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【社長インタビュー】国産CRMの今後とYahoo! JAPANとの取り組み(後編)

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中小企業の活性化が、世の中全体の活性化につながる

―谷井さんはビジョンの中で「中小企業を元気に!」とよくおっしゃっていますが、なぜ中小企業にフォーカスを当てるのかについて教えていただけますか。

中小企業の活性化が世の中全体の活性化に繋がると思っているからです。
世の中の企業の大多数は中小企業です。日本に400万社以上ある企業の中で上場企業は約3,500社しかなく、その中で大企業と言われる企業は1,000社あるかないかくらいでしょう。そのような状況の中、日本は長らく景気が悪い状況です。指標上良くなっているときはあっても、体感値としては景気がいいと感じられない、東南アジア各国の方が躍動感があって元気そうだと見えるような状況であるわけです。

じゃあ世の中が元気になるために何がネックになっているのか。それは「機会の不平等」だと思いました。大企業は資金力があるので新しい投資を積極的におこなえる一方で、中小企業は資金が不足していたり銀行がなかなか貸してくれないといった状況ゆえに、投資さえもできない状況にあると思うんです。
個人的にはそうした状況が機会の不平等を招いていると思うととても残念で。

だから僕らはクラウドというサービス提供形態をとり、中小企業でも大企業でも無理なく導入し利用することのできる製品を作りました。中小企業であれ大企業であれ、同じ土俵で挑戦できる環境さえあれば、あとは知恵比べなので言い訳はできないと思うからです。
機会の平等が進んだ先に知恵比べによって結果の不平等が生まれることが本来の市場の姿だと思っていますし、それが実現できれば元気になる企業が山のように生まれてくる気がするのです。そして、元気な中小企業が増えれば自ずと世の中全体が元気になる。僕はそう思っています。
実際、僕の実家も零細企業でして、「色々やりたいことはあるけれど資金的に限界がある」と嘆く父親の姿を幼い頃から見てきていたので、何とかそうした状況を変えたいと思い、こういったビジョンを持つようになったのだと思います。

―当社としては中小企業をCRMやデジタルマーケティングの領域から支援していくことになりますが、その分野において、現在中小企業の活性化を阻む原因にはどんなことがあると思われますか?

情報リテラシーの差です。企業や組織の情報リテラシーは、そこに所属している人たちの情報リテラシーが結集して決まるものだと思っていますが、どうしても業界や規模によって差があり、システムを使いこなせないといった問題があるんです。

あわせて、そういった組織はリテラシーの高い人を採用できないといった問題もあります。
たとえば、ものすごく事業拡大意欲のある飲食店のオーナーさんがいたとして、徐々に数店舗へ事業拡大し、そろそろ「システムでの顧客情報管理やネットでの販促に力を入れていこう」と思ったとします。オーナーは現場に立つ時間も多く忙しいので、「デジタルに強い人を採用しよう!」と思ったとしても、優秀なデジタルマーケターは引く手あまたのためなかなか獲得できない状況にあるんです。
そうすると、そのお店や企業にはいつまでたっても外部からリテラシーを持った人が入ってこず、デジタル化や効率化を推進できないんですよね。

だから当社としてはクラウドサービスの提供のみではなく、その周辺のコンサルやプランニング、そしてもちろんオペレーションの部分までご支援したい、そういった思いからエージェント事業が存在するわけです。ただ、先ほども話したようにいつまでも当社が支援しないとうまく回らないといった状態は理想ではないので、最終的にはお客様の自立を支援するべきだとは思います。

国産CRMの今後

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―次に、シナジーマーケティングとして新たなフェーズに立った今、実現したいことや構想を聞かせていただけますか。

僕たちが実現したい「消費者行動予測」と呼んでいるものはまだまだ漠然としたものですし、僕自身どんな景色が未来に広がっているのかを具体的にイメージできているわけではありません。ただ、従来のレコメンデーションエンジンが実現しているものよりも、ずっと精度の高いレコメンドができるようになるだろうということは想像できます。

おそらく、企業として今後顧客データを活用していく方法は大きく3つあると考えています。

価値観を用いた消費者行動予測

ひとつはお客様が欲しがっているものを予測することです。
これまではレコメンデーションエンジンを使って、購買履歴に基づいて次その人が何を欲しているのかを予測していましたが、購買履歴だけを見て予測をするのはあまり精度が高くないと思います。ですので、僕たちは購買の動機まで興味を持っています。その動機を示す要素のひとつが価値観であり検索ワードだと思うのです。

