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【約900人の会員が参加】”会員限定”でさらに観光CRMが深化!志賀高原の3年目の挑戦と、生成AI活用の未来とは(事例インタビュー)

【約900人の会員が参加】”会員限定”でさらに観光CRMが深化!志賀高原の3年目の挑戦と、生成AI活用の未来とは(事例インタビュー)

左から、ケー・アンド・エフ コンピュータサービス 丸山氏・ハイファイブ 谷垣氏・志賀高原観光協会 大島氏・シナジーマーケティング 篠原・志賀高原観光協会 谷本氏(撮影は2025/2/13・5/9、取材は8/28に実施)

日本有数のスノーリゾートとして知られる志賀高原。旅行代理店やOTA(Online Travel Agent)のみに頼らず、顧客との直接的な関係を深めることで収益率改善を目指すべく、2022年に「志賀高原観光DX推進コンソーシアム」が組成されました。

第1回のインタビューでは、脱OTAを目的とした公式サイトの改善と会員組織『CLUB SHIGA KOGEN』の立ち上げについて。第2回では、2023年度に会員組織向けに実施した観光CRM施策の成果についてお聞きしました。第3回となる今回は、2024年度にさらに進化した会員向け施策の成果と、2025年度に見据える生成AI活用の展望について、志賀高原観光協会の大島様・谷本様にお話を伺います。

【1】異常気象を乗り越え、会員数8,600人超へ。組織の進化も見られた2024年度

【1】異常気象を乗り越え、会員数8,600人超へ。組織の進化も見られた2024年度

篠原 まずは、「令和7年度 観光DX推進による地域活性化モデル実証事業 生成AI活用モデル分野」での採択、おめでとうございます。

大島氏谷本氏 ありがとうございます。

篠原 この採択で2025年度実施する内容もより具体的に見えましたので、インタビューの最後に今後の展望としてじっくりお伺いできればと思います。まずは、少しさかのぼりますが、2023年度(2023/4/1~2024/3/31)から2024年度(2024/4/1~2025/3/31)にかけて印象的だったことは?

大島氏 2024年は、紹介キャンペーンや店舗周遊キャンペーンなどの会員限定の施策を多く実施できたのが印象深いですね。それ以外ですと、年間を通して異常気象が顕著だったことがとても印象的でしたね。特にウインターシーズンは雪が少なく、1月や2月は「4月か?」と思うほどでした。

篠原 来訪者数や売上に影響はありましたか?

大島氏 影響が心配されましたが、CRM施策やイベントの効果もあり、売上は昨対比で大きく伸びました。志賀高原は標高が高いため、雪が減ったとはいえ営業は可能でした。一方、雪不足で営業できないスキー場もあったようで、結果的に『滑れるスキー場』として当エリアを選んでいただけた側面もあるかもしれません。おかげさまで、売上ベースで2023年12月(昨対比121.87%)、2024年1月(111.91%)、2月(206.19%)3月(103.86%)でした。志賀高原の強みである雪質(パウダースノー)にも大きな影響は出ていなかったことも良い結果につながっているのかも。

篠原 グリーンシーズン(4~9月)はいかがでしたか?

大島氏 6月、7月、9月は昨対比で増加しました。特に7月のトレイルラン、9月のヒルクライムといったイベントが盛況でしたね。ただ、オータムシーズンは紅葉の状況に左右されます。ここ数年、なかなか冷え込まないため紅葉が遅れたり、まばらになったり、見頃の時期がずれたりする傾向にあり、異常気象の影響は大きいと感じています。

CLUB SHIGA KOGENの2022年から2025年までの変化の図

篠原 そうした中でも会員数は順調に増え、合計で約8,600名に達しましたね。定例会で毎月着実に増えていくのを拝見するたびにうれしかったです。

大島氏 とはいえ、2024年度の目標だった1万人は達成できませんでした。メールアドレスのみで簡単に登録できる一般会員の募集を2023年冬から開始したものの、今でも宿泊予約が必須の「宿泊会員」が全体の6割を占めています。一般会員も宿泊会員も、公式サイトで予約するメリットをより強く訴求できればまだまだ増やせるはずなので引き続き注力していきます。

