展示会来場者リストの量と質を向上するとともに
リストに対する体系的コンタクト体制も構築

シスメックス株式会社

※こちらの記事は、「BtoBマーケティング成功事例集 アイ・エム・プレス社」からの出典となります。

ビジネスの概要 ― 検体検査領域のグローバル・トップ10に入るアジア唯一の企業が新規分野に参入

1968年2月の設立以来、血液や尿、細胞などを採取して、その成分を分析するための機器・試薬・ソフトウェアを提供する検体検査事業を中心に、豊富な製品やソリューションを世界中の医療機関などに提供するシスメックス株式会社。一般にはアテネ五輪女子マラソンで金メダルを獲得し、ロンドン五輪への出場も目指す野口みずき選手が所属する陸上チームを運営する企業などとして知られているが、その実態は検体検査領域のグローバル・トップ10に入るアジア唯一の企業であり、特に「血球計数分野」では世界No.1シェアを獲得するなど、医療関連業界では知らない人がいないほどの高い知名度を誇っている。1995年11月には大阪証券取引所、翌1996年7月には東京証券取引所で第二部に上場。2000年3月には双方で第一部昇格を果たしており、従業員数は4,960名(連結:2011年3月31日現在)、年間売上高は1,246億9,400万円(連結:2011年3月期)にも及んでいる。

現在展開している主な事業は、検体検査事業のほか、同事業で培った技術をもとに、遺伝子、たんぱく質などを調べる最新のテクノロジーを用いて、新しい検査・診断技術を創出するライフサイエンス事業、採血せずにヘモグロビンを推定できる装置など、健康管理支援や保育業務支援に役立つ各種ソリューションを提供する事業など。その活動範囲は日本国内にとどまらず、世界160カ国以上に販売・サービスネットワークを構築し、製品・サービスの提供を行っている。

同社は2000年代に入って新規事業として「粒子計測分野」に参入した。前述の通り、同社は医療向けの検体検査事業では圧倒的な知名度を誇っているが、ミクロ・ナノ単位の粒子を計測する粒子計測分野ではほとんど実績がなく、クライアントとなる電子・バイオ関連機器のメーカーなどにおいてはほとんど知られていない存在であり、従来の高い知名度に基づく営業活動とは異なるアプローチが求められていた。そこで同社では、営業活動の中にCRMという概念を導入し、その概念に基づくマーケティング活動を展開することを決定したのである。

これまでの経緯 ― 効率性向上を目指して戦略的マーケティングへの取り組みを開始

同社では前述の通り、2000年代に入って粒子計測分野に参入した。参入当初から、まずは知名度を高め、製品を知ってもらうことが重要であると考え、その手段として関連する展示会に出展することを決定。年4回程度の出展を行う中でデザイン面を中心に「いかに会場内で目立つ=立ち寄ってもらえるブースを作るか」に注力してきた。しかし、展示会後の来場者に対するアフターフォローについては、人的リソースの不足もあって手が回らず、必ずしも十分とは言えない状況にあった。つまり、展示会自体には注力していても、展示会への出展を最終的なクライアント獲得につなげるための方法論が確立されていなかったのだ。

同社ではこのような認識から2006年にマーケティング活動の刷新に着手。CRM関連製品・サービスの企画・提供を行うシナジーマーケティング株式会社の協力により、展示会とWebサイトを軸とする戦略的マーケティングへの取り組みを開始した。

シスメックスのブース
製品知名度の向上を目的として展示会に積極出展

取り組みの概要 ― 展示会を具体的なクライアント獲得の第一段階の場へと転換

同社が取り組んだ戦略的マーケティングの目的は、展示会来場者を育成し、営業担当者に引き渡すことにより、最終的には成約につなげていくこと。従来、展示会は事業・製品告知の場としての位置付けが強かったが、これを具体的なクライアント獲得の第一段階の場へと転換させることを目論んだのだ。

具体的には、来場者へのアフターフォローを迅速に行うと同時に、その精度を向上。さらに受け皿としてWebサイトのリニューアルにも取り組んだ。従来のWebサイトは、極論すれば製品の情報がただ載っているだけのサイトであったため、コンテンツを拡充することで、より説得力があり、見込み客の情報ニーズに対応できるサイトへの転換を図ったのだ。

また、個々の来場者がどの程度製品に興味を持ち、具体的なニーズを持っているかを表す“ホット度”に基づくアプローチも徹底し、ホット度が高い来場者については、早期に営業担当者が直接コンタクトを取る体制も構築した。

施策の展開方法 ― iPadを利用した来場者アンケートにより質の高い見込み客リストを獲得

同社の戦略的マーケティングへの取り組みにおいては、母数となる展示会来場者のリストの量と質を向上し、さらにそのリストに対して体系的なコンタクトを行うというアプローチが実施された。その顕著な例が、2010年6月30日~ 7月2日に東京ビッグサイトで開催された第23回インターフェックス ジャパンでの取り組みである。

この取り組みでは、まずイベント・コンパニオンが積極的な声掛けを行い、アップルのタブレット型コンピューター「iPad」上に用意したアンケート画面で、当該分野における具体的な課題や予算などについての簡単なアンケートに回答してもらうかたちを採用。1つの回答に1つのIDを付与し、それを別途取得した名刺データと付き合わせてデータベース化することにより、精度の高い見込み客リストの大量獲得を目指した。その結果、当時はiPadがまだ発売されたばかりで、話題となっていたことから、「iPadに触ってみたい」という来場者が多数ブースを来訪。従来は同規模のブースで300 ~ 500人程度だった獲得リスト数が1,000人以上にも及ぶと同時に、アンケートへの回答者も多く、質の高いリストの獲得に成功した。