たとえばiPadがひとつ売れたとして、これまでのように購買履歴だけを見ていると「おそらく前のものが古くなって新しいものに買い替えたのだろう」といったことしかわからないですが、もしかしたら購入に至る最初の段階で入れた検索ワードは「お父さん 誕生日 プレゼント」なのかもしれません。
おじいちゃんの誕生日プレゼントを探している中で、「離れて住んでいるおじいちゃんがいつでも孫の写真を見れたら喜ぶだろうなあ。iPadでいつでも見られるようにしてあげよう」そんな動機から、iPadの購買をされているのかもしれないのです。こういった動機が検索データを見ると把握することができます。

その他にも、たとえば価値観がわかると、「この人は自分の消費には無頓着だけれど家族に対するプレゼントにはお金を惜しまない」といったことも見えてくるわけです。今までのように購買履歴だけを見てレコメンドするのではなく、動機や価値観を含めてその人を理解しレコメンドがおこなえるようになれば、より精度の高い消費者行動予測の実現に近付けると思うのです。

広告への活用

次に、広告分野への活用もできると考えています。
お客様の動機や価値観や行動履歴が見えるようになると、「どんなタイプの人が自社の優良顧客になるのか」そんな特徴が見えてくると思うんです。そこが見えてきたら、同じ価値観や動機や行動特性を持った人にターゲットを絞り、その人たちの目に付く場所に広告を出そうと戦略を練ることができます。
それらが実現できれば、効率良く優良顧客を獲得することができ、また今まで見えていなかった潜在層にアピールすることもできるのです。こうしたことを広告の世界でやっていけるのも、消費者行動予測のひとつのモデルだと思っています。

プロダクトマーケティングへの活用

そして最後、3つ目としては顧客データが商品企画に活かされるようになると考えています。
もちろん今までも、「お客様の声を取り入れて商品づくりをすべき」といった声はありました。一方で「本当に皆が必要としている製品は潜在ニーズを喚起するものだから、お客様の声を聞いても生まれない」といった反対意見もありました。

こうした0か100かの二元論では意味が無くて、大事なのは「そのお客様がどういった動機や価値観を持っているのか」を理解した上で、「そのお客様が何を望んでいるのか」を聞くことだと思うのです。
「Aの価値観を持っているから、この人はこうした考えや要望を持っている」と理解して、いただいた声を形にしていくのは意味があると思いますし、ある程度どんな方にそのプロダクトが必要とされるのかがわかれば販売実績を予測することができるでしょうし、生産効率の向上にも繋がると思うのです。こうしたプロダクトマーケティングがひとつの潮流として生まれると思います。

―となると、上流から下流までがどんどん繋がっていき、CRMの領域がかなり広がっていきそうですね。

そうですね。当社が専門としているマーケティング・コミュニケーション、つまり企業と消費者の関係構築において1番望ましいあり方というのは、「最少のコミュニケーションで最大の効果を発揮する状態」だと思っています。
この数十年で広告やインターネットが隆盛を極めてきたために、洪水のようなものすごい量の情報、しかも企業が発信したいメッセージを一方的に届け続ける情報が溢れていて、消費者はまったく興味を示さない状態に陥っています。情報に対する感受性がものすごく低くなっている状況です。

この状況は、消費者が製品やサービスだけでなく企業の価値観なども含めて消費行動をしている現代には逆行しているような気もしています。
お客様は必要であれば情報を能動的に自分から取りに行く時代になっているので、企業としては取りに来てくれるのを待つことが望ましいと思いますし、お客様の細やかな動きを見ながら、来てくれたときに「もしかしてこれが欲しいんじゃないですか?」と、最適なタイミングで最適な情報を差し出すことができれば、それが1番理想的なコミュニケーションだと思うのです。

20年後くらいには現状の意味でのテレビCMは無くなっているんじゃないかと思いますし、皆に対して同じ情報を届けるメールマガジンもきっと無くなっているでしょう。
その人個人に向けたメールなのか、あるいはさまざまなソーシャルメディアから発信されるメッセージなのか、方法はいくつかあると思いますが、One to Oneのメッセージングにシフトしていかなければならないことは明らかです。

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―なるほど。では最後に、シナジーマーケティングはどんな企業だと言われたいですか。谷井さんの意見を教えてください。

2つの相反することを言うようですが、「いつも新しいことに対してアグレッシブに挑戦しているね」と言われつつ、「そこで働く人たちはとてもお客様に対して真面目で、真剣に仕事や人生に取り組んでいるね」と言われたいですね。
今市場から高い期待を寄せられている研究開発事業のように、今後も新しいことに率先してチャレンジしていきたいですし、一方で社員にはいい意味で昔ながらの日本人的なお客様とのリアルなコミュニケーションを大事にする真摯な人間でいてほしいですね。「シナジーマーケティングの社員ってかっこいいな。うちにもあんな人材が欲しいな」って思っていただけるような人間でいてほしいと思います。

※記載されている内容は取材当時のものであり、一部現状とは異なる場合があります。ご了承ください。

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