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【連載:VoC統合の壁 第2回】VoCは集めている。だが“誰の声か”が見えていない。 顧客情報とつながらないアンケートが現場で止まる理由

【連載:VoC統合の壁 第2回】VoCは集めている。だが“誰の声か”が見えていない。 顧客情報とつながらないアンケートが現場で止まる理由

こんにちは。シナジーマーケティングの和田直之です。
前回は、BtoB企業においてVoCの重要性はすでに広く共有されている一方で、「十分に活用できている」企業は14.2%にとどまること、そして多くの企業が“重要だとは思っているが、成果に変えきれていない”状態にあることを見てきました。

全5回連載「VoC統合の壁」のテーマ一覧

全5回で扱うテーマは、次のとおりです。

  • 第1回:VoCは重要なのに、なぜ成果に変わらないのか
  • 第2回:VoCは集めているのに、“誰の声か”が見えていない問題
  • 第3回:VoC活用を止めているのは、分析力より準備工数だったという現実
  • 第4回:即日共有と顧客情報とのひも付けが、なぜ成果差を生むのか
  • 第5回:VoCを「集計レポート」から「経営の先行指標」へ変えるロードマップ

第2回:VoCは集めているのに、“誰の声か”が見えていない問題

第1回の結論は、VoC活用の課題は意識不足ではなく、実装不足にあるということでした。
では、その実装を止めているものは何でしょうか。

今回の調査を読み解くと、その大きな要因の1つとして浮かび上がるのが、顧客の声が「誰の声か」と十分につながっていないことです。
この問題は一見地味ですが、VoCを「レポート」で終わらせるか、「現場の武器」に変えるかを分ける、とても重要な論点です。

まず押さえておきたいのは、VoCそのものは決して閉じた情報ではないということです。
調査によれば、アンケート結果の共有先として最も多かったのは「営業部門」50.2%で、次いで「開発・製品企画部門」38.8%「マーケティング部門」31.4%「カスタマーサポート/カスタマーサクセス部門」29.6%「経営層・役員」28.6%と続いています。
この数字だけを見ると、VoCはある程度組織横断で共有されているように見えます。

アンケート結果の共有先として最も多かったのは「営業部門」50.2%で、次いで「開発・製品企画部門」38.8%、「マーケティング部門」31.4%、「カスタマーサポート/カスタマーサクセス部門」29.6%、「経営層・役員」28.6%

ここからわかるのは、多くの企業がVoCを“マーケティング部門だけの参考情報”として扱っているわけではない、ということです。
少なくとも意識としては、営業にも、開発にも、経営にも関係する情報だと捉えられています。
それ自体は前進です。

なぜ「共有されている」のに、VoCは十分な活用に至らないのか?

ただし、ここで1つ重要な問いが生まれます。
「共有されている」のに、なぜ十分な活用には至らないのか。

この問いに対して、今回の調査はかなりはっきりした示唆を返しています。
それが、顧客情報とのひも付けの弱さです。

調査では、アンケート回答結果を既存の顧客情報(属性や購買履歴など)と、どの程度ひも付けて管理・分析しているかも聞いています。
その結果、「常にひも付けて管理・分析している」企業は28.8%にとどまりました。
一方で、最も多かったのは「必要な時のみ、その都度手作業でひも付けている」38.2%です。
さらに、「ひも付けたいと考えているが、手間やハードルでできていない」18.0%、「ひも付けは行わず、アンケート結果のみを確認している」15.0%という結果でした。

「常にひも付けて管理・分析している」企業は28.8%、「必要な時のみ、その都度手作業でひも付けている」38.2%、「ひも付けたいと考えているが、手間やハードルでできていない」18.0%、「ひも付けは行わず、アンケート結果のみを確認している」15.0%

VoCを「現場の武器」へ変える、顧客文脈との接続

この結果は、かなり本質的です。
なぜなら、VoCが現場で使える情報になるかどうかは、その声に顧客の文脈が乗っているかで決まるからです。

たとえば営業現場で考えてみましょう。
「アンケートで不満が出ていました」という情報だけでは、正直なところ動きづらいはずです。

その声が、更新直前の大口顧客なのか。
導入直後でオンボーディングに課題がある顧客なのか。
特定機能をよく使う重要アカウントなのか。
取引規模の小さい単発顧客なのか。