イベント・コンパニオンが積極的な声掛けを行いアンケートの回答を促す

iPadを利用した来場者アンケート
iPadの活用によりアンケートへの回答率向上を図る

施策の展開方法 ― いち早い来場御礼eメールで同社や同社製品に対する認識・印象を定着

来場者へのフォローについては、同社および同社製品への認識・印象を確かなものとしてもらうために、まずはなるべく早くリマインドのための来場御礼eメールを送信することを徹底。例えば、水曜日から金曜日までの展示会であれば、翌週の火曜日には来場御礼eメールを送信できる体制を構築した。なお、eメールの形態についてはHTMLメールを受信拒否している企業も多いという認識からテキストベースのeメールを採用。eメールに表示したURLによるリンクで展示内容と関連する映像情報などをコンテンツとするWebサイトへ誘導し、同社や同社製品に対する認識・印象の定着を図った。

来場者アンケートをベースに判定するホット度については、購入可能性と想定購入時期を軸に4段階を設定。最もホット度が高い層については、来場御礼eメールへの反応を確認する以前でも可能な限り営業担当者が直接コンタクトを行い、訪問することとした。このようなケースでも来場者アンケートの結果があることで、当初から具体的な商談を行うことができ、成約率、成約までのスピードともに、それ以前と比較して向上したとのことである。

一方、受け皿となるWebサイトについては、従来の製品紹介サイトをリニューアルし、「粒子計測のこと何でも解決サイト」を構築。見込み客の具体的な情報ニーズへの対応機能を強化した。さらに、関連したメールマガジンの定期発行なども行うことで、見込み客との定期的なコミュニケーション・チャネルを確立した。

リニューアルしたシスメックスの製品紹介サイト「粒子計測のこと何でも解決サイト」
受け皿となる製品紹介サイトをリニューアル

取り組みの効果 ― 展示会来場者を見込み客化し最終的に成約につなげていくための一連の流れを構築

第23回インターフェックス ジャパンにおける取り組みでは、前述の通り、話題性の高いiPadを来場者に画面を指でタッチしてもらうことで簡単に回答できるアンケートシステムとして活用した結果、従来の紙のアンケートと比べてアンケートの回答率や名刺の回収率が飛躍的に向上。さらに、優良見込み客の抽出を意識したアンケート設計を行ったことで、展示会終了後、早い段階で営業担当者が早急にコンタクトすべき確度の高い見込み客を引き渡すことができ、効率的な営業活動を実現することができた。

また、Webサイトのリニューアルでは、充実した説明機能が実現した結果、従来、全体の30%程度であったWebサイトからの引き合いが50%前後にまで上昇し、営業活動の中での役割を拡大することとなった。

これらは、同社が戦略的マーケティングの目的としていた、展示会来場者を育成し、営業担当者に引き渡すことにより、最終的には成約につなげていくための一連の流れを構築することが相当のレベルで達成されたことを表しており、BtoB分野においても、CRM視点での戦略的マーケティングが有効であることを示すものであると言えるだろう。

展示会を起点としたBtoBマーケティングの展開イメージ
展示会を起点としたBtoBマーケティングの展開イメージ

課題と展望 ― 戦略的マーケティングへの取り組みによって得られた知見とノウハウを他分野にも応用

同社では、2010年8月に英国スペクトリスPLCの子会社であるマルバーン インスツルメンツ リミテッドと業務提携。これに基づいて粒子計測分野において、「日本ではシスメックスがマルバーン製品のメーカーや大学の研究機関への販売・サポートを実施し、欧米では、マルバーンが独自の販売チャネルを活用し、シスメックスのフロー式粒子像分析装置を販売する」という従来の体制を、2010年10月から「日本でも英国スペクトリスPLCの子会社であるスペクトリス株式会社 マルバーン事業部が両社の製品を扱い、販売・サポートを実施する」という体制に改めた。従って、同社の粒子計測分野における戦略的マーケティングへの取り組みは、現状では完結したかたちとなっている。

しかし、これらの取り組みによって得られた知見とノウハウは、その後、同社の他分野のビジネスに活用されている。例えば、Webサイトについてはそのマーケティング上の有効性が再確認できたことから、映像コンテンツを強化するなどわかりやすさを追求した改善を実施。さらにSEOやリスティング広告の出稿などのSEMも積極的に実施するようになった結果、アクセス数が増加。さらに資料・見積請求などのコンバージョン率も向上している。特にクライアントを単に“企業”として見るのではなく、決定権者を中心に企業内の“個人”を認識し、“個人”への訴求を意識したアプローチを行うことが高い成果につながっているようだ。

また、展示会運営についても優良見込み客リスト獲得のための手法が定着しつつあり、出展効果も向上傾向にある。

さらに同社では、将来的に病院施設管理などの新ビジネスに参入することも模索しており、それらの分野でも、これまでに培ってきたノウハウを生かした戦略的マーケティングを展開していきたい考えである。

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※記載されている内容は取材当時のものであり、一部現状とは異なることがありますが、ご了承ください。

学術情報部 精度管理課 外部精度管理係
前田 忠 様

シスメックス株式会社

検体検査事業のリーディング・カンパニーであるシスメックス株式会社では、2000年代に入って新規事業として「粒子計測分野」に参入。知名度向上を目的に関連展示会への出展を行ってきたが、そこで獲得した見込み客を最終的なクライアント獲得につなげるための方法論が確立されていなかった。そこで同社では、2006年からマーケティング活動の刷新に着手。2010年には「iPad」を活用した来場者アンケートシステムを導入するなど、展示会とWebサイトを軸とする戦略的なマーケティング活動に取り組み、高い成果を獲得している。

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