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【連載:データ資産化への決断 第5回】中堅企業はどう進めるべきか。LTVシフトを支えるCRM基盤と“自前主義を超える設計”

【連載:データ資産化への決断 第5回】中堅企業はどう進めるべきか。LTVシフトを支えるCRM基盤と“自前主義を超える設計”

全5回で扱うテーマ

全5回で扱うテーマは、次の通りです。

第5回:中堅企業が進めるべきCRM基盤と実装条件

こんにちは。シナジーマーケティングの和田直之です。
ここまで4回にわたり、CPA最適化の限界、マーケティングと営業の分断、データ整備とスキル不足の壁、そしてAI活用における成果格差を見てきました。

振り返ってみると、これらは別々のテーマのようでいて、実は共通した1つの課題につながっています。
それは、顧客データを顧客単位でつなぎ、継続的に活用できる状態をどう作るかという問題です。

第1回では、広告効率の改善だけを追う発想では限界が見えやすくなっており、先進企業ほどLTV起点で入口設計を見直していることを確認しました。
第2回では、MQLの数だけでは顧客の検討文脈が見えず、マーケティングと営業が同じ顧客を別々に見てしまいやすいことを見ました。
第3回では、その背景に、データが整っていないことと、それを扱うスキル・仕組みの不足があることを整理しました。
第4回では、その差がAI活用の成果差としても表れ、データ統合の進捗によって成果実感に大きな開きが出ていることを確認しました。

中堅企業が直面する「スキル不足」と自前主義の壁

では、こうした課題に対して、企業はどこから手をつけるべきなのでしょうか。
理想論として「データ統合が重要だ」「LTV起点に切り替えるべきだ」と言うことは難しくありません。
しかし実際には、すべての企業が大規模な専任組織を持てるわけではなく、潤沢な投資余力があるわけでもありません。
特に中堅企業では、事業の成長に伴ってデータ量も顧客接点も増えている一方で、それを横断的に支える体制や専門人材が十分ではないケースが多くあります。

今回の調査でも、その現実は見えてきました。
従業員101名〜500名の中堅企業では、「専門スキルを持った人材の不足」を課題として挙げた割合が37.9%と、全体の中でも特に高い水準でした。
また、第3回でも触れた通り、データ統合に一部着手している企業ほど、実務面のスキル不足に直面しやすい傾向も見えています。
つまり、「必要性は理解しているが、どう進めればよいかで止まりやすい」というのが、多くの中堅企業のリアルだと言えます。

中堅企業では、「専門スキルを持った人材の不足」を課題として挙げた割合が37.9%

このとき重要なのは、「すべてを自社で抱え込もうとしないこと」です。
データ活用やLTV起点の運用が難航しやすい企業ほど、現場の努力や属人的な工夫で乗り切ろうとしがちです。
営業が手作業で情報を補完し、マーケティングがリストを加工し、都度の施策をなんとか成立させていく。
短期的にはそれで回る場面もありますが、接点が増え、施策が複雑になるほど、その運用は持続しにくくなります。

LTVシフトの土台となる「共通基盤としてのCRM」

ここで必要になるのが、単発の施策を増やすことではなく、顧客理解を継続的に支える基盤です。
その中心にあるのがCRMです。

CRMというと、今でも「顧客情報を管理するためのツール」「営業が追客するための仕組み」というイメージで捉えられることがあります。
もちろん、その役割もあります。
ですが、ここまで見てきた課題を踏まえると、CRMの本質はもっと広いものです。
CRMは、マーケティング、営業、サポートなどに分かれた情報を、顧客という単位でつなぎ直し、部門をまたいで同じ文脈を見られるようにする共通基盤です。

広告でどの接点から流入したのか。
どのコンテンツを見てきたのか。
資料請求やセミナー参加の履歴はどうか。
営業との接点はあったのか。
導入後にどんな問い合わせがあったのか。