この違いがわからなければ、優先順位も、打ち手も、コミュニケーションの仕方も決まりません。

逆に、
「更新2か月前の主要顧客が、導入後サポートへの不満をアンケートで示している」
とわかればどうでしょうか。
それは単なる満足度の低下ではなく、営業やカスタマーサクセスが即座に動くべきシグナルになります。
VoCはここで初めて、“集計結果”から“アクションの起点”へ変わります。

つまり、VoCの価値は、回答数やスコアの平均値だけでは決まりません。
誰の声で、どの顧客文脈に属していて、どのタイミングで発せられたものなのか。
この解像度があってはじめて、VoCは現場の判断材料として機能します。

では、なぜ多くの企業でそこまでつなげられないのでしょうか。
その背景には、VoCデータの管理方法そのものが分断されている問題があります。

VoC活用が止まる「真因」は、システムとデータの断絶

調査では、回収したアンケートの回答データをどう管理・保管しているかも聞いています。
結果は、「CRM等と自動連携し、顧客情報とひも付けて管理している」25.6%に対し、
「CRM等に手作業で登録している」22.2%
「ツール内やExcel等で、アンケート単体で管理している」25.2%
「特に体系的な管理はしていない」18.6%
「個人のPCや部門内ファイルで管理している」8.4%
というものでした。

「CRM等に手作業で登録している」22.2%、「ツール内やExcel等で、アンケート単体で管理している」25.2%、「特に体系的な管理はしていない」18.6%、「個人のPCや部門内ファイルで管理している」8.4%

「共有不足」ではなく「管理と接続の不足」

ここでわかるのは、VoC活用が止まりやすい理由は「共有不足」ではなく、管理と接続の不足にあるということです。
レポートとしては共有されている。
しかし、データとしては顧客情報から切り離されている。
だから現場は、“参考にはするが、今すぐ動く根拠にはしにくい”状態になります。

BtoB企業にとって、顧客の声は匿名のアンケート結果として扱うには、あまりにも惜しい情報です。
どの業界の顧客なのか。
どの規模の企業なのか。
どの契約フェーズにいるのか。
導入後なのか、更新直前なのか、失注直後なのか。
この背景がわかるだけで、同じ「不満」でも意味は大きく変わります。

たとえば、製品開発部門が「この機能への不満が増えている」と把握したとしても、その声がどの顧客層から出ているのかが見えなければ、改善優先度は決めにくいはずです。
また、マーケティング部門が満足度の高い回答を見ても、それがどの業種・どの利用状況の顧客から来ているのかが見えなければ、訴求メッセージや事例化の方向性にはつながりにくい。
つまり、VoCは“共有されること”だけでは足りず、顧客文脈と接続されることではじめて意味を持ちます。

「見て動けない」を脱却し、VoCを全社資産にするために

ここで改めて整理すると、今の多くの企業は次のような状態にあります。

  • 顧客の声は大事だと理解している
  • 実際にアンケートも取っている
  • 共有も一定程度している
  • しかし、顧客属性や取引情報とつながっていない
  • そのため、アクションに変えにくい
  • 結果として、“ある程度活用”で止まりやすい

これは、VoC活用の停滞を説明するうえで非常に重要な構造です。
企業は「VoCを見ていない」のではありません。
見ているけれど、文脈が足りないから動けないのです。

第2回で押さえておきたい結論は、ここです。
VoCが活きないのは、共有されていないからではない。
“誰の声か”が見えないまま漂っているからである。

この状態のままでは、VoCは全社資産になりきれません。
共有資料にはなっても、現場が使う情報にはなりにくい。
これが、VoC活用の大きな分岐点です。

では、なぜその接続が進まないのでしょうか。
それは、単にシステムがないからだけではありません。
もっと手前に、設問設計、配信対象者の抽出、集計・加工といった、運用の準備工数の重さがあります。
次回は、この「VoC活用を止めているのは分析力より準備工数だった」という論点を掘り下げます。
顧客の声を活かしたいと思っていても、その前に現場の時間が尽きてしまう。
そんな構造を見ていきます。

顧客の声は、なぜ活かしきれないのか。『VoC統合の壁』

顧客の声は、なぜ活かしきれないのか。『VoC統合の壁』

・テキスト:BtoB企業における顧客アンケート活用実態調査2026

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