篠原 そして、組織としての大きな変化は、2024年10月から谷本様が新メンバーとして加わられたことですね。

大島氏 ですね!事務所の“音量”が少しあがりました(笑)

谷本氏 持ち前の熱意で、事務所の“温度”もあげています(笑)

篠原 まだ1年もたっていないのに、初めからいらっしゃったような感覚になるのがいつも不思議です(笑) 入社後すぐに谷本さんに担当いただいたメール施策も素晴らしい成果を上げていますので、次はそこを詳しく教えてください。

【2】成果①:開封率50%超!ステップメールで効率的にファンの熱量を高める

【2】成果①:開封率50%超!ステップメールで効率的にファンの熱量を高める

篠原 2024年度は、谷本様という新戦力を得て、以前から構想されていたステップメールを始められました。

大島氏 はい。入社してすぐに取りかかってもらいました。

谷本氏 ステップメールは私の想像以上の反応で、開封率も常に50%を超えています。リアルタイム性の高いイベント情報やお知らせをお送りする通常のメルマガとは違い、季節を問わず志賀高原そのものを知っていただける点が良いと感じます。

大島氏 ステップメールは、一度設定すると会員登録がある度に自動的に配信されるようになるので、効率的に会員との接触回数が増やせるのも良いですね。シナジーマーケティングさんに「鉄は熱いうちに打て」とご提案いただいた通りで、登録直後の熱量が高いタイミングで志賀高原の魅力を伝えられる良い機会になっています。

篠原 定例会でいつもメール周りの数字は拝見していますが、通常のメルマガでも50%以上出たりするので、CLUB SHIGA KOGENの会員さまはほんとにロイヤリティが高い方が多くて我々も驚いています。ちなみに谷本さん、初めてSynergy!をご利用になった感想は?

谷本氏 HTML形式でリッチなメールが送れるのが良いですね。開封やクリックといった反応が具体的な数字で見えるので、やりがいにつながります。操作も手順通りに進められましたし、特に困ることもなく設定できました。

篠原 そう言っていただけて良かったです。ステップメール以外のメール配信も、今では谷本様が中心になってやっておられますよね。

谷本氏 はい。通常のメルマガでも配信後のリアクションの早さと多さには毎度驚きます。直後や次の日くらいに反響がある……。

篠原 2023年の冬と比べると会員数が3倍近くに増えているのに、高い反応率を維持されているのも驚異的です。特に、シーズン終了のご挨拶メールが開封率57%だったのは印象的でした。

谷本氏 ほんとにありがたいことです。あの時は実はまだ一部エリアで営業していたので、お客様から「まだ開いてるんじゃないですか?」とツッコミのご連絡をいただいたほどです(笑)。今後さらに会員数が増えればお問い合わせも増える可能性があるので、そこは今期取り組んでいる「おこみんAI」で少しでもカバーできればいいな……(笑)

篠原 メールの反響から見えてきたことは他にもありますか?

谷本氏 リアルタイムな情報や、イベント、旬の味覚といった、あまり知られていない志賀高原の一面をメールでお伝えすることに価値を感じていただけているように感じています。もしかすると、まだまだ志賀高原の魅力を伝えきれていないのかもしれません。今後はそういうマニアックな志賀高原の情報提供とあわせて、より会員さまを特別視したサービス・キャンペーンをやれたらいいなと思っています。

【3】成果②:複雑な条件でも200件以上の参加が!会員限定キャンペーンの成功

【3】成果②:複雑な条件でも200件以上の参加が!会員限定キャンペーンの成功

篠原 冒頭で挙げてくださったとおり、会員限定で実施された「紹介キャンペーン」も素晴らしい成果でしたね。

大島氏 はい、やって良かったですね。キャンペーンを開始した12月時点で会員数は約6,400名。参加対象が限られており、参加方法も少し複雑だったにも関わらず、214件の紹介がありました。かけたコストも、景品のオリジナルグッズ(抽選でCLUB SHIGA KOGENオリジナルのてぬぐいやステッカーが当たる)のほかは、キャンペーンの告知ページとポスター制作、そして会員さまへの告知メールだけだったので、費用対効果は非常に高かったです。

篠原 初めての取り組みでしたが、運営面でのご負担はいかがでしたか?