こうした情報がバラバラではなく、1人の顧客の時系列として見えるようになってはじめて、LTV起点の判断が現実の運用に落ちていきます。

その意味で、CRMは単なる顧客管理ツールではありません。
LTV起点のマーケティング、営業連携、AI活用を支える土台です。
ここが整っていなければ、第1回で見た「既存顧客理解から入口を見直す」という話も、第2回の「検討文脈の共有」も、第4回の「AIで成果を出す」も、どこかで止まりやすくなります。

成果を分ける基盤の「3つの条件」

では、どのような基盤が求められるのでしょうか。
今回の調査からは、AI活用で成果を出している企業ほど、共通して重視している条件が見えてきました。

それが、
高度なセキュリティ
自動統合機能
直感的な使いやすさ
の3つです。

データ資産化を支える「成功のトライアングル」

この3つは、それぞれ別々の要素に見えますが、実際には密接につながっています。

まず、高度なセキュリティは、単なる守りのためだけではありません。
顧客データを横断的に扱い、継続的に活用していくには、社内外の関係者が安心して使える環境が必要です。
セキュリティが弱いと、活用範囲は広がりません。結果として、せっかくデータを集約しても、業務の中で十分にいかせないということが起きます。

次に、自動統合機能は、現場の手作業を減らすために欠かせません。
第3回でも見たように、多くの企業はデータを整える工程でつまずいています。
表記ゆれの吸収、重複統合、部門横断での顧客情報の紐付け。こうした前工程を、人手だけで支え続けるのは限界があります。
だからこそ、仕組みとして自動化できる部分を持つことが重要です。

そして、直感的な使いやすさも軽視できません。
いくら高機能でも、限られた一部の担当者しか使えない仕組みでは、現場の施策や判断にはつながりにくくなります。
営業、マーケティング、カスタマーサポートなど、それぞれの現場が必要な形で情報を見られること。これが、顧客理解を全社で共有するための条件になります。

中堅企業にとって大切なのは、こうした条件を満たす基盤を選ぶと同時に、どこを自社で持ち、どこを外部の知見に任せるかを明確にすることです。
初期設計、データのつなぎ方、運用ルールの整備など、上流の設計には専門性が必要です。
ここをすべて自社だけで学習しながら進めようとすると、スピードも精度も出にくくなります。
一方で、顧客理解の軸や、どんな施策を優先するかという判断は、自社の事業や顧客を知る自社側が持つべきものです。

つまり必要なのは、丸投げでも内製至上主義でもなく、役割分担の設計です。
データ基盤作りのすべてを現場任せにしない。
外部の力も使いながら、社内は顧客理解と施策実行に集中する。
この考え方が、結果的に最も現実的で、持続しやすい進め方になります。

顧客起点の判断を支える基盤づくりへ

ここまでの連載を通して見えてきたのは、成果の差は派手な打ち手の差ではなく、顧客データをどう扱うかという基礎設計の差から生まれているということです。
広告効率の差も、営業連携の質も、AI活用の成果も、その前段にある顧客理解の基盤に大きく左右されます。

だからこそ、これから問われるのは「CRMを入れるべきかどうか」ではありません。
本当に問うべきなのは、
顧客起点の判断を支える基盤を、自社はどう作るのか
そのために、何を仕組みに任せ、どこに自社の力を使うのか
ということです。

LTVシフトは、単にKPIを変える話ではありません。
顧客理解を部門で分断せず、継続的な施策にいかせるようにするための、運用と基盤の再設計です。
そしてその実装は、気合いや手作業の延長ではなく、適切な仕組みと役割分担の上にしか成り立ちません。

全5回にわたってお届けしてきたこの連載が、皆様にとって、自社の顧客データを「あるもの」から「いかせるもの」へ見直すきっかけになれば幸いです。
次に必要なのは、理解ではなく着手です。
どの順番で、どの範囲から、どう整えていくか。そこから、データ資産化は始まります。

最新の調査データ「企業のデータ資産利活用に関する実態調査2026」

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