コミュニティーサイトでお客様からの声を収集
大阪王将大ヒットメニュー誕生秘話
背景と目的
―― 食生活研究所について教えてください。
「食生活研究所は、メールマガジンや会員アンケート、お役立ちレシピの公開などのコンテンツ提供を通じてお客様とのコミュニケーションを行っているWebサイトです。ここで行われたコミュニケーションから、お客様の評価や改善要望などを抽出し、商品やサービス、業態開発の意思決定に反映させています。
昨年は、大ヒットした大阪王将の期間限定メニュー『ふわとろ天津飯』の企画にもかかわり、製品のヒットにも大きく貢献できたと思っています」(松本様)
―― 食生活研究所を立ち上げたきっかけについて教えてください。
「弊社の事業には、外食と冷凍食品という大きな二つの柱があります。外食では、『大阪王将』『よってこや』『シノワーズ厨花』などのブランドがありますが、顧客管理や販売促進、商品開発のためのお客様の声の吸い上げなどは、各ブランドや店舗まかせになっていました。 一年間、お店にご来店いただくお客様や冷凍食品を購入されるお客様。その多くのお客様の声を何とかして製品開発や販売促進に活かすことができないかと考えました。そこで、全てのお客様情報をデータベースで一元化しようとしたのがきっかけです」(松本様)
―― 一元化されたデータベースをもとに、どのような企画を検討されていましたか?
「弊社が用意したフィールドで、日頃からご愛顧いただいているお客様が楽しく盛り上がって対話でき、その中で気楽に本音を出していただける。そんなコミュニティスペースを作りたいと思っていました。
そこで行われたコミュニケーションが製品開発につながったり、こちらからもクーポンなどお客様のお役に立つ情報を提供したりできる。要はお客様との接点を持ち続けることができるようにしたいと考えていました」(松本様)
―― お客様のご意見をいただくのに、コミュニティスペースのようなものを作りたいと考えたのには何か理由があるのでしょうか?
「大阪王将は今年で創業45年目になるのですが、そこで培われたお客様との関係のあり方が土壌にあるのだと思います。昔はカウンターしかないような狭い店で、その店の店主と常連のお客様が今日の出来事について気楽に会話していました。そんな“大阪王将イズム”と言われるようなものが弊社にはあると思っています。
現在マーケティング領域では、ソーシャルメディアなどを通じてお客様ともっとつながりを、というようなことを多く耳にします。ですが、そのようなことは試作品を常連のお客様に試食してもらうカウンター越しのテストマーケティングであったり、お客様が常連同士でつながったりなど、弊社では何年も前から店舗で行われていました。私は、食生活研究所もその“大阪王将イズム”の延長線上にあるものだと考えています」(松本様)
「多くのお客様にご愛顧いただいたおかげで、弊社もたくさんの店舗を展開するようになりました。大阪王将も昔は一店舗につき一人店主がいたのが、複数店舗を一人の店主が経営するようになり、店主がすべてのお客様と会話するのが困難になってしまいました。
ですが本部としても、やはりお客様との会話が必要だという思いがあり、コミュニティスペースというアイデアが自然に生まれてきたのだと思います」(室山様)
概要
―― そのようにしてスタートした食生活研究所が、『ふわとろ天津飯』のヒットに象徴されるように、商品開発で成果を残しています。そのスキームを教えてください。
「まずは『Synergy!』を利用した会員向けのメールマガジンの定期配信や、食生活研究所でアンケートの実施です。企業サイドの都合ではなく、定期的に情報発信とサイト更新を行うことで、アンケートへの反応率も上がってきています。これにより、お客様から定期的かつ定量的にご意見をいただけるようになりました。
また、商品開発のための試食会をメールで案内し、その試食会で行ったモニタリング調査の結果をもとに商品をブラッシュアップ、販売へと至ります」(室山様)
―― では、『ふわとろ天津飯』の商品開発について教えていただけますか?
