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RFMは顧客の特徴を表していない(後編)
/マーケティング・サイエンスという共有知
~ CRM実践の知恵 ~ Vol.4

前編では、RFMのセグメンテーションを例にして、顧客理解を深めるためには、まずどの顧客セグメントを深掘りするかを適切に決めておくことが非常に重要である。しかし、その前のセグメンテーションが適切ではないと顧客理解が深まらず、結果的に曖昧なマーケティング設計につながってしまうという問題点について書いたが、では、どのようにセグメンテーションを考えていけばいいのか。

今回の後編では、その解決策に向かうために、そのRFMのセグメンテーションがうまくいかない理由・原因を考えるところから続けていこうと思う。

なお、RFMが無意味な手法と言いたいのでは決してない。たとえ有効な方法であっても、使い方を間違えると機能しない。RFMの特徴をよく理解して、適切に活用することが重要であるということが今回の主旨である。

RFMが普及した背景・活用シーン

まず、RFMが普及した背景・活用シーンを考えてみたい。

「RFMスコアは顧客を切り捨てる手法」と指摘された方がいたと記憶しているが、確かにインターネットがなかった時代は、顧客コミュニケーションは電話や郵送DMや訪問などがメインであった。
これらの手法では、顧客すべてにアプローチすることは非常にコストが高くつく。そのため、郵送DMでも、全員に対してコミュニケーションせず、顧客に序列をつけて郵送リストを絞り込むことがほとんどである。このような施策においては、RFMスコアなどによりDMを送付しない顧客を決めるという考え方が効果的であろう。[1]

 

RFMの3指標すべてを用いた顧客スコアリング・モデルは、たとえそれが単純な3指標の平均ランキングであっても、顧客生涯価値の順番を比較的正確に復元できる。このことは、CRM実務において、顧客をセグメント化したり優良顧客を判別したりするためにRFM分析が広く使われていることをすることを正当化する[2]

とその有用性はレポートされているように、Webコミュニケーションがなかった時代には、CRMが郵送や人的コストがかかる手段のみであったため、RFMスコアによる「序列付け」は現在より利用場面が多かったと考えられる。

しかしながら、特にWebマーケティングなどの安価な方法の場合は、顧客を切り捨てるのではく全員にコミュニケーションをするデザインが求められる。その際のセグメンテーションの方法としては、顧客を序列する「ランク」付けより、むしろ優劣をつけずに「区別」し多様性を理解するセグメンテーションの考え方がより重要になる。

現在では、様々な手法やテクノロジーを利用できる時代になっており、選択肢の幅は広い。そのような中で、どのようなケースでも、とりあえずRFM分析をしてRFMスコアで顧客を「序列付け」するというのではなく、「スコアリングでできることできないこと」にもあるように、分析の目的を十分に考えて最適な手法を採用していくことが成功の近道である。

RFMは「購買特性」を表すことはできていない

RFMとはどのような分析手法なのか、RFMスコアとは何を意味しているのだろうか。

注意しなくてはならないことは、RFM自体は顧客の購買特性を直接表す指標ではなく、潜在的な購買特性の結果発生した購買行動を数値化した間接的な指標であることだ。特にリセンシーは分析者の観測時点に大きく影響される

購買特性である購買頻度はRFM指標の一つであるフリクエンシーとは違う。購買頻度とはその顧客が生存している期間中の購買回数である。一方、フリクエンシーは観測期間全体の購買回数をカウントする[2]

つまりRFMは、最新購買日・累積購買回数・累積購買金額の3軸であるが、これは分析時点の顧客購買結果の「現状」であり、これらの指標だけでは、その結果の裏にある顧客の「購買特性」を表すことはできていない。このようなRFMの特徴の理解を深めることなしに分析を進めると、どうしても行き詰ってしまう。

CRMベストプラクティス賞を受賞した鳴海製陶様の事例では、まずM(マネタリー)軸とF(フリクエンシー)軸で顧客の「現状」を分析することから始めたが、そこから顧客購買特性の理解を深めるためには、RFMを使わず他の手法を採用している。

たとえば、顧客購買周期を(直近購買日-初回購買日)÷(購買回数-1)で求めることもその一例である。この指標をさらに分析していくことで、優良顧客の「購買特性」を明らかにした。

RFMだけでは顧客心理は見えてこない

また、RFM分析だけではなぜその行動をしたのかという顧客心理まではわからない。
これは他の購買分析やアクセス解析などでも同様であるが、購買結果の定量データ(数字)ばかり見ていても、お客様のココロを理解することは難しい。

鳴海製陶様では、顧客心理の理解を深めるために、M軸・F軸の顧客分析の後に「ご近所リサーチ」を実施した。そして、最終的に落とし込んだステップメールは、RとF軸を使った施策である。しかし、そのデザインの際には、RFM分析ではなく購買周期分析やご近所リサーチの定性データなど、目的に応じて様々な手法を使うことが有効である。

また、上述のコラムでも紹介した別の企業の事例でも、購買心理を明らかにするために、ご近所リサーチと商品軸の分析から成果を出している(この企業では、RFM分析は実施していない。)

これらの事例のように、RFMという購買行動の結果だけではなく、その行動の裏にある顧客心理(インサイト)を深く理解しなければ、真の顧客志向は実現しない。
そもそも顧客によって好み・価値観・ライフスタイルやニーズが違うために、顧客を分類するというのがセグメンテーションの本質であるため、デモグラやRFMだけのセグメンテーションで進めていくことは限界があることは自明である。

その限界を突破し顧客理解を深めていくには、定性データを活用し、数字の裏にあるストーリーを定性データ(言葉)で分析していくことである。
その方法としては、ワールドビジネスサテライトで紹介されたソリューションなどもあるが、様々な手法やテクノロジーを利用できる時代においてとにかく重要なことは、目的を明確にして、最適な方法を選択することである。

マーケティング・サイエンスとして蓄積・公開されているノウハウがある。その共有知を使わない手はない。

[1] 現在では、DM送付などのリストアップに際し、RFMよりも効果的なベイジアンネットワークを応用したスコアリング手法などがある。
[2] 阿部誠(2011). 「RFM指標と顧客生涯価値:階層ベイズモデルを使った非契約型顧客関係管理における消費者行動の分析」, 『日本統計学会誌』, 41, 51-58, 

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