事例
株式会社モリタ

「自社が言いたいことを、そのまま伝えない」モリタが専門情報を「次の行動」に変えるBtoBメール設計

利用サービス
Synergy!
機能/支援内容
メール配信

メンバー紹介

千田 麻衣 氏
株式会社モリタ マーケティング部 アシスタントリーダー

課題

専門知識を持つ多忙な歯科医療従事者に対し、法改正や製品情報を詳しく伝えようとすると、メールが情報過多になりやすいという課題がありました。

また、メールの中ですべてを説明すると、読者がどの情報に関心を持ったのかが把握しにくく、その後のフォローや営業連携につなげにくいという問題もありました。

施策

企業が伝えたい情報をそのまま掲載するのではなく、歯科医療従事者が抱える疑問や不安へ変換。メールでは要点と疑問を提示し、詳細をWebコンテンツで解説する「ティザー構成」を採用しました。

さらに、資料請求やサンプル請求などの中間CVを設け、メールやコールセンターによる確認を経て、顧客の温度感に応じて営業へ連携する流れを設計しています。

得られた効果

講演資料で示された実績例では、約2万3,000件の配信に対して、開封率30%、クリック率5%、資料・サンプル請求8件を獲得しました。

その後、8件へのフォローを実施し、4件を営業へ連携。1件が商談化しています。

購入だけを成果とするのではなく、メールからWeb、資料請求、顧客フォロー、営業連携までの途中の反応を可視化することで、顧客との接点を次の行動へつなげています。

「自社が言いたいことを、そのまま伝えない」モリタが専門情報を「次の行動」に変えるBtoBメール設計

同社は1916年に設立され、今年で110周年を迎える歴史ある歯科の専門商社です。歯ブラシや詰め物といった身近な商材から、診療用チェア、レントゲン、CTなどの大型器械まで、約20万点もの製品を取り扱っています。

現代の歯科治療は、大きく進化しています。「キーン」という音が響く痛い治療から、レーザーを使った痛みの少ない治療へ。入れ歯をつくる際も、口腔内スキャナーと3Dプリンターを使い、わずか2〜3日で完成する時代です。
そんな最先端の歯科医療を裏側から支えるモリタは、歯科医師などの専門家に向けて、週1回のメール配信を行っています。

しかし、法改正や製品の最新情報など、専門性の高い内容を伝えようとすると、どうしてもメールに情報を詰め込みたくなってしまいます。次から次へと患者さんが訪れる多忙な先生方に、文字がびっしり詰まった長文メールを最後まで読んでもらうのは至難の業です。

そこで同社が取り入れたのが、企業が伝えたい情報を顧客の「リアルな疑問」へ置き換え、メールでは要点だけを示してWebへ誘導する「ティザー構成」でした。
ウェビナーで語られたのは、単なるメールの書き方のコツではありません。読者の関心を引き出し、コールセンターや営業活動へとつないでいく、緻密なコミュニケーション設計の裏側でした。

メール大賞「わかりやすさ賞」を受賞したモリタのメール

「メールだけで完結するほうが親切」は本当か?あえて“焦らす”ティザー構成の狙い

モリタがメールマーケティングを始めてから、約10年。その運用の中では、社内からこんな声が上がることもあったそうです。

「メールの中ですべて説明したほうがよいのではないか」
「クリックしなくても内容を理解できるほうが、読者に親切ではないか」

確かに、必要な情報をすべてメールへ掲載すれば、忙しい読者は別のページへ移動する手間なく概要を把握できます。情報詰め込み型は、読者の満足度が高まりやすいという利点があります。
しかし、担当の千田氏はこのように語ります。

「メールだけで情報を完結させると、読者の満足度は高くなりやすいメリットがあります。一方で、実際に最後まで読んでもらえたかどうか、何に関心を持っているのかが把握しづらく、その後のフォローにつなげにくいというデメリットがありました」(千田氏)

メールでは要点や疑問だけを提示し、詳しい説明をWebコンテンツへ委ねる「ティザー構成」を選択しました。

Webへ誘導することで、「どの内容がクリックされたのか」「お客様が何に興味を持っているのか」が明確に可視化されます。結果として、関心を持った人へさらに情報をお届けする次のアクションにつなげやすくなるのです。また、Webサイトへの集客が増え、制作したコンテンツが長期的な「情報資産」として蓄積されていくメリットもあります。

もちろん、メールの第一印象で興味を惹きつけられなければクリックされない、という難しさはあります。そのためモリタでは、目的に応じて「情報詰め込み型」と「ティザー構成」を柔軟に使い分けています。

