し、チャット形式で自由に対話できるという構造が、大変画期的なシステムだと感じ、トライアルを経て、利用に至りました。

今、どのように「DAYS GRAPHY」をご活用いただいていますか?
現在は、デザイングループの一部で「DAYS GRAPHY」を試験的に使いながら、活用の幅を少しずつ広げている段階です。たとえば、商品のコンセプトを検討しているタイミングで「少し視点を広げたい」「ユーザーの背景を探ってみたい」といった時に、気軽に「DAYS GRAPHY」を立ち上げて質問をするようになりました。
また、複数の顧客像に質問を投げておき、回答がそろうまで別の業務を進めるなど、リアルなインタビューでは難しい「ながら」の活用法も試しています。まだ業務全体に浸透しているわけではありませんが、こうした使い方を通じて、「DAYS GRAPHY」がもたらす価値や効果の実感が少しずつ得られ始めています。
業務の中で自然に使えるようになるにはまだ試行錯誤が必要ですが、日々の思考やアイデアづくりを支えてくれる存在として、少しずつ手応えを感じはじめています。
直近では、「DAYS GRAPHY」をより活用していくために、「どのように実務プロセスのなかに組み込み、業務効率化やアイデア展開へとつなげていくか」を検討したいと考えています。
「DAYS GRAPHY」を導入して感じていることや、今後の展望などをお聞かせください。
導入当初は手探りでしたが、「DAYS GRAPHYに読み込ませる口コミやレビューの種類を変えることで、顧客像や回答がどのように変化するのか」「自分が希望する回答を得るためには、どのように質問を設計すべきか」、そして「出力された回答の中でどのワードに注目すべきか」といったポイントを学んでいく中で、徐々に手応えを得られるようになりました。
特に印象的だったのは、背景エピソードまで自然に引き出せることです。たとえば、「コーヒーメーカーの購入理由」を尋ねた際には、「日曜日の朝、主人とカフェに行くのが日課なのですが、そこで飲むコーヒーがとても美味しくて。その体験を家でもしたいと思ったことが購入のきっかけです」といった、感情や生活の背景が伝わる回答が返ってきました。リアル調査では「よく行くカフェのコーヒーが美味しくて、家でも淹れようと思った」といった簡潔な回答になることも多く、購買に至った細かいシチュエーションや背景情報が見えてこないという課題がありました。その点でも「DAYS GRAPHY」の活用は非常に有効だと感じています。
相手は生成AIであることもあり、どれだけ質問を繰り返しても気を遣う必要がなく、心理的なハードルが非常に低い点も魅力です。対面の調査では「また同じことを聞かれている」と感じさせてしまうこともありますが、「DAYS GRAPHY」であればこちらが納得するまで自由に深掘りすることが可能です。
操作に慣れてきた今でも、たまに「次に何を聞けばよいか」と悩む場面はあります。そんなとき「DAYS GRAPHY」が質問候補を提案してくれるのですが、その精度がまた高くて。人間と対話しているときのように自然と会話が続き、背景エピソードもどんどん引き出せるので驚きました。

現在、私たちの商品企画部はデザイングループと企画グループに分かれていますが、「DAYS GRAPHY」を利用しているのはデザイングループの一部のみです。今後はデザイングループ全体への浸透を目指すだけでなく、企画グループにも広げていきたいと考えています。「DAYS GRAPHY」の性質上、企画グループでの導入は非常に有意義であると感じています。ターゲット層ごとに精度の高い顧客像を生成して対話することで、リアルなユーザー調査に匹敵する回答を得られるので、企画段階の壁打ちやアイデアのブラッシュアップなどに大変効果的です。また、業務効率化やコスト削減の面でも大きなメリットが期待できます。
実際に、過去の対面で実施したユーザー調査とどのくらいの差が出るのかを確認するために、過去にリアルで実施したユーザー調査の質問をいくつか「DAYS GRAPHY」でも実施してみたのですが、リアルでの調査とほぼほぼ同じ回答でした。調査の内容にもよるとは思いますが、かなり精度が高い印象でした。
私たちにとって「DAYS GRAPHY」は、今後、デザインソフトと同じく、日々の業務でなくてはならない、あって当たり前の存在になり得るのではないかと考えています。
担当者様からひとこと
今後、世の中でやりとりされる情報の量はますます増加すると予測しています。情報のキャッチアップや分析能力が市場競争の行方を大きく左右するようになれば、生成AIを活用した顧客理解も商品開発のためのなくてはならない手法の1つになり得ます。だからこそ、生成AI技術とリアルを併用して業務を進める経験を、今のうちに積んでおくことが重要だと考えています。並行して、生成AIの出力とリアルで得られる情報の差の検証と、定量・定性の両面から客観的に分析できればと思っています。
現在、私たちは商品開発におけるデザインのプロセスで活用していますが、今後は他の部門でも「DAYS GRAPHY」を活用していきたいと考えています。活用の幅が進めば、会社全体で意思決定のための土台づくりが容易になり、意思決定の精度や速度が向上することも考えられます。現在の私たちの取り組みやそこで得られたノウハウをまずは企画部門に共有し、世の中の生成AI技術活用の波に乗り遅れないように推進していけたらうれしいです。

当社はもともと顧客理解を非常に重視する文化がありますが、それでも近年、生活スタイルや価値観の多様化が進むなかで、顧客の潜在ニーズを捉える難易度は年々高まっていると感じています。外部パートナーに任せきりにするのではなく、自社の手で顧客の本質的なニーズや背景を捉える力が、これからの企業成長においてより重要になってくるでしょう。
そうした課題に対して、私たちは「DAYS GRAPHY」を導入したことで、ユーザーの声を拾う機会を増やせている実感があります。拾った声を最大限いかし、新たなアイデアの創出やアイデアを形にするプロセスの効率化の目処も、ある程度ついてきています。一方で、「DAYS GRAPHYから適切と思われる回答を引き出し、それを参考にしてただ業務を進める」といった発展性のない使い方にならないよう、意識的な使い方が必要だとも感じています。どの業務においても、生成AIの出力に依存するのではなく、他の情報と照らし合わせて総合的に判断する。そのうえで、人間が最終的な意思決定を行うというプロセスは、これから先も変わらないと考えています。
こうして生まれた余剰時間をデザインの精査やブラッシュアップに費やせるようになると、商品の完成度をより向上させることができます。シナジーマーケティングさんの力も借りながら、ぜひ実現したいですね。
※記載されている内容は取材当時のものであり、一部現状とは異なることがありますが、ご了承ください。




