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“Neuromarketing World Forum”に参加して ~ニューロマーケティングの可能性とこれからの未来~

2014/3/5~3/7にアメリカ・ニューヨークで開かれた、ニューロマーケティング世界最大のイベント“Neuromarketing World Forum”。世界のニューロマーケティングのキーパーソンたちが集う場で、弊社研究開発グループのベルタン マチューが講演をした。
「まるで別世界に行っていたよう。『日本の企業から来ましたが私はフランス人です』という自己紹介がウケたこと以外は何を話したか覚えていません(笑)」とおちゃめに語る彼に、フォーラムの感想やニューロマーケティングについて伺ってきました。

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‐ 本日はよろしくお願い致します。まずはベルタンさんの経歴について教えてください。

「私はもともと博士課程で脳科学の研究をしていました。しかし6年前の当時は脳科学を活かせる分野が少なかったため、これまで4年間はマーケティング分野でデータサイエンティストとして仕事をしていました。

その一方で、ずっとニューロマーケティングの動向には注目していました。ニューロマーケティングの盛り上がりを耳にしたり、脳科学の可能性について社内で話している中で、4年来の夢がますます強くなり、研究を再開することにしました。現在、脳波を測るデバイスの価格は10年前に比べて何千分の1くらいになっているため、研究を再開するハードルも高くはありませんでした。」

‐  昔からの夢に火がついて、それを後押しできるような環境や条件が揃ってきたのですね。今回ベルタンさんが講演されたNeuromarketing World Forumはかなり大きな場だと伺っていたのですが、概要を教えていただけますか?

「“Neuromarketing World Forum”は、世界のニューロマーケティングキーパーソン200~300人が集う場です。面白いのは、学者とビジネスパーソンの両方が出席し、サイエンスとビジネスの両方の観点から発表をおこなうところです。

私は『従来マーケティングリサーチ手法(アンケート)と最先端の手法(脳波測定)のデータを、人工知能を活用し統合することでより深く消費者インサイトを理解する』というテーマで講演しました。」

‐ そこでベルタンさんが発表された内容に関して少し教えていただけますか?

「実験概要としては、被験者の人に脳波を測る装置を付けてCMを見てもらい、見終ったあとに『このCMはクールだったか?』などのアンケートに答えてもらうというものです。意識ベースのアンケート回答と無意識を測る脳波の結果を組み合わせて見ることによって、『どのシーンでどんな感情を抱いて興奮したのか』などの細かい心の動きを把握することができます。

企業でも、属性データからサイトの滞在時間まで、さまざまな手法を用いて多くのデータを取得するようになりました。ただ、取得したデータをどのように統合しどうやって活用すればいいのか、理解している企業はまだ少ないと思います。ニューロマーケティングを絡めつつ、そこを統合していけたらと思っています。」

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講演の様子はこちら

‐ なるほど。ニューロマーケティングはまだまだ難しそうに感じる一方で、すごく可能性に満ちた領域である気がします。

「ニューロマーケティングとは、脳科学の理論や技術を、プロダクトデザインやユーザーエクスペリエンス設計などのマーケティング活動に活かすものですが、定義はまだ固まっていません。

今までのマーケティング理論は『消費者は合理的なもの』という考えに基づいていました。だから、消費者の意識に訴えかけるために、AIDMAのような理論に基づいてマーケティング活動を進めることが一般的でした。

ただ、人間は自分では言語化できない感情に動かされて行動してしまうことも多くある。それは購買行動でもそんなに変わらないと思います。その無意識の感情の動きを、手法を使って測ろうという考え方からニューロマーケティングは始まりました。」

‐ 表面的に見えない無意識の部分が見えるようになれば、マーケティング活動の精度が上がりそうですね。ベルタンさんは今回このフォーラムに出席されてどんなことを感じましたか?

「“売上予測”にこだわっている企業が非常に多いと感じました。ただ、予測できる範囲には限界があるので、私としては『良いCMができて、更にプラスのインパクトを与えることができれば、それはのちのち売上につながるだろう』という考えです。

どちらかというと、CMの企画段階で立てた『こういうCMを作ったら売上につながるのではないのか』『そのために、このシーンでは消費者のこんな感情を喚起させられたらいいのでは?』という仮説を確かめるときや、『伝えたいブランドイメージやベネフィットは伝わっているか』を確認する際の手法としてこの脳科学を使うことが適切と考えています。

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誤解してはいけないのは、脳科学は決して万能ではないということです。脳科学によってすべてがわかるわけではありません。ただ、従来のマーケティング活動と組み合わせることによって役立つことは証明されてきつつあります。

そして、もう1点、ニューロマーケティングについてニューヨークで感じたことは、日本を含めてアジアは出遅れているということです。欧米でのやり方をそのまま持ってくるのではなく、今後はより多く日本から新しいソリューションを生み出し、ベストプラクティスをグローバルに発信して続けていきたいと考えています。」

‐ なるほど。では最後に、ベルタンさんが理想とするニューロマーケティングの未来をお聞かせください。

「あの場にいた、ニューロマーケティングの関係者が皆一様に願っていることは、『ニューロマーケティングを当たり前の手法にしたい』ということです。だから、いずれは弊社でも現在提供しているクラウドサービスのように、安価かつ誰もが簡単に使える形式にして提供できるメニューになるのが理想だと思います。」

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「ニューロマーケティングを特別なものにしたくはなく、当たり前のものにしたい」という言葉からは、かつて松下幸之助が唱えた「水道哲学」を彷彿とさせられました。
先進的なマーケティングをおこない、本当に消費者が望んでいるものを知り届けるために日々研究を重ねる研究開発グループ。これからどんな驚きを生み出してくださるのか、私も一個人として楽しみにしています。

※記載されている内容は取材当時のものであり、一部現状とは異なる場合があります。ご了承ください。

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