短期的な情報提供を目的とするのか、顧客の興味・関心を把握し、長期的な関係づくりにつなげるのか。施策の目的によって使い分けることが重要だと考えています。

「情報詰め込み型」と「ティザー構成」の違い

法改正を「今使っている手袋で大丈夫か」という不安に変え、多忙な専門家の“次の行動”を引き出す

受賞メールで扱われたのは、「化学防護手袋」です。

2024年4月から、皮膚などに障害を与える対象化学物質を製造・取り扱う作業では、不浸透性の保護手袋をはじめとする適切な保護具の使用が義務化されました。すべての化学物質や作業を一律に対象とするものではなく、対象物質と作業内容に応じた対応が求められる制度です。(厚生労働省

この法改正を背景に、社内の製品担当者から「取り扱っている手袋について、もっと知ってもらえないか」という相談が寄せられました。
企業側が伝えたいのは、「法律が変わりました」「この手袋がおすすめです」という事実です。しかし、それをそのままメールへ掲載しても、日々の診療に追われる歯科医療従事者が「自分ごと」として受け取ってくれるとは限りません。

そこでモリタは、情報を整理するだけでなく、「現場のリアルな状況」を確認しました。すると、法改正自体がまだ十分に周知されていないことや、使用しているグローブが対象作業に適しているか判断に迷うケースがあることがわかってきたのです。
そしてここから、企業が伝えたい情報を「現場で生まれる疑問」へと鮮やかに変換していきます。

「化学防護手袋とは、どのようなものなのか」
「なぜ着用が必要なのか」
「今使っているグローブで大丈夫なのか」
「どのような手袋を選べばよいのか」
「適切に対応しなかった場合、どうなるのか」

読者にとって本当に知りたいことは、堅苦しい法令の文章ではありません。「自分の医院にどのような影響があるのか」「今の対応を変える必要があるのか」ということです。

その中でも特に気になりやすい疑問をメールの入り口に置き、詳しい答えをWebコンテンツでやさしく解説する。メールで抱いたモヤモヤとした疑問と、クリック後に得られるスッキリとした答えを一致させることで、読者が「期待外れ」を感じない心地よい導線をつくっているのです。

専門情報を顧客の疑問へ変換する3ステップ

現場の悩みは、「聞きまくる」ことで見えてくる

読者のリアルな疑問を想像するだけでは、現場の解像度は上がりません。モリタでは、製品担当者や営業担当者など、顧客と直接接点を持つ社員から積極的に情報を集めています。千田氏は、その泥臭い手法をウェビナーの中でこう表現しました。

「現場の営業だったり、製品の担当者だったり、社内の中でも現場に直接関わりのある担当者に『聞きまくったり』、展示会や学会でどういうリアクションがあったのかをヒアリングするようにしています」(千田氏)

確認するのは、単なる製品のスペックではありません。

「現場で、どの情報が伝わっていないのか」
「先生方は何に戸惑っているのか」
「展示会で、どの説明に反応があったのか」
「便利な製品なのに、どの価値が理解されていないのか」

時には、製品担当者の方から「この商品の本当の良さが伝わっていない。どうしたらいいか?」と相談を持ちかけられることもあるそうです。
企業が売りたいものと、顧客が知りたいことの間にあるギャップを埋めること。それが、マーケティング担当者の重要な役割となっています。

BtoBメールのゴールを「いきなり購入」にしない

モリタは全国300社以上の販売代理店を通じて製品を提供しているため、メールに「購入ボタン」を置いて直接販売することが難しいという商流上の事情があります。
また、診療用チェアやCTなどの大型器械は非常に高額で、検討に長い時間がかかります。メールを見て「今すぐ買おう!」と即決する読者はほとんどいません。
そこでモリタが戦略的に設けているのが、資料請求、サンプル請求といった「中間CV(コンバージョン)」です。

「いきなり購入や商談をゴールにしてしまうと、お客様にとって心理的なハードルが高くなってしまいます。まずは『資料を見たい』『情報収集したい』という気持ちに応えるため、心理的ハードルを下げる中間コンバージョンを設置しています」(千田氏)

講演資料で示された実績例では、約2万3,000件の配信に対し、開封率30%、クリック率5%、資料・サンプル請求8件を獲得しました。その8件に対してフォローを行い、4件を営業へ連携。結果として1件が商談化しています。
もしゴールを「購入」だけに設定していたら、結果は「購入0件」と見えていたかもしれません。しかし、中間CVを置くことで、見込み顧客の関心をキャッチし、その後のフォローや商談化への確かな道筋を可視化できたのです。
これはBtoBマーケティングにおいてとても重要なポイントとも言え、単純な開封やクリックだけでは、企業側から連絡する理由が作りにくいものですが、資料請求というアクションがあれば、ごく自然に次のコミュニケーションへつなげることができます。

