【連載:VoC統合の壁 第1回】VoCは重要なのに、なぜ成果に変わらないのか。「重要性84.6%」と「十分活用14.2%」のギャップが示すもの

皆様、こんにちは。シナジーマーケティングの和田直之です。
私は日々、企業のマーケティングや顧客接点の設計に関わる中で、「顧客の声は大事だとわかっているのに、なぜうまくいかしきれないのか」という相談を数多く受けます。アンケートは実施している。レポートも作っている。社内共有もしている。にもかかわらず、営業の動きも、製品改善も、経営判断も、そこまで大きくは変わっていない。そんな違和感です。
この連載では、「顧客の声は、なぜいかしきれないのか。『VoC統合の壁』― BtoB企業における顧客アンケート活用実態調査2026 ―」をもとに、BtoB企業におけるVoC活用の現状を、単なる調査結果の紹介ではなく、経営と実務の論点として整理していきます。
<目次>
全5回連載「VoC統合の壁」のテーマ一覧
全5回で扱うテーマは、次の通りです。
- 第1回:VoCは重要なのに、なぜ成果に変わらないのか
- 第2回:VoCは集めているのに、“誰の声か”が見えていない問題
- 第3回:VoC活用を止めているのは、分析力より準備工数だったという現実
- 第4回:即日共有と顧客情報とのひも付けが、なぜ成果差を生むのか
- 第5回:VoCを「集計レポート」から「経営の先行指標」へ変えるロードマップ
このシリーズ全体を通じて一貫して見ていきたいのは、
「VoCを集める」ことと、「VoCで組織が動く」ことはまったく別だ
という点です。
顧客の声を取ることは、もはや珍しい取り組みではありません。
むしろ今のBtoB企業では、多くの現場が何らかのかたちでアンケートや満足度調査、ヒアリングを行っています。問題は、その先です。
集まった声が、営業、開発、カスタマーサクセス、経営判断へどうつながるのか。
そこまで設計されていなければ、VoCは「重要な情報」でありながら、「行動を変える情報」にはなりません。
第1回:VoCは重要なのに、なぜ成果に変わらないのか
第1回では、その出発点として、今回の調査が最も象徴的に示している
「重要性の認識」と「活用の実態」のギャップ
を見ていきます。
調査データが浮き彫りにする「認識」と「実態」の乖離
顧客の声を集めて分析することの「重要性84.6%」という前提条件
まず、顧客の声を集めて分析することの重要性についてです。
調査では、「非常に重要だと思う」41.8%、「やや重要だと思う」42.8%で、合計84.6%がVoCを重要だと認識していることがわかりました。
これはかなり高い数字です。
もはやVoCは、一部の先進企業だけが取り組む“付加価値施策”ではありません。
顧客理解、満足度向上、LTV向上、売上への貢献といった観点から、ビジネス成長を支える前提条件として認識されていると言ってよいでしょう。

特に注目すべきなのは、「重要ではない」と答えた層がごく少数であることです。
「あまり重要ではない」1.4%、「全く重要ではない」1.6%で、合計しても3.0%にすぎません。
つまり、VoCが必要かどうかを議論する段階は、すでにほぼ終わっているのです。
少なくとも、BtoBの顧客接点に関わる実務者層の認識としては、VoCは“あるとよいもの”ではなく、“ないと困るもの”に近づいています。
ここまでは、多くの企業にとって受け入れやすい話でしょう。
実際、現場でアンケートをやったことがある方なら、「顧客の声が役に立たない」とは言いにくいはずです。
ただし、調査をさらに見ると、ここから急に景色が変わります。
「十分活用14.2%」にとどまる活用の現在地
同じ調査で、
「顧客の声を、その後の施策にどの程度活用できているか」
を聞いたところ、「十分に活用できている」と答えた企業は14.2%にとどまりました。
一方で最も多かったのは、「ある程度活用できている」60.6%です。

この数字の意味は、とても重要です。
多くの企業は、VoCをまったく無視しているわけではありません。
アンケートは取っている。
回答を集計している。
場合によっては、関係部署にも共有している。
だから「全く活用できていない」とまでは思っていない。
しかしその一方で、「十分に活用できている」と言い切れる企業は少ない。
つまり、今の多くの企業は、VoCを“使ってはいるが、使い切れてはいない”状態にあります。
この「ある程度活用できている」という回答は、一見すると前向きに見えます。
ですが、見方を変えると、これは非常に示唆的です。
なぜならそこには、
「活用していないわけではない」
「でも、明確に成果へつながっているとまでは言えない」
という、曖昧な停滞感が含まれているからです。
たとえば、こうした状態は多くの企業で起きています。
アンケート結果を月次レポートで共有する。
定例会で参考データとして見る。
不満が多かった項目を議論する。
だが、その情報が顧客単位のアクションに変わらない。
営業の提案内容が変わるわけでもない。
解約予兆の検知につながるわけでもない。
製品改善の優先順位が変わるほどの材料にもなっていない。
この状態では、VoCは「見ている情報」ではあっても、「動かしている情報」にはなりません。
さらに、この構造は、ビジネス成果への貢献実感にも表れています。
調査では、顧客アンケートの活用がビジネス成果に「大いに貢献している」13.4%、「ある程度貢献している」54.6%という結果でした。
合計すれば68.0%が一定の貢献を感じていることになりますが、その内訳を見ると、はっきりとした確信を持っている層は限られています。
過半数は「ある程度」です。

ここから見えてくるのは、VoC活用の現在地です。
多くの企業は、顧客の声が役に立つこと自体は実感している。
まったく無意味だとは思っていない。
しかし、売上向上、継続率向上、LTV改善といった成果とのつながりを、明確に説明できるほどには仕組み化できていない。
だから、重要だとは思う。
だが、優先順位が上がりきらない。
結果として、“大切だが後回しにされやすいテーマ”になってしまう。
これがVoC活用の難しさです。
VoCをビジネス成果に変えるために必要な「実装力」
ここで、1つ視点を変える必要があります。
VoC活用の問題は、意識が足りないことではありません。
84.6%が重要だと答えている時点で、意識の不足が本質ではないことは明らかです。
本当に問うべきなのは、その声をどう実装するかです。
誰の声か、どう届けるかという「仕組み化」の視点
どの声を、どの部署に、どのタイミングで届けるのか。
誰の声なのかを、顧客情報や取引情報とどう結び付けるのか。
集計結果を、レポート止まりではなく、営業、製品改善、サポート対応、経営判断につながる形へどう翻訳するのか。
この設計がない限り、VoCは「重要な調査データ」から先へ進めません。
つまり、VoC活用の分かれ道はここです。
声を集める企業と、声で動ける企業。
この差が、今後ますます大きくなっていくはずです。
【連載第1回まとめ】VoC活用は「重要性」の議論から「実装力」の議論へ
第1回で押さえておきたい結論は、シンプルです。
VoCはもはや「重要かどうか」を議論するテーマではない。
本当に問われているのは、その声をどう成果へ変えるのかという実装力である。
では、なぜ多くの企業はその実装まで進めないのでしょうか。
その大きな理由の1つが、アンケート結果が“誰の声か”と十分につながっていないことにあります。
次回は、VoCが現場で止まる本当の理由として、顧客情報との分断を掘り下げます。
共有はされている。けれど動けない。
その背景にある「文脈の欠落」を見ていきます。
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※記載されている内容は掲載当時のものであり、一部現状とは内容が異なる場合があります。ご了承ください。

