CRMでメルマガからの売上が倍増!
小さなネットショップこそCRMに取り組むべき理由とは?

石巻元気商店

日本を襲った東日本大震災から5年。Yahoo! JAPANは、インターネット総合百貨店「復興デパートメント」を震災直後から立ち上げ、産業振興による復興支援を行っています。そこで開設当初から活動する「石巻元気商店」は、ECビジネスの素人が始めた小さなネットショップでした。それが今やYahoo!ショッピングのデイリー売上ランキングで1位、2位を独占する人気商品を提供するまでに成長しています。ネットショップのお手本のような成功事例に見えますが、ここに至るまでには多くの苦労と課題がありました。その苦労と、課題解決のために取り組んだCRMについて、代表の佐藤友美さまにお話を聞きました。

pic_showcase_otr-ishinomaki_01

生産者の想いを全国に届けたい。その一心でネットビジネスの世界へ

佐藤さまは、震災前は地域の水産加工会社をお客様に、Webサイト制作やパソコンによる申請業務を代行などするフリーランスとして活動していました。しかし、東日本大震災で状況は一変します。

「震災によりライフラインも止まってしまい、石巻は本当に大変な状況でした。それでも取引先の生産者さんは、“自分たちの魚をお客様に届けることで、自らの手で地域復興を進めたい” という想いを強く持っていました。私も “その人たちの期待に少しでも応えたい、そのために何かできないか” と考えていました。そんな時、NPO法人オンザロードから『Yahoo! JAPANが被災地でECサイト開設と、そのためのスタッフを探している』という話を聞き、すぐさま駆けつけました。」(佐藤さま)

pic_showcase_otr-ishinomaki_02

当時、佐藤さまは24歳。ネットビジネスの経験もなければマーケティングの知識もまったくありません。しかし、地域生産者の想いを全国へとつなぐため、ネットビジネスの世界に飛び込む覚悟を決めました。

ECサイト立ち上げの苦労と最初の成功、そしてぶつかったビジネスの壁

ECサイト立ち上げに携わるボランティアはEC運営経験がまったくなく、生産者も店頭の対面販売以外をしたことがありませんでした。そんなすべてが手探りの状況の中「石巻元気商店」はスタートしました。

「ボランティアで始めた私には、商売そのものがまったくわかっていませんでした。ただ、買って、食べて、“おいしいからまた買うよ” と言ってくれるファンを増やすお手伝いをすることが自分の仕事だと考え、無我夢中で取り組みました。石巻は、海のもの、田んぼのもの、山のものに恵まれ、おいしい食材がいっぱいあります。全国にもっとおいしい石巻を知ってもらいたい、生産者のみなさんからあふれる石巻の “あたたかみ” を届けたいという思いはその時から少しも変わりありません。
ECサイト立ち上げ当初は、寝る時間も惜しみ、営業に追われ、奮闘する毎日でしたね。“通販ならではの良さ” もわからないまま、とにかく走り出したような状況でした。」(佐藤さま)

ECサイトの開設当初は、Yahoo! JAPANのトップページにバナーが掲載されるなど、集まる顧客も多く比較的好調でした。2012年には、石巻の復興を目指し、知られざる名品を通販で届けるネット初心者20代の女子として佐藤さま自身が注目を集め、Yahoo! JAPANの復興デパートメント売上ランキング1位に躍り出ます。しかし、話題だけではそう長く続きませんでした。1年が経過し2年が過ぎると、売上が伸び悩み業績は踊り場にさしかかります。あらためてネットビジネスで “モノを売る” 難しさに直面することとなりました。ときに2014年、震災後5年が経とうとしていました。

ボランティアから “ビジネス” へ。CRMへの取り組み

時を同じくして、Yahoo! JAPANも復興デパートメントの持続的な成長のための枠組みを再考していました。Yahoo! JAPAN 社会貢献推進室 東北共創の中心メンバーであり、石巻元気商店に開設当初から関わる鈴木氏は、その答えのイメージは最初から頭にあったと話します。

「震災の風化が進む中で、震災や復興に関係なく、お客様に愛される店を目指し、ニーズにあった商品を作っていくためには、徹底的な顧客分析と、それに基づいたマーケティングアクションが必要だと考えていました。それを支援できる企業として、Yahoo! JAPANのグループ会社であり、CRM分野における実績も豊富なシナジーマーケティングに話しをもちかけたのです。」(鈴木氏)

その依頼を受けたシナジーマーケティングの中屋は、当時の状況をこう振り返ります。

pic_showcase_otr-ishinomaki_03

「開設から5年目を迎え、背景や顧客ニーズが変化したこともあり、復興デパートメントについて全体の売上や存在意義を見直すタイミングにありました。さらにプロモーションに力を入れるなどの選択肢ももちろんありました。しかし、広告によって瞬間的に売上を上げることができても継続的な成長を見込むのは難しい、そもそも根本的な解決にならないだろうと考えられていました。そこで採用されたのが、シナジーマーケティングによるCRM導入と支援プロジェクトだったのです。」(中屋)