大島氏 「お友だちを紹介するには、ご自身の会員番号の入力も必須」という条件だったので問い合わせを懸念していましたが、1件もありませんでした。企画やシステム面をシナジーマーケティングさんに、デザインをK&Fさんにお任せできたので、我々の負担はほとんどなくスムーズに実施できましたよ。

【4】成果③:ハードルの高さも特別感に。店舗周遊キャンペーンには約900名の会員が参加

【4】成果③:ハードルの高さも特別感に。店舗周遊キャンペーンには約900名の会員が参加

篠原 もう1つの「店舗周遊キャンペーン」も、参加ハードルが高いクローズドな施策でしたね。

大島氏 はい。CLUB SHIGA KOGEN会員になった上で、53のキャンペーン参加店舗を複数巡ってデジタルバッジを集めるという条件でした。こちらも景品(抽選でオリジナルTシャツが当たる)のほかは、告知ページとポスター制作、会員さま向けのメールのみで実施しましたが、875名もの方にご参加いただきました。当初の想定をはるかに上回る結果で、本当に驚いています。

篠原 「一般的なスタンプラリーはイベントで実施されていたとはいえ、CLUB SHIGA KOGENの会員さまは比較的シニア層が多く今回は完全にデジタルになるので、500~600ほど応募あれば十分かな」と事前にお話していましたが、はるかに上回りましたね。

谷本氏 CLUB SHIGA KOGENの会員さまは、こうした施策もメールも本当に反応が高く、そのスピードも速いので驚いています。前職で会員向けにメールを配信したこともありましたが、まったく違う……。

篠原 他業種でもなかなかないですよね。ちなみに、こちらも運用面で初めてのことも多かったと思いますが、いかがでしたか?特にSynergy!側の設定や、参加店舗に置いていただく「QRコード付きポスター」をご用意いただくなど……。

大島氏 私自身はそんなに負担はなかったです。Synergy!でデジタルバッジラリーを行う具体的な方法の提案もSynergy!の設定もQRコードの発行も、すべて篠原さんにお任せで、私はそれをステッカー印刷しただけです(笑) 

谷本氏 各店舗へのポスター配布は、別の担当者と私で53店舗配りました。

大島氏 私はそれを見守っていました(笑) なお、数件程度ですが、店舗でポスターの掲示漏れがあったり、QRコードのステッカーがうまく貼れておらず読みこめなかったり、という細かな現場の課題はありました。また、一部ポスターがお店の前に掲示されていた店舗もあったので、購入せずともデジタルバッジが獲得できるケースもありました。お店によってはポスターが掲示できる場所も限られているし、かといってポップだと目立たないので、この辺は仕方ないかなあ。

篠原 この冬も実施されるご予定ですか?

大島氏 はい。これについてはすでに実施が決定しています。篠原さん、今年もサポートよろしくおねがいします(笑)

篠原 はい(笑) 次回は店舗数だけでなく、エリアやジャンルを広げてよりハードルを上げても面白いかもしれませんね。

大島氏 そこまでやっても達成する人がいそうなのが、CLUB SHIGA KOGEN会員さまのすごいところですね(笑) シーズン券を景品にできれば、さらに参加のモチベーションや特別感をあげられるかもしれません。

篠原 シーズン券は早割でも10万円ほどしますよね。それを購入されるお客様は特にロイヤリティが高いはずなので、将来的にはデータ連携してCRMに活用できると面白いですね。

大島氏 そうですね。今後はチケット側のデータ連携も視野に入れていきたいです。

※QRコードは株式会社デンソーウェーブの登録商標です

【5】2025年度:生成AIで挑む、さらなる観光DX・観光CRM

【5】2025年度:生成AIで挑む、さらなる観光DX・観光CRM

篠原 「令和7年度 観光DX推進による地域活性化モデル実証事業 生成AI活用モデル分野」での採択もあり、2025年度の今年は『生成AIの活用』が大きなテーマですね。

