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【連載:定着の壁 第1回】経験1年未満が56.1%。それでも現場は回っている。熟練前提ではないマーケ組織で、なぜ定着設計が重要になるのか

【連載:定着の壁 第1回】経験1年未満が56.1%。それでも現場は回っている。熟練前提ではないマーケ組織で、なぜ定着設計が重要になるのか

皆様、こんにちは。シナジーマーケティングの和田直之です。
私は、マーケティングの現場と事業成長の接点をテーマに、日々さまざまな企業の取り組みを見ています。AIやツール活用、業務設計、顧客接点の改善など、企業が成果を出すために必要な条件は年々高度化しています。その一方で、現場では「導入したのに続かない」「一部の担当者しか使いこなせない」「成果が出ても定着しない」といった悩みも増えています。

この連載では、「DX・ツール活用の成果を持続させるための現場工数と孤立の構造分析 ― マーケティング実務者1,000人実態調査2026 ―」をもとに、いまのマーケティング現場で何が起きているのかを読み解いていきます。

DX・ツール活用の成果を持続させるための現場工数と孤立の構造分析

DX・ツール活用の成果を持続させるための現場工数と孤立の構造分析

マーケティング実務者1,000人実態調査2026

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全5回で扱うテーマ

全体を通して扱うテーマは、次の通りです。

  • 第1話:熟練前提ではない現場で、なぜ定着設計が重要になるのか
  • 第2話:業務環境が離職意向につながる構造
  • 第3話:ノンコア業務と業務停滞が思考時間を奪う問題
  • 第4話:引き継ぎ・孤立・支援不足が定着を阻む理由
  • 第5話:現場に定着する組織は何を重視すべきか

第1話:熟練前提ではない現場で、なぜ定着設計が重要になるのか

このシリーズで一貫して見ていきたいのは、AIやツールの成果を左右するのは、導入時の機能ではなく、現場で継続して運用できる設計かどうかという点です。

高機能なツールを入れても、使われ続けなければ成果は定着しません。
一部の熟練者だけが回せる設計では、担当者交代や人員入れ替えのたびに成果は揺らぎます。
だからこそ今、問うべきなのは「何ができるか」だけでなく、現場が無理なく使い続けられる状態になっているかです。

経験1年未満が56.1%。熟練者前提では回らない「現場の現実」

その前提を考えるうえで、まず押さえておきたいのが、現在のマーケティング実務の担い手の構成です。
今回の調査では、マーケティング・広報業務の経験年数について、「1年未満(未経験含む)」が56.1%と過半数を占めました。
一方で、「5年以上」は22.4%にとどまっています。

マーケティング・広報業務の経験年数について、「1年未満(未経験含む)」が56.1%と過半数を占める、一方で、「5年以上」は22.4%にとどまる

この数字が意味するのは、単に「若手が多い」ということではありません。
重要なのは、今の現場は、熟練者だけを前提に設計できる状態ではないということです。

マーケティングや広報の業務は、以前より単純になっているわけではありません。
むしろ逆です。
扱うツールは増え、求められる成果は高まり、データや顧客接点は複雑化しています。
AI活用も進み、「これからは少人数でも高度な成果が出せる」と期待される場面は増えました。
しかし、その期待を受け止める現場の人員構成を見ると、実際には過半数が1年未満です。
つまり、求められる専門性は上がっているのに、運用を担う側は必ずしも熟練者中心ではないという構造があるのです。

ここに、定着の壁の出発点があります。

なぜ「できる人」頼みの運用が組織を不安定にするのか

企業はしばしば、成果が出ている状態を見て、「このツールは使える」「この運用は機能している」と判断します。
けれど、その裏側では、実は一部の担当者が属人的に支えているだけ、ということが少なくありません。
この人なら設定も理解できる。
この人ならエラーにも対応できる。
この人なら、マニュアルが整っていなくても回せる。
そうした“できる人”を前提にした運用は、短期的には成果が出ることがあります。

ただ、その状態は続きません。
異動がある。退職がある。担当変更がある。
そのたびに運用が不安定になり、引き継ぎで止まり、活用度が落ちていく。
すると企業は、「ツールが悪かったのではないか」「AIが現場に合わなかったのではないか」と考えがちです。
ですが本当の問題は、機能そのものよりも、誰が担当しても継続運用できる設計になっていたかどうかにあります。

今回の調査対象は、マーケティング、広報・PR、販売促進、営業・販売など、広義の「顧客接点に関与する実務者」です。
つまり、一部の専門職だけではなく、幅広い現場担当者がこの仕事を支えています。

今回の調査対象は、マーケティング、広報・PR、販売促進、営業・販売など、広義の「顧客接点に関与する実務者」

この前提に立つと、ツール導入や業務設計の評価軸も変わってきます。
これから企業が本当に重視すべきなのは、

  • 高機能かどうか
  • 高度な分析ができるかどうか
  • どれだけ多くの施策に対応できるか

だけではありません。

むしろ重要なのは、

  • 経験の浅い担当者でも立ち上がれるか
  • 引き継ぎしやすいか
  • 判断基準が明確か
  • つまずいたときに止まりにくいか
  • 一部の人に負荷が偏らないか

といった、定着しやすさの設計です。

これからの組織に必要なのは「定着しやすさ」という設計思想

この視点が欠けると、どれだけ立派なツールを導入しても、現場では徐々に使われなくなっていきます。
最初は注目される。
一部の担当者は使いこなす。
でも、全体に広がらない。
人が変わると止まる。
やがて「入れたけれど定着しなかった」で終わる。
このパターンは、機能の不足というより、現実の人員構成に対して運用設計が追いついていないことから起こります。

いまのマーケティング現場では、成果を出すことと同じくらい、成果を続けられることが重要です。
一時的にうまくいっても、それが担当者依存であれば、再現性はありません。
再現性がなければ、組織としての力にはなりません。
そして、その脆さは現場の負荷となって蓄積し、やがて離職や停滞の温床にもなります。

第1話で押さえておきたい結論は、ここです。
いまのマーケ組織は、熟練者だけで回る前提ではない。
だからこそ、誰が担当しても回る設計が競争力になる。

定着の壁とは、現場の努力不足の話ではありません。
また、若手が多いことそのものを問題にする話でもありません。
そうではなく、今の人員構成に対して、業務やツールの設計が本当に合っているかという問いです。
成果を持続させる組織は、この問いから逃げません。

では、そうした現場で実際に何が起きているのでしょうか。
次回は、業務環境そのものが離職意向にどうつながっているのかを見ていきます。
成果以前に、そもそも「働き続けにくい現場」が一定数存在している実態を掘り下げます。

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※記載されている内容は掲載当時のものであり、一部現状とは内容が異なる場合があります。ご了承ください。