事業戦略レベルでのサイト改善でEC書籍販売のビジネススケールを実現
~昨対比150%超のセッション数に伸長、ECサイト売上12%増~

株式会社ぎょうせい

明治26年の創業以来126年余にわたり、全国の自治体や法曹、税務、教育機関向けに、法令集や実務書などの書籍を出版する株式会社ぎょうせい様。同社はこれまで、営業による対面販売が主力でしたが、ネット購入の普及に対応するため、以前から運営するECサイトのさらなる磨き込みが課題となっていました。ぎょうせい様から依頼を受けたシナジーマーケティングでは、断片的な改修にとどまらず、事業戦略レベルでのECサイト改善策をワンストップで提供することで、EC書籍販売のビジネススケールを実現しました。今回の事例では、これらの取り組みの全容を紹介します。

インタビュー参加者写真

写真左より

秋山 隆尚 氏
株式会社ぎょうせい 法令コンテンツ事業推進部 主事

板橋 祐己 氏
株式会社ぎょうせい 法令コンテンツ事業推進部 主事

東山 晃輔
シナジーマーケティング株式会社 東日本事業部 コンサルティンググループ

宮崎 優
シナジーマーケティング株式会社 東日本事業部 第2エージェントグループ

横山 博之
シナジーマーケティング株式会社 東日本事業部 第2アカウントセールスグループ

※部署名・役職は取材当時(2020年1月)のものです

1. 若手潜在層の獲得でEC書籍販売のビジネススケールを


板橋 祐己 氏(株式会社ぎょうせい 法令コンテンツ事業推進部 主事)

― ぎょうせい様は運営するECサイトにどのような課題をお持ちだったのでしょうか。

板橋氏(ぎょうせい) 当社の書籍販売は、全国9支社の営業による対面販売が主力ですが、以前からECサイトでも販売を行っています。近年このECサイトの状況として、世の中のネット購入の急速な普及に逆行するかのように、セッション数のゆるやかな下降トレンドが見られるようになりました。

当社の主なお客様は、行政機関や全国の市区町村にお勤めの50代以上の管理職の方です。現在これらの当社のことをよく知っていただいている方がリタイアを迎えつつあるなか、30~40代の方への当社ブランドの浸透はこれからという状況です。

つまりこのような若い世代の方にブランドが十分浸透しきれていないことも要因となり、購読者の世代交代が滞り、ECサイトのセッション数の低下を招いているのではないかと感じていました。そこで、若手潜在層の獲得という観点からECサイトのさらなる磨き込みをシナジーさんにお願いしました。

2. 量的拡充と、質的改善の両輪でのアプローチ


東山 晃輔(シナジーマーケティング 東日本事業部 コンサルティンググループ)

― ではその課題に対して、シナジーマーケティングはどのような対策をご提案したのでしょうか。

東山(シナジー) セッション数の改善というぎょうせい様の課題を解消するにあたり、ECサイトの書籍情報だけでは流入数アップは難しいと考え、まず「量的拡充」として、潜在層獲得のためのオウンドメディアの立ち上げとSEO対策、そしてそこからECサイトへ誘導させる導線構築を提案させていただきました。一方で、セッション数を伸ばすだけでは、ECサイトの売上が伸びない可能性がありますので、「質的改善」としてECサイトのCVR向上のためのUI/UXの改善も合わせてご提案しました。サイト改善では、これらの「量」と「質」の両輪での対策が欠かせません。

― それぞれの対策の詳細を教えてください。

東山(シナジー) まず「量的拡充」のオウンドメディアの立ち上げに関しては、ぎょうせい様がお持ちの膨大な記事やコンテンツの中から、「どのような情報を出すことでECサイトへの送客率を高められるのか」、また、「検索ニーズのなかで、いま掲載されていない情報は何か」などを調査のうえで、どれからWebコンテンツ化すべきかの優先順位づけから始めました。

具体的には、ぎょうせい様の主力誌である地方自治の専門誌月刊「ガバナンス」の場合、まず過去の記事の目次をピックアップのうえで、どのようなコンテンツがあるのかを整理し、それらのキーワードを抽出します。次にキーワードが「自治体 事例」であれば、それを実際に検索し、現時点でどのような記事が上位表示されているのかを踏まえて、地方自治体の30~40代の方の課題解決につながるような記事から優先的にWebコンテンツ化していくという流れです。実際にWebコンテンツ化したものは、そのセッション数や直帰率などを確認します。さらにコンテンツからのユーザーの遷移先も分析することで、ECサイトの送客につながりやすい記事や、購入につながりやすい記事はどのようなものかという見極めをおこないました。

次に「質的改善」のCVR向上のためのUI/UXの改善に関しては、ECサイトの導線上、「商品詳細」から「カート」への遷移がボトルネックとなり、購入に至らないという状況が見て取れました。そこで数字やデータには表れてこないユーザーの心情に寄り添い、「使いやすさ」と「競合との差別化」という2軸からの改善策をアドバイスさせていただきました。