大島氏 はい。1番大きいのは「おこみんAI」の導入かな。公式サイトでの質問応答はもちろん、宿泊予約システムと連携して、よりお客様がプランを探しやすくなる機能も追加されます。サイト上で各店舗の営業状況がリアルタイムでチェックできるシステムを実装しますので、公式サイト全体の利便性はかなり上がるはずです。

篠原 その「おこみんAI」の紹介ページには、当社の『DAYS GRAPHY(デイズグラフィ)』も活用いただいていますね。口コミやアンケートデータから生成AIが自動で顧客像を生成してくれるので、「おこみんAI」の紹介ページを企画する際に、この顧客像へのインタビュー結果を参考にしています。お客様だけでなく、志賀高原観光協会員である事業者様へのサポートにも生成AIを活用されるご予定もありますよね。

大島氏 はい。観光協会には2つのお客様が存在しています。志賀高原に来てくださる一般のお客様と、協会員である事業者様です。観光DX事業に取り組み出してから、さまざまな機能改修やCRM施策はかなりうまくいっていると感じています。一般のお客様側も便利になるし、このシステムを活用する側になる事業者も、その多くはメリットを感じてくださり、今回の店舗周遊キャンペーンのようなさまざまな企画への参加率も上がってきた。最近ではいつも全体の6~7割くらいは参加してくださっています。ですが、事業者側には高齢の方も多くデジタルへ抵抗感がある方もいらっしゃいますし、DX化が進むほど事業者様が活用できる機能も増えますが、同時に運用負担も増えてしまいます。そこを事務局の方でもっとサポートしていく必要がありますし、今年はここでも生成AIを活用して少しでも事業者側の課題を減らしたい。同時に、まだシステムを活用していない事業者様もいらっしゃるので、さらなる活用促進のためにインナーブランディングも必要だと考えています。

篠原 今期は、事業者様向けのメールシステムもSynergy!に切り替えるので、よりインナーブランディングを強化してもらえそうですね。

大島氏 はい。今年から事業者側への情報提供でもSynergy!を活用していく予定です。

谷本氏 お話した施策のほとんどがが、来訪者がもっとも多いウインターシーズンまでには公開できそうなので、どんな反応をいただけるか本当に楽しみです。

篠原 最後に、このプロジェクトを進める上での要望や感想をお聞かせください。

大島氏 観光庁のDX事業からコンソーシアムメンバーで、長野経済研究所さんを中心に、CRMはシナジーマーケティングさん、宿泊システムはハイファイブさん、公式サイトはK&Fさん、生成AIはDataStrategyさん、と各専門チームのチームワークも素晴らしくいつも助かっています。全方位的なサポート体制が整っているなかで事業ができているので、何をやるにもスムーズですし、特にトラブルもなく、お客様もよろこんでいただけている。今後も何とぞごひいきによろしくおねがいします(笑)

篠原 ありがとうございます!我々も会員さまとの良いコミュニケーションのお手伝いができていることを毎月定例会をとおして実感でき、とてもうれしいです。今後も全力でサポートさせていただきます。本日はありがとうございました。

まとめ

3年目の志賀高原観光DXプロジェクトでは、これまでの基盤の上に、より顧客との関係を深めるための具体的な施策が花開きました。開封率50%超を維持するステップメール施策や、参加ハードルの高さにも関わらず多くの参加者を集めた会員限定キャンペーンは、熱量の高いファンコミュニティが着実に形成されている証と言えるでしょう。

そして2025年度は、新たに「生成AI」という強力な武器を手に、顧客体験の向上(おこみんAI)と、データに基づく顧客理解の深化(DAYS GRAPHY)、そして志賀高原全体のDXを支える事業者側の課題解決という、多角的な進化を目指します。CLUB SHIGA KOGEN会員をふくめたお客様と、観光協会に属する事業者様。双方に寄り添う志賀高原の挑戦から、今後も目が離せません。

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