2月5日開催の「第2回 BtoBマーケティング分科会」で、『200~700名規模の自社イベントをゼロからつくる方法』という講演をしました。昨年12月8日に開催した当社主催イベント「Synergy!LIVE 2015 Tokyo」のプロデューサとして仕事をする中で得た学びをお客様と共有することを目的に、2時間ほどのスピーチをしてきました。この開催レポートは、当日お話しした内容をベースに、イベントを企画・運営する上でのポイントをまとめたものです。BtoB企業で、主催イベントに携わる方にとって参考になれば幸いです。

以下4つのステップに沿って書いていきます。

  1. 企画:LPとフォームを公開する(7月前半~10月前半)
  2. 集客:目標人数を達成する(10月後半~11月前末)
  3. 開催:プログラム通りに無事故で終える(12月8日)
  4. 省察:報告書をまとめる(12月後半)

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第2回 BtoBマーケティング分科会の会場(ヤフー社員食堂BASE6)

1. 企画:LPとフォームを公開する(7月前半~10月前半)

7月上旬から企画に着手しました。企画ステップのゴールは、「10月15日にLPフォームを公開すること」と定めていました。10月15日という日にした理由は、(1)数百名規模のイベントであり開催2ヶ月くらい前には集客をはじめておこうと考えていたから、(2)広告出稿する雑誌の発売日が10月15日だったから、です。

3ヶ月ほど企画の仕事に取り組んでいましたが、ポイントをいくつか紹介します。

  • 企画書:いつ・どこで・誰が・誰に・何を・いくらぐらいで・なぜ、の7点をまとめた企画書第一版を8月上旬に管掌役員(決裁権者)にメールしました。特に「なぜ」については「3C+P+T」を意識して丁寧に書きました。※3C+P+T=Customer(顧客)+ Competitor(競合)+ Company(自社)+ Partner(販売代理店やグループ企業)+ Technology(技術動向)
  • 会場の仮予約:10月~12月などのイベント繁忙期は、めぼしい会場が早く埋まってしまいます。今回は、メインホールやホワイエ(展示ブース設営ゾーン)の取り回しと費用感がイメージと合っていたため、品川インターシティホールを第一候補に考えていました。12月前半での開催を考えていましたが幸いにも空いている日がいくつかあり、7月末に仮予約しました。
  • 開催日:仮予約のあとは日程の確定です。どの日にするかについては、(1)同業他社やメディア主催のイベントと日程が重ならないこと、(2) キーノートや同日プレスリリースでの発表材料が出揃うこと、(3)マーケターにとって業務が集中しやすい月末月初から少し離れていること、などを考慮して12月8日(火)に決めました。ここは反省点となりますが、数十~数百名規模の他社イベント(5件)と日程が重なっていることが、会場正式予約後に発覚しました。※お互い日程の重複は避けたいでしょうから、次回開催するときには同業他社の方々と可能な範囲で情報交換するのもありかなと思います。
  • プログラムとスピーカー:Synergy!LIVE(Marketing AREA)では、ゲストキーノート、自社キーノート、事例セッション2本、パネルディスカッションという構成にしました。中でもゲストキーノートは集客への影響が大きいため優先的に対応するようにしていましたが、候補者へのアプローチ(オファーレターなどでの打診)を開始したのが8月17日に対して確定したのが10月2日と、かなり時間がかかってしまいました。当社では今回、候補者のリストアップ・打診・条件調整などをすべて社内で対応しましたが、イベント支援企業に依頼することも可能な場合があるので、相談してみるのもいいと思います。※ちなみに今回のSynergy!LIVEでは、全般的に株式会社ゼオ様に大変お世話になりました。
  • プロデューサの説明責任:日を追うごとに意思決定・指示出しタスクが増えていきます。決めることが本当に多いですが、「こう決めた。これをやってください」だけでなく、「なぜそう決めたのか」をなるべく説明するようにしていました。デザイナーやディレクターなど社外の関係者とも一緒に仕事をするわけですが、制作いただいた複数案からひとつを選んだり、それに対して変更を依頼するときは、その意図や決定基準をメールに書くようにしていました。それが、つくっていただいた人への礼儀であり、全員が同じ方向を見てテンションを冷やさずに仕事をするために必要なことだと思っていたからです。

2. 集客:目標人数を達成する(10月後半~11月前末)

10月15日にLPとフォームを公開し、12月8日までの2ヶ月弱で「(Marketing AREAで)740名の参加登録」を目標に集客をはじめました。品川インターシティホールのメインホールに500席を置くと決め、来場歩留り68%と想定し740名と目標設定しました。最終的に、目標740名に対して実績737名と集客目標はほぼ達成できたのですが、歩留り想定が高すぎたのが反省点です。蓋を開けてみれば、12月8日の実際の来場者数は約400名、歩留りは60%に達しませんでした。※終わったあとでいろいろ聞く限りでは、数百名規模のイベントでは50%台~60%前半の歩留りはよくあるそうです。