まず「使いやすさ」の改善策としては、カートの表示位置の変更。そして購入フローにおいて、紙の書籍か電子書籍かの選択がしづらいという、ユーザーインターフェースの観点からの改善をアドバイスさせていただきました。そして「競合との差別化」という点での改善策としては、ぎょうせい様の書籍は、専門的かつジャンルも多岐にわたるため、書籍についてより詳細な説明を記載いただくことをアドバイスいたしました。この改善はユーザーにとっての分かりやすさの観点のみならず、SEOの観点からも有効です。

板橋氏(ぎょうせい) ECサイト自体は、当社が以前からお取引のある制作会社さんに運営をお任せしていましたので、これらシナジーさんからいただいたアドバイスは、当社から制作会社さんにお伝えさせていただく形を取りました。その際も、制作会社さんへの伝達に必要となるワイヤーフレームの準備や、コーディング後の最終的な検証もシナジーさんに担っていただけ、非常に助かりました。

3. コンサルタントとクリエイターの連携


宮崎 優(シナジーマーケティング 東日本事業部 第2エージェントグループ)

― オウンドメディアのクリエイティブを担った宮崎さんは、どのように進めたのですか。

宮崎(シナジー) オウンドメディアの制作で意識したことは、「サイトの使いやすさ」と「ECサイトへの誘導」、「競合との差別化」の3点です。

まず「サイトの使いやすさ」では、ユーザー側と、サイト運営側の双方からの視点があると思います。ユーザー視点では、若手潜在層の獲得という観点からサイトを利用いただくあらゆるシーンや環境を想定し、「モバイル・ファースト」に取り組みました。また、運営側の視点としては、管理画面がご要望に添うものとなるよう、どのような構造が機能的であるかを検証しながら制作を進めました。ユーザーの期待以上の体験を提供するためには、運営側にとっても使い勝手の良いサイトであることが重要となります。

次に「ECサイトへの誘導」という点では、各記事の下に、関連した雑誌に誘導するボタンをつけています。また関連する広告も設置していますが、記事中の広告表示はできるだけ減らすようにしています。なぜなら、ユーザーは解決したい課題があるからこそオウンドメディアサイトに訪れてくれるのであって、ユーザーが求めているのは、それらを解決するためのコンテンツです。そのような状況で、売り込み色が強い広告ばかりが目に留まってしまうのであれば、それはユーザーが求めているものではなく、ユーザーの立場に立ったオウンドメディアとは言えません。今回の制作においては、ユーザーの立場に立って本当に欲しい情報はなにか、そしてその情報にいかにスムーズにたどり着けるかというユーザー目線を第一に考えたうえで、できるだけ自然な形でECサイトに訪れてもらえるように設計しました。

最後に「競合との差別化」に関しては、競合以外にも、さまざまなメディアサイトも参考にしながら、それぞれのサイトの特徴を比較できる一覧を作成しました。これをもとに特にカラーリングなどの検証を重ね、他のサイトと明確に差別化を図れるようなデザインに仕上げています。

― 戦略を担う東山さんと、クリエイティブを担う宮崎さんとはどのようなやりとりをしていますか。

東山(シナジー) 宮崎とは前提となっている課題や、そこで何を解決していきたいのかという目的や狙いを私から伝え、常に連携を取りながら進めています。例えば、私の考える課題や改善したい内容について、「こうすればいいんじゃないか」という私の意見と、クリエイティブや技術的な知見から「こういうやり方があるよ」という宮崎の意見をすり合わせながら、具体的な改善案を考えています。このような連携は外部の制作会社さんとの場合、ここまでスムーズに連携できないことが多く、社内で完結できることは大きなメリットです。

宮崎(シナジー) 私も戦略立案側であるコンサルタントとの相互理解は非常に重要だと考えており、東山としっかりとコミュニケーションを取ることを心がけています。コンサルタントは、クリエイターの意見に耳を傾けてくれ、課題解決の方向性や目的を明確に伝えてくれる。またクリエイターも、コンサルタントの戦略に対する理解を深めるとともに、必要なアドバイスやアイデアを提供する。このように、コンサルタントとクリエイターとの認識共有やすり合わせは、お客様の課題解決に向けて同じ方向に向かうための重要なプロセスだと考えています。当社の両者の関係性は、それぞれの専門家の「役割分担」という表現ではなく、専門家同士の「連携」や「融合」という表現のほうが正しいかもしれません。

4. 昨対比150%超のセッション数に伸長、ECサイト売上12%増


秋山 隆尚 氏(株式会社ぎょうせい 法令コンテンツ事業推進部 主事)

― 取り組みの結果、どのような成果が出ていますか。

秋山氏(ぎょうせい) 2019年3月にオウンドメディアをローンチしてから、ECサイトとオウンドメディアのセッション数が大幅に伸びました。ローンチ直後は双方の合計で月間6万セッション程度でしたが、現在では10万セッションを超えています。昨年対比で150%近くセッション数が伸長したことになります。さらに、ECサイトの売上も、昨年比で12%増となり、当初の予想をはるかに超える成果があがっています。またこれらの取り組みは社内でも評価され、表彰を受けることにもなりました。これは、私たちWebチームだけではなく、オウンドメディアのコンテンツ作成に協力してくれている当社の編集者たち、そしてシナジーさんのおかげと感謝しています。

