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【連載:データ資産化への決断 第4回】AI導入で差がつくのは、ツールではなく土台だった。成功率19.2倍を分ける「データ統合」の現実

 

全5回で扱うテーマ

全5回で扱うテーマは、次の通りです。

第4回:AI活用で生まれる成果格差

こんにちは。シナジーマーケティングの和田直之です。

前回は、多くの企業でデータ活用が進まない背景に、データ整備の負荷と専門スキル不足という壁があることを見てきました。
データは持っているだけでは資産にならず、必要なときに使える形で整っていてはじめて、施策や意思決定にいかせる。そこが大きな分岐点になっている、という話です。

この差が、最もわかりやすく表れるテーマの1つがAI活用です。
AIへの期待は、ここ数年で急速に高まりました。マーケティング、営業、カスタマーサポート、分析業務など、さまざまな領域で「AIを活用すればもっと成果が出るのではないか」という期待が広がっています。
一方で、実際の現場では、導入しただけでは思ったほど成果につながらない、という声も少なくありません。

今回の調査でも、その現実ははっきり表れています。
AI活用によって具体的な成果を実感している企業は25.9%にとどまりました。
一方で、「導入したが成果は出ていない」と答えた企業が40.0%、さらに「まだ活用していない」企業も34.1%存在しています。

つまり、AIは確かに注目されている一方で、全体として見れば、まだ多くの企業が成果化に苦戦している段階にあります。

AIは確かに注目されている一方で、全体として見れば、まだ多くの企業が成果化に苦戦している段階にある

ここで重要なのは、AIの性能そのものだけを問題にしないことです。
もちろんツールやモデルの違いはあります。ですが、実務で成果が出るかどうかを分けているのは、AIの賢さそのものよりも、何を学習させ、何を参照させ、どんな文脈で使っているかにあります。

たとえば、営業部門には商談履歴があり、マーケティング部門にはコンテンツ閲覧やメール反応のデータがあり、カスタマーサポートには問い合わせ履歴や利用状況の情報がある。
しかし、それらが部門ごとに分かれたままなら、AIは顧客の全体像を前提に判断することができません。

結果として、過去の経緯を踏まえない提案、すでに不要になっている情報の配信、検討段階に合わないレコメンドなど、文脈に合わない出力が生まれやすくなります。

AIで差がつくのはツールではなく「データ統合」

AIは、与えられた情報の範囲でしか判断できません。
そのため、データが分断されたままでは、AI活用も局所的な最適化にとどまりやすくなります。
逆に言えば、顧客データがつながり、一定の文脈を持って扱える状態にある企業では、AIははじめて実務に効く形で機能しやすくなります。

その差を象徴しているのが、今回の調査の中でも特に重要な結果です。
自社内のデータ統合を完了している企業では、AI活用で成果を実感している割合が68.9%に達していました。

一方で、データ統合に未着手の企業では、その割合は3.6%にとどまっています。
その差は、19.2倍です。

データ統合の進捗レベルごとの「AI成功率(%)」

この19.2倍という差は、非常に示唆的です。
なぜなら、AI活用の成否が、単なるツール導入や活用意欲の違いではなく、AIを支える前提条件の違いとして表れているからです。

生成AIや予測AIは、単独で魔法のように成果を生み出すものではありません。

顧客データがどれだけ統合されているか。
表記ゆれや重複のない形で扱えるか。
過去の接点や検討履歴を踏まえて判断できるか。

そうした土台が整っている企業ほど、AIを「単なる補助機能」ではなく、成果につながる仕組みとしていかしやすくなります。

ここで誤解してはいけないのは、「AIで成果が出る企業は、最先端のAI技術を持っている企業だ」という見方です。
今回の結果から見えてくるのは、むしろその逆です。

AI活用で差を生んでいる企業は、派手な先端技術よりも前に、自社データをどう整え、どうつなぎ、どう使える状態にしているかに投資しています。
つまり、違いを生んでいるのはAIの表層ではなく、その前段にある基盤設計です。

AI成功企業ほど「高度なセキュリティ体制」を重視する

さらに、今回の調査で興味深かったのは、AI活用で成果を出している企業ほど、今後の強化項目として「高度なセキュリティ体制」を重視していることでした。
AI活用で成果を実感している企業の58.3%が、高度なセキュリティ体制の構築を重視すると回答しています。
一方、AI活用で成果が出ていない企業では、この割合は23.5%でした。

AI活用で成果を出している企業ほど、今後の強化項目として「高度なセキュリティ体制」を重視している

この結果は、「攻めのAI活用」と「守りのセキュリティ」が別の話ではないことを示しています。
顧客データを本格的に活用しようとすればするほど、その取り扱いの精度、アクセス権限、情報管理の考え方が重要になります。
つまり、AIを業務に深く組み込んでいる企業ほど、使い方だけでなく、安心して使い続けるための設計にも目を向けているのです。

ここでもやはり、差を生んでいるのは単発の施策ではありません。

データをつなぐ。
使える状態に整える。
安全に扱える基盤を作る。

この一連の設計を、AI活用の前提条件として捉えられているかどうかが、成果の差につながっています。

ツール選びの前に見直すべき「データ資産化」という構造課題

第1回で見たように、先進企業は新規獲得を入口だけで考えず、LTV起点で見直しています。
第2回では、マーケティングと営業のズレの背景に、顧客の検討文脈を共有できていない問題があることを見ました。
第3回では、そのさらに手前に、データ整備とスキルの壁があることを確認しました。
そして今回、AI活用というテーマを通じて改めて見えてきたのは、それらはすべて別々の問題ではなく、データ基盤の状態に根差した1つの構造課題であるということです。

だからこそ、AI導入を進める企業ほど、最初に問うべきは「どのAIツールを選ぶか」だけではありません。

むしろ先に確認すべきなのは、
自社の顧客データはどこまでつながっているか
顧客の文脈を一貫して見られるか
安全に扱える状態になっているか
という点です。

AIは、土台が整っていない企業にとっては、期待値だけが先行しやすいテーマです。
一方で、データが整い、文脈が共有され、安全に扱える基盤がある企業にとっては、AIは業務効率化の補助ではなく、実際の成果を押し上げる手段になります。
19.2倍という差は、その現実を非常に端的に表していると言えます。

では、中堅企業はこの壁をどう越えていくべきなのでしょうか。
理想論として「データ統合が大事だ」と言うことは簡単ですが、専任組織や大規模投資が難しい企業も多くあります。
重要なのは、限られた体制の中でも、何を自社で持ち、何を仕組みに任せ、どこに投資すべきかを見極めることです。

最終回となる次回は、
中堅企業はどう進めるべきか。LTVシフトを支えるCRM基盤と“自前主義を超える設計”をテーマに、
ここまで見てきた課題を実際にどう乗り越えていくかを整理します。

最新の調査データ「企業のデータ資産利活用に関する実態調査2026」

最新の調査データ「企業のデータ資産利活用に関する実態調査2026」

 

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