そこで、復興デパートメントに40ほどあったショップの中から実績を上げている石巻元気商店を対象に、試験的にCRMを導入することとなりました。この決定により、人と想いで回っていた小さなネットショップが、顧客データから売上を産み出すマーケティング力を持つことになるのです。
初めてCRMの提案を受けた時、抱えていた課題にフィットしているように感じたと佐藤さまは振り返ります。

「CRM ? 何をどうやっていいのか見当もつきませんでした。データの分析や買っていただくための誘導や仕組みづくりも、考えたことすらなかったですから。ただ、”CRMとは今いるお客様をよく知って、有効的にアプローチすることだ” と聞かされました。そこには妙に合点がいきました。と言うのも、わたしたちはお客様と生産者さんとのつながりは、何よりも大切にしています。お客様にお出しする年賀状や暑中見舞いはどこよりも丁寧に作成しているつもりですし、手紙やメールマガジンの返信もよくきていました。しかし、それを商売につなげていくことについては考えていませんでした。新規のお客様ではなく、これまでのお客様とのつながりを活用するというCRMの考え方は、私たちにあっているなと感じました。」(佐藤さま)

CRMによるデータ分析から、売上をつくる顧客像がみえてくる

まず取りかかったのは、売れ筋商品とそれを購入する顧客像を明確にすることです。そのために一年分の購買データから購買内容やリピーターを分析しました。本プロジェクトを担当したシナジーマーケティングの中屋は、分析結果をこのように総括します。

「まず、最初に気づいたことは、石巻元気商店のお客様が2つに大別されることです。ひとつは海産商品の購買層、もうひとつは大漁旗ブレスレットの購買層です。その層を軸にさらにデータを読み解くと、リピーターは海産商品の購買層であることが分かりました。つまり、石巻元気商店の優良顧客は海産商品の購買層だということです。」(中屋)

この結果をもとに、売上増大のための2つの方法が検討されました。ひとつが、優良顧客である海産商品のリピート購買をさらに増やしていく方法、もうひとつが大漁旗ブレスレットの購買層に海産商品を買ってもらうための方法です。
そのためには、顧客が何を考えながら商品を買っているのかという定性的な情報も重要になってきます。そこで、顧客をより深く理解するためにアンケート調査を実施しました。アンケート項目には、顧客の価値観を理解するためのアンケート「Societas」による設問項目も含まれています。

「Societasを活用して、海産商品と大漁旗ブレスレットそれぞれの購買層の価値観を見ました。結果、海産商品の購買層は金銭的にも時間的に余裕がある40代から50代の方だとわかりました。さらに、高額商材に関心が高いという価値観であることもわかりました。一方で、大漁旗ブレスレット層の購買層は、価値観から見て貯蓄志向ではなく高額商材は適していないと考えました。」(中屋)

■Societasを活用したペルソナイメージ
pic_showcase_otr-ishinomaki_04

その結果を聞いた時の感想を佐藤さまはこのように述べました。

「今回のCRMプロジェクトで実施した分析やアンケート結果によって、初めてお客様像を具体的にイメージできました。そうすると、お客様に喜んでもらえるメッセージや商品を安心して打ち出せるようになり、“これで良し!” と背中を押された気分でした。すごくうれしかったですね。」(佐藤さま)

ペルソナをベースにした結果、売上が2倍に!

顧客データの分析とアンケート調査から見えてきた優良顧客層を “ペルソナ” としてまとめ上げ、次の打ち手につなげていく。このサイクルは、人手に頼っていた小さなネットショップの活動を飛躍的に変えていきました。
まず、それまで送っていたメールマガジンの内容変更に着手しました。

■メルマガのBefore / After
pic_showcase_otr-ishinomaki_05

「それまで送っていたメルマガは、石巻や生産者さんやその商品を紹介するものでしたが、ペルソナとなる優良顧客をイメージし、メルマガの打ち出し方もいろいろ試してみました。その結果、自前で企画した商品とそれを伝えるメルマガを出すようにしました。メールのテイストは別物になりましたが、以前のお客様にも共感してもらえていると思います。」(佐藤さま)

「ペルソナをベースにすることで、佐藤さまは発信者としての自信というか、お客様の顔が見えているようで、優良顧客層の購買に確信を持っているという印象ですね。」(中屋)