以下3点、集客に関する振り返りです。

  • トリプルメディアで整理:オウンドメディア・アーンドメディア・ペイドメディアの大項目からなる集客管理シートをつくり、個別の集客施策の担当者や進捗状況を管理していました。たとえばオウンドメディアには、Webサイトブログメルマガ、請求書メール(e-bill eco)、クラウドサービスの管理画面、ダイレクトメールフライヤーなどの小項目(チャネル)がありますが、掲載や配信の際に漏れやダブリや遅延や誤植が発生しないようシートで管理していました。
  • リタゲ広告とFacebook広告:雑誌広告・メール広告・純広告を含めて複数の媒体で出稿しましたが、中でもリタゲ(YDNGDN)とFacebook広告の費用対効果がよかったです。Facebookはアーンドメディアとしての拡散とそこからの集客効果も高かったので、もはや欠かせないツールです。なお、アーンドメディアとしてFacebookを使うときの注意点としては、投稿したあと、関係者に広く「いいね!」と「シェア」を依頼することです。タイムライン表示のアルゴリズムが随時更新されていますが、これらの件数が多いほど表示されやすいようなので、全社員を含むメーリングリストなどでクリックを都度依頼するといいと思います。
  • 量と質:反省材料のひとつですが、740名という人数(量)ばかりを見ていたことが歩留りの低さを招いたと感じています。参加申込者の属性(質)の考慮が足りていませんでした。来場者のうち、つながりが深い既存顧客(既存のエンドクライアントやパートナー)の方が未取引顧客よりも来場歩留りが高かったので、先行して案内したり複数回または複数チャネルで案内するなどして、既存顧客の割合をもっと増やせていればよかったと思います。

3. 開催:プログラム通りに無事故で終える(12月8日)

開催当日、大きなトラブルはありませんでしたが、プロデューサとして随時Q&A対応と意思決定と指示出しをしていました。当日の仕事の中で特に大事(反省点)だと思ったのは時間管理です。Synergy!LIVEでは各セッションが少しずつ長引いた結果、18:00終了予定が18:30頃の終了になってしまいました。時間超過は来場者満足度を下げる要因になるので、(1)開催前:スピーカーにはセッション時間を確実に認識いただく、(2)当日のリハーサル時:演壇の下に設置する時間表示パネルやタイムキーパーのカンペの場所をスピーカーにしっかり確認いただく、(3)開催中:延長した場合はあとに続く講演時間や休憩時間を調整する、などの対応が必要です。

また以下2点、当日の運営に関する振り返りです。

  • QRコードとiPadアプリでの受付:事前にQRコード受講票付きのHTMLメールを配信しておき、当日はスマホか紙印刷のQRコードをiPad画面(独自開発したiOSアプリ)にかざしていただくという受付フローにしていました。ですが、当日来場者のうち四分の一の人が「QRコード持参なし」であり、アナログな名刺での受付となりました。今回は開催4日前に受講票付きメールを一度だけ配信したのですが、次回の改善ポイントとして、(1)来場歩留りの向上を図る意味でも、QRコードに関する案内を含むリマインダーメールの配信回数を増やす、(2)HTMLメールが正常に表示されないメーラーにも対応できるよう、受講票メールをHTMLメール形式ではなくマルチパート形式で配信する、があると考えています。
  • アンケート:回収率は3割でした。メインホールの座席にパンフレットアンケート用紙をあらかじめ置いておき、お帰りの際に受領するという形にしていました。今回は時間と予算の関係でできませんでしたが、ほかのイベントでも見かけるような、アンケートご協力のお礼としておみやげを渡すことを次回は検討したいと思います。

4. 省察:報告書をまとめる(12月後半)

コミュニティ2@base6
分科会の様子

振り返りです。プロデューサやディレクターなど主要メンバーでKPT(Keep・Problem・Try)を洗い出したり、全社員に対して「よかったことと悪かったこと」のアンケートを取るなどして情報を集め、報告書をまとめました。この報告書を含め、企画・運営関連の社内資料、講演資料のPowerPointファイル、当日撮影した写真・動画など一式をGoogle Driveに保存しました。相応のコストをかけた分、経験と学びを会社の財産にしないといけないですからね。

ちなみに、費用は総額で2,300万円ほどでした。ざっくりですが、内訳は以下のとおりです。

  • 会場・装飾・映像・音響関連:1,200万円
  • デザイン・制作物・配布物・録画撮影・運営関連:700万円
  • 食事・スピーカー・運営スタッフ関連:300万円
  • 集客・広告関連:100万円

終わりに

「第2回 BtoBマーケティング分科会」で話した『200~700名規模の自社イベントをゼロからつくる方法』の内容をできる限り書きました。Synergy!LIVEはMarketing AREAとR&D AREAを合わせると600名来場を想定したイベントでしたが、この規模での開催は会社にとっても個人にとっても初めての仕事だったので苦労も多かったです。この記事の内容が、自社イベントをこれから企画する人にとって役に立つものになっていればうれしいです。また、当社のお客様のみとなりますが、ご希望でしたら企画・運営関連の社内資料やデータをご覧いただけるかもしれませんので、お問い合わせいただければと思います。それでは!

レポート記:経営戦略部/岡本

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