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【連載:データ資産化への決断 第3回】データはあるのに使えない。約9割が越えられない「整備」と「スキル」の壁

連載:データ資産化への決断 第3回

全5回で扱うテーマ

全5回で扱うテーマは、次の通りです。

第3回:データ整備とスキル不足の壁

こんにちは。シナジーマーケティングの和田直之です。

前回は、MQLの数だけを追っていても、顧客の検討プロセスまでは見えにくく、マーケティングと営業の間でズレが生まれやすいことを見てきました。
そして、その背景には、顧客の行動文脈を部門横断で共有できる土台がまだ十分に整っていない現実があることも確認しました。

「データはあるが使えない」現実

では、なぜ多くの企業でその土台づくりが進まないのでしょうか。

「データ活用は重要だ」「顧客理解を深めたい」と考えている企業は少なくありません。
にもかかわらず、実務レベルでは、必要なときに必要な顧客データをすぐに引き出せない。施策にいかせる形まで整えられていない。そんな状況が広く残っています。

今回の調査でも、その現実ははっきり表れています。
自社で保有している顧客データが「完璧に整理されており、すぐに使える状態」と答えた企業は、全体の8.8%にとどまりました。
言い換えれば、9割以上の企業では、データは存在していても、すぐ活用できる状態にはなっていないのです。

9割以上の企業では、データは存在していても、すぐ活用できる状態にはなっていない 参考グラフ

この数字が示しているのは、単に「データが足りない」という話ではありません。
むしろ多くの企業では、データそのものはすでにあります。

営業部門には商談履歴があり、マーケティング部門には資料請求やメール反応の履歴があり、カスタマーサポートには問い合わせや利用状況の情報が蓄積されている。
問題は、それらが顧客単位でつながっておらず、活用できる形まで整えられていないことです。

たとえば、部門ごとに顧客名の表記ルールが違う、会社名の登録方法がそろっていない、システムごとに顧客IDが分かれている、といった状態は珍しくありません。
その結果、同じ企業・同じ担当者に関する情報が、別々のデータとして存在し続けます。
現場では「データはあるはずなのに、欲しい切り口で出せない」「抽出してもそのまま使えない」ということが日常的に起こります。

予算やツールよりも深刻な「データ整備の専門スキル不足」

ここで見落としてはいけないのは、データ活用の障害が、必ずしも予算不足やツール不足だけではないという点です。

今回の調査では、データ活用が進まない主な理由として、もっとも多く挙がったのは、「データを整える専門スキルを持った人がいない」という項目でした。
割合は34.4%。これは、予算不足や経営層の理解不足を上回る結果です。

「データを整える専門スキルを持った人がいない」の割合は34.4% 参考グラフ

この結果は、多くの現場の実感とも重なります。
データ活用というと、つい「どのツールを導入するか」「どこまで投資するか」という話になりがちです。

しかし実際には、その前段階にあるデータ整備・名寄せ・設計・運用ルールの統一といった地道な作業が進まない限り、どれだけ優れたツールを入れても成果にはつながりにくいのです。

そして、この地道な作業こそが、もっとも後回しにされやすい領域でもあります。
なぜなら、すぐに見える成果になりにくく、評価されにくいからです。

新しい施策やキャンペーンは注目されやすい一方で、顧客データの整備や運用ルールの整理は、目立ちにくく、しかも時間がかかります。
結果として、現場では都度必要なデータを手作業でつなぎ合わせ、抽出し、確認しながら施策を回すことになります。

この状態では、データは「資産」ではなく、むしろ活用のたびに手間を生む存在になってしまいます。
本来であれば、データは意思決定や施策実行のスピードを上げるためのものです。
ところが現実には、データを使おうとするたびに、複数システムからCSVを出し、重複を確認し、表記をそろえ、ようやく配信や分析にたどり着く。
それでは、現場が「データ活用は大事だ」と理解していても、継続的な運用は難しくなります。

成長過程の中堅企業を直撃するデータ統合の壁

さらに、この問題は企業規模や成長段階によって、より深刻に表れます。
特に、中堅規模の企業では、データ量は増えている一方で、専任のデータ整備部隊や高度な分析体制を持ちにくいケースが多く見られます。

スタートアップのように少人数で柔軟に回せる段階は過ぎている。
かといって、大企業のように大規模投資で一気に整備できるわけでもない。
その中間にいる企業ほど、データ整備の負荷とスキル不足の影響を受けやすくなります。

その傾向は、調査結果にも表れています。
データ統合に「一部取り組んでいるが未完了」と答えた企業では、48.8%が専門スキル不足を課題として挙げています。
つまり、重要性を理解し、すでに着手している企業であっても、途中で壁にぶつかっているケースが少なくないのです。

データ統合に「一部取り組んでいるが未完了」と答えた企業では、48.8%が専門スキル不足 参考図

ここで重要なのは、この壁を「現場の努力不足」と捉えないことです。
多くの場合、問題は個人の能力ではなく、組織としてデータを整え、維持し、活用し続けるための仕組みがないことにあります。

ルールが統一されていない、顧客IDの設計が曖昧、部門ごとに別々の運用をしている。
こうした状態で、現場にだけ「もっとデータを活用してほしい」と求めても、持続的には回りません。

逆に言えば、ここを仕組みとして整えられるかどうかが、その後のマーケティングや営業の生産性を大きく左右します。
顧客データがつながり、必要な形で引き出せるようになれば、施策の立案も、セグメント設計も、営業への引き継ぎも、精度とスピードが変わってきます。
第2回で見た「検討文脈の共有」も、結局はこの土台が整っていなければ成立しません。

そして、この差がもっともわかりやすく表れるのが、AI活用です。
AIは便利なツールですが、何を学習させ、どんな文脈で使うかは、もとになるデータの質に大きく左右されます。

データが整っていなければ、AIは期待された成果を出しにくい。
逆に、顧客データが統合され、活用できる状態にある企業では、AIはその価値を大きく引き出す手段になります。

つまり、いま企業に必要なのは、ツールを増やすことそのものではありません。
まずは、自社のデータが本当に使える状態にあるのかを見直すこと
そして、整備と運用を属人的な努力に頼らず、仕組みとして回せる形を作ることです。

まとめ

データは、持っているだけでは資産になりません。
必要なときに、必要な粒度で、顧客単位で見られること。
その状態を維持できてはじめて、次の施策や投資につながります。

次回は、その土台の差がもっともわかりやすく表れるテーマとして、
AI導入でなぜここまで成果差が開くのか。成功率19.2倍を分ける「データ統合」の現実を取り上げます。
AI活用における成果格差を通じて、データ基盤の重要性をさらに掘り下げていきます。

最新の調査データ「企業のデータ資産利活用に関する実態調査2026」

最新の調査データ「企業のデータ資産利活用に関する実態調査2026」

 

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