東山(シナジー) 当初、オウンドメディアの目標を月間1万セッションとした時に、私から「少なくとも120コンテンツは作ってください」とお伝えしていたのですが、それが現在では500を超えるまでになっています。御社の編集者の方々のご協力で、これほど質が高く独自性のあるコンテンツを驚異的なペースで作っていただけたことは大きな成功要因であり、関係者の皆さまのおかげです。

板橋氏(ぎょうせい) ECサイトで昨年比10%を伸ばすことは大変だと言われるなか、関連するサイトのセッション数の飛躍的な伸長、ECサイト売上12%増という成果をあげられたことで、EC書籍販売の取り組みに非常に手応えを感じています。またこれらの数字的な成果以外でも、読者の方からFacebookを通じて「これはいい着眼点の本だ」とお褒めのお言葉をいただくことや、著者の方から「ここまで大きく取り上げてくれてありがたい」という感謝の言葉をいただくこともあります。これらは当社のWebプロモーションが、お客様、著者、そして当社を結びつける良い循環を生んでおり、その中心的な役割を担ってくれているのがオウンドメディアであると感じます。私たちの取り組みは、こうした副次的な成果も生んでいるのではないでしょうか。

5. 戦略立案から制作までをワンストップで提供できる強み


横山 博之(シナジーマーケティング 東日本事業部 第2アカウントセールスグループ)

― ぎょうせい様の担当として、改めてシナジーマーケティングの強みを教えてください。

横山(シナジー) サイト改善に関して、オウンドメディアを含むサイトへの流入数を増やしていくという「量」の部分と、サイトを訪れた人の離脱率を抑えて、遷移率を上げていくという「質」の部分の2つをワンストップでお手伝いできるところが当社の強みであると考えています。

例えばこの「量的拡充」をSEO対策会社に、そして「質的改善」のUI/UX改善を制作会社やデザイン会社に、というようにそれぞれ別の会社にお願いしますと、成果が出にくい場合があります。それは、その片方のみで高いパフォーマンスを発揮しているという状態や、双方のパフォーマンスは悪くないものの明らかな連携不足で十分な成果を得られない状態に陥る可能性が高く、断片的な「部分最適」の改善に終始してしまうからです。

一方当社では、戦略フェーズであるコンサルタントと、集客施策実行・制作フェーズであるSEO支援や制作を担うクリエイター、双方のパフォーマンスが高いことはもちろん、両者のシームレスな連携。つまりワンストップサービスによる「全体最適」によって最短で成果に導くことが可能です。さらに今回の取り組みは、当社が提供する全体最適のみでなく、オウンドメディアのコンテンツ作成にご協力いただいた編集者の皆さまを含めたぎょうせい様と当社との連携も密で、「チーム全員での全体最適」が図れていたため、最高のパフォーマンスが発揮できたと感じています。

今後も引き続き、最初に定めたKPIに対する進捗状況と現状の課題、そしてそれに対する解決策をぎょうせい様と当社で密に連携しながら議論を交わし、さらなる成果を目指したいと考えています。

板橋氏(ぎょうせい) この取り組みを始めるにあたり、約1年前に複数の業者さんにお声がけさせていただき、どの業者さんにお手伝いいただくか、社内でもかなり議論を重ねました。そしてシナジーさんに決定した最大の理由は、やはりECサイトの売上向上のための戦略立案から、集客施策と制作にいたるまでを、ワンストップでご支援いただけることでした。

サイト改善のためのいくつかの領域を、別の業者さんに依頼しようとした場合、それぞれに1から関係を構築しながら業務を進めていかなければならず、必然的に時間的なロスが生じます。しかし、今シナジーさんにワンストップでご支援いただいているからこそ、ECサイトの売上向上に関する取り組みのPDCAを高速で回していただき、最短で成果に導いていただけたと実感しています。

― 最後に、今後シナジーは、ぎょうせい様にどのようなご提案をしていく予定ですか。

東山(シナジー) オウンドメディアについては、現在セッション数を順調に伸ばすことができていますので、次のフェーズとして、オウンドメディアからECサイトへの送客という「質」の部分に、さらにフォーカスして取り組んでいきたいと思っています。そしてECサイトについては、既存のお客様への販売促進という点では、まだまだやりきれていない領域があります。今後は、ぎょうせい様のオウンドメディア、Webサイト、さらには既存顧客に対するマーケティングという3つの観点でさらなる収益向上に向けたご支援をさせていただきたいと思っています。

― この度は貴重なお話をありがとうございました。

※記載されている内容は取材当時のものであり、一部現状とは異なることがありますが、ご了承ください。

株式会社ぎょうせい
法令コンテンツ事業推進部 主事
板橋 祐己 氏

株式会社ぎょうせい
法令コンテンツ事業推進部 主事
秋山 隆尚 氏

株式会社ぎょうせい

ぎょうせいは、地方自治、法令・判例、自治体関連を中心に、実務書籍を出版しています。ASP法令・判例検索、自費出版、公会計システム等ITソリューション、地域振興イベントサポート、自治体例規整備支援等も行っています。