「餃子につぐ看板商品、『これを食べたら大阪王将を理解できる』という商品を作ろうというプロジェクトがきっかけです。このプロジェクトは現在も進行中なのですが、その最初の商品が『ふわとろ天津飯』でした。もともと弊社のレギュラーメニューには、大阪王将のものは美味しいという評価をいただいていても、他社様と比較してクオリティーが飛びぬけて高い、という商品が餃子以外にありませんでした。そこを頭ひとつ抜きんでた、『これが大阪王将だ』という商品を作りたいと考えていました」(松本様)
「食生活研究所では、食べたい商品について名前とイラストだけで会員様に投票してもらうというアンケート調査から始めました。そこからいくつか商品のコンセプトを決めてアンケート調査し、評判の良かった商品の試食会を行いました。試食会ではインタビューとアンケートを行い、最終的に残ったのが『ふわとろ天津飯』でした。それからモニタリング調査の定量・定性分析結果を把握した上でさらに製品をブラッシュアップ、さらにエリアごとの店舗調査を実施して、全店リリースへと進行していきました」(室山様)
―― そうしてリリースされた『ふわとろ天津飯』は大ヒットしたわけですが、その評判はネット上でも実感できたと聞いています。
「発売前にネットニュース向けに試食会を行いました。そのニュースの写真や感想を見た時に『これはすごそうだ』という期待が高まったと思います。また、テレビCMやWebサイト、ソーシャルメディアも活用し、総力を挙げてプロモーションを実施しました。
実際に商品が販売されてからは、“大阪王将の『ふわとろ天津飯』を食べてきました”というタイトルのブログがたくさん公開され、Twitterでも『大阪王将』というキーワードが多くつぶやかれていました。結果、Webサイトのアクセス数が増加して、前月の倍の水準にまでなりました」(室山様)
総括と展望
―― 今回の『ふわとろ天津飯』の成功のポイントは何でしょうか?
「食生活研究所は現在会員数8万人になっており、多くのお客様とコミュニケーションしています。この活動を機軸に、商品開発のスキームが成立したことが成果に結びついていると思います。それが、お客様とともに商品開発していく“共創”という食生活研究所のコンセプトが徹底され、イートアンドに愛着を持っていただくことにつながっているのではないかと思っています」(松本様)
―― 今回、シナジーマーケティングがご支援した内容についてはいかがでしたか?
「『Synergy!』はメール配信からアンケート、お問い合わせ管理まで可能な総合コミュニケーション・プラットホームで、一元化されたデータベースでお客様の声を引き出すきっかけとなる非常にいいツールだと思っています。
コンサルタント、開発、デザイナーの方も、それぞれプロフェッショナルとしての立場から、誠心誠意対応してくださっています。やはり、このような仕事の場合、一緒に仕事をしている方の顔が見えるというのは、なかなかないことだと思います。オンビジネスだけでない、心の通いあったチームとして仕事していただいたのは、とても素晴らしいことだと思っています」(松本様)
「実際にしっかりとしたソリューションをお持ちで、弊社でやること、シナジーさんがやることを明確に線引きした上で、お互いをパートナーとして仕事をやりやすい状況に持っていってくださるところにもプロフェッショナルの意識を感じます」(室山様)
―― 今後の活動について抱負などありましたら、お聞かせください。
「食生活研究所のコンセプトのひとつが『お客様に開発プロセスに参加していただくこと』です。そのためには、お客様と私たちが思いを共有していくことが必要だと、私たちは考えています。いただいた意見は、いいものも悪いものもしっかりと検討していきますので、お客様にはぜひご協力いただきたいと思っています。
今後もシナジーさんに相談しながら、お客様との“共創”の色合いをより強めて、食生活研究所を運営していきたいと思っています」(松本様)
※記載されている内容は取材当時のものであり、一部現状とは異なることがありますが、ご了承ください。