中間CVによって生まれる顧客接点

資料請求があっても、すぐ営業へは渡さない。あえてワンクッション置き、顧客と営業のミスマッチを防ぐ

中間CVを獲得したからといって、モリタは一律にすべてのリストを営業担当者へ丸投げすることはありません。
読者は「ちょっと気になったから資料を見たい」と軽くアクションしただけかもしれません。その段階でいきなり営業担当者が訪問してしまうと、「資料を見たかっただけなのに、営業が来てしまった…」と、顧客に温度差を感じさせてしまいます。営業側にとっても「行ってみたけれど、まだ全然検討段階ではなかった」という空振りに終わってしまいます。

「Webだけの情報では、実際に足を運ぶ営業は動きづらい部分があります。ですので、リアクションがあった先に対しては、まず弊社のコールセンターからアクションを起こし、生の『温度感』を測るようにしています」(千田氏)

過去の購入履歴なども確認しながら、コールセンターが会話を通じて温度感を確かめ、本当に必要としている相手だけを適切に営業へつなぐ。
マーケティング側の都合だけでリードを渡すのではなく、「顧客の状態と営業が動くタイミングを合わせる」という細やかな連携が、成果の裏側にはありました。

「自社が言いたいことを、そのまま伝えない」。スペックではなく、読者の“悩み解決”を起点にする

ウェビナーの終盤、「読者と向き合ううえで、これだけは絶対しないと決めていることは?」と聞かれた千田氏は、まっすぐにこう答えました。

「自社が言いたいこと、伝えたいことを、そのまま伝えるということはしないように心がけています。スペックや製品の情報ではなく、まずは読み手となる方の悩みを考え、その答えとなるような情報をお届けしたいと思っています」(千田氏)

スペックや機能を並べるだけでは、読者にとってその製品を使う「本当の価値」までは伝わりません。
それを使うことで、どのようなメリットがあるのか。日々の診療のどんなストレスが解消されるのか。

受賞メールの「わかりやすさ」は、単に文章を短くしただけの表面的なテクニックではありません。
法改正を現場のリアルな疑問へ変換し、メールとWebの役割を明確に分け、読者が無理なく取れる行動(中間CV)を用意する。その反応をコールセンターで確かめ、顧客のベストなタイミングで営業へとバトンを渡す。

この徹底した一連の設計があって初めて、「わかりやすいメール」が顧客の心を動かし、具体的な「次の行動」へとつながっていくのです。

「メール単体」で完結させない。Webから営業までを“線”でつなぐ設計こそが成果を生む

モリタの事例から見えてきたのは、「メールを短くして、詳しくはWebへ誘導する」という表面的なテクニックだけではありません。
読者が今どのような疑問を持ち、どこまでなら無理なく行動できるのか。
メールで関心を惹き、Webで理解を深め、中間CVで意思を確認する。そしてコールセンターの会話を通じて温度感を確かめ、最適なタイミングで営業へバトンを渡す。

このように、メール単体で考えるのではなく、Webコンテンツ、行動データ、コールセンター、営業活動までを「1つの線」として捉えて設計すること。これこそが、モリタのメール施策を支える最大の強みです。

成果を生むメールは、決してメールボックスの中だけで完成するものではありません。
誰のどんな悩みに応えるのか。読者の反応をどこで受け止め、その情報を誰に渡し、次にどのような接点をつくるのか。そこまで全体が設計されて初めて、メールは単なる告知手段から、顧客理解を深める大切な起点へと変わります。
専門性の高い商材を扱う企業や、メールから直接購入につなげにくいBtoB企業にとって、モリタの取り組みは、メールを「情報を一方的に送るもの」から「顧客の次の行動を支えるもの」へと変える、大きなヒントになるのではないでしょうか。

「メール大賞」特別ウェビナーを開催しました

「メール大賞」の受賞企業をゲストに迎え、成果につながるメール施策の考え方や、企画・運用の裏側を伺う特別ウェビナーを開催しました。

本記事は、株式会社モリタ マーケティング部 アシスタントリーダーの千田麻衣氏にご登壇いただいたウェビナーの内容と講演資料をもとに再構成しています。

インタビュー参加者

写真右から

和田 直之
シナジーマーケティング株式会社 マーケティングプロデューサー

千田 麻衣 氏
株式会社モリタ マーケティング部 アシスタントリーダー

野本 花枝 氏
グローバル電子株式会社 経営企画室 Marcom部 専門次長
※部署名・役職、運用体制、配信実績などは、取材・講演当時のものです。

「メール大賞」で「運用効率化できたで賞」を受賞したグローバル電子株式会社は、プロダクトマーケティング、営業、Marcomが連携して専門家向けコンテンツを企画し、HTMLエディタやテンプレートを活用しながら月4回の継続配信を実現しています。

グローバル電子のBtoBメール運用効率化事例も、あわせてご覧ください。

※記載されている内容は取材当時のものであり、一部現状とは異なることがありますが、ご了承ください。