また、ペルソナがあることで、優良顧客層が求めている商品も見えてきたと佐藤さまは語ります。

「ペルソナによると、わたしたちのお得意様は、石巻ならではの恵み豊かな海産物を求めています。それがわかった時、これからの方向性がはっきりしました。もともと計画していた企画を大きく変更し、完全に食品を中心に展開するようにしたのです。その時は年末だったこともあり、高級食材の “活アワビ” という新製品を企画しました。もともとは雑貨系の新商品を企画するつもりでしたが、ペルソナが求めるものと違うなと感じたので急遽変更しましたが、良かったですね。売れました!Yahoo!ショッピングのデイリー売上ランキングでも、活アワビの2商品(※1)で1位と2位を独占しました。広告費をかけずにヒット商品を出すことができ、新規のお客様もたくさん増えました。理想的なネットショップになってきたと思います。」(佐藤さま)

■ペルソナから生まれた新商品のバナー
pic_showcase_otr-ishinomaki_06

CRMによる優良顧客の見える化により、伝える価値やメッセージの絞り込みができるようになったことで優良顧客の母数も増えました。平均購買率が高い商材を企画し、メルマガを活用したことで、メルマガ経由の売上は2倍(昨年同月比比較)にもなっています。

「活アワビを買ってくださったお客様が、メールによって同じ月に2回、3回と商品を購入されています。つまり、リピーターになってくださっているわけです。その成功体験をもとに、“次はこういう商品を企画していこう” というように商品開発を計画できるようになっています。今では、初動で新商品は月間でどのくらい売上げるか見込めるまでになりました。このところ、新しく出した商品で外れたものはないですね。」(佐藤さま)

※1 活アワビ 5個入り10,000円送料無料と3個入り6,000円送料別の2商品

復興特需が終わった今、今回の経験をもとにさらなる成長を

シナジーマーケティングによるCRMプロジェクトは、2015年6月から11月までの半年間と短い期間でしたが、佐藤さま自身がプロのマーケッターとして成長著しい姿を見せました。

「CRMに取り組むまでは、いかにECサイトの露出を増やすか、商品を打ち出していくかが、売り上げをあげるために重要だと考えていましたが、それは間違っていました。今回の取り組みでそれを気付かせていただけました。
シナジーマーケティングは、単に仕組みを導入するだけでなく私たちのビジネスに入ってきてくれました。とくに、中屋さんからたくさんのことを教わりました。半年間、分析からペルソナ作成、メールマーケティングから商品開発まで、フルコースで面倒をみていただきました。本当にありがとうございましたと言いたいです。」(佐藤さま)

また、Yahoo! JAPANの鈴木氏も、これまでの活動を振り返るとともに、これからの石巻元気商店が楽しみだと語ります。

「東日本大震災からの復興を目指し、どの商材をどのようなPRをして売れる商品として作っていくなどを、現地宮城県石巻市で試行錯誤してきました。現在は自力での集客、販売力もついてきて、復興特需から卒業し、いよいよ通常のフィールドに立っています。石巻元気商店は、これからどのように成長していくかが楽しみな店の一つです。」(鈴木氏)

自分の経験を発信することが、さらなる地域活性になる

CRMをベースにした取り組みで一定の成功をおさめている石巻元気商店ですが、ゴールは自分たちの商売繁盛ではなく、地域経済振興による石巻の復興です。そのため、ビジネスとは別の領域で、ECサイトの取り組みを広く地域の企業や生産者に啓蒙すべくセミナーを開催しています。最後に、その想いを佐藤さまに聞きました。

pic_showcase_otr-ishinomaki_08

「セミナーは、復興デパートメントに最初から関わる古株として、後進のみなさんの参考にしてもらいたいという想いから始めました。初めてお店を出すみなさんは、この土地を良くしたい、この人たちを良くしていきたいという課題から取り組みを始めています。だから、ビジネスとしてECサイトを運営することにつまずきがちです。私自身もそうでした。そんな私が体験してきたことや良かったと実感できることをどんどんシェアしていきたいと思っています。セミナー開催はそのひとつです。」(佐藤さま)

最後に佐藤さまは自身の活動をこのように総括しました。

「私の取り組みは、地域活性です。その活動を継続していくためには資金も必要です、ECサイトを通して当たり前の暮らしを取り戻せるよう、地域の生産者やおじいちゃんおばあちゃんの気持ちに寄り添って、これからも活動していきたいと思います。」(佐藤さま)

石巻元気商店 佐藤さん、ありがとうございました。
これからも、Yahoo! JAPANとシナジーマーケティングは、石巻元気商店のような企業を支援してまいります。

bnr_primary-ind-crm

※記載されている内容は取材当時のものであり、一部現状とは異なることがありますが、ご了承ください。

石巻元気商店
店長
佐藤 友美 氏

石巻元気商店

新鮮な海産物やハンドメイド品など、復興を目指す人たちによる様々な商品が集まるオンラインショッピングサイト石巻元気商店では、ホヤ、アワビ、金華サバ、ホタテ、などの海産物、石巻産の茶豆、宮城県産のお肉、大漁旗を用いて作られたブレスレットやピアスなどが購入できる。

メールマーケティングやWeb広告施策など、CRM活動をトータルにご支援した弊社事例の2015年度版。5事例を掲載。