約2000万円のインパクト!自動配信メールのリライトだけで定期購入の解約が減少【健康食品通販EC:成功事例】
<目次>
私たちには、毎日、無機質な自動配信メールが届いている。でも、それで良いの?
顧客管理やECシステムの進化が進んだことで、もはやメールの自動配信も当たり前の機能になった。しかし、そのシステムを利用する企業は、その機能やメールの内容に、どれだけ目を向けているだろう。
その答えは、あなたのメール受信フォルダを見ればすぐにわかるはず。私たちには、毎日、さまざまな企業からの無機質で事務的な自動配信メールが届いているし、私たちもそのことにも慣れてしまった。この手のメールが自動で配信されていることだって知っているし、だからこそ、事務的な内容以上の期待もしなくなってしまった。
消費者としての自分の体験を振り返れば、そういう小さい接点とそれによってもたらされる感情がつみかさなって、会社のイメージはできあがっていることを実感する。大抵の企業からのメール、特に自動配信のメールには、失望すらない。期待もしていないから。
そんなユーザーの気持ちに気づき、あがき、効率的に驚くべき成果を出した企業がある。それが今回ご紹介する生活総合サービス だ。自動配信メールをたった3本リライトし、配信設定を個人名に変えただけで、約2000万円規模の定期顧客の解約を回避できる成果を出したのだ。
その成功の秘訣を伺うべく、当社シナジーマーケティングの営業担当である花房・和田と共に、CRM部門責任者の戸田さんと、WebCRM担当の尾中さん、深野さんのもとを訪れた。
「ていねい」にできなくなるくらいなら売上目標なんていらない
■生活総合サービスご担当者様
(左から:WebCRM担当 尾中さん、CRM部門責任者 戸田さん、WebCRM担当 深野さん)
戸田さん 当社は、健康食品と化粧品の通信販売を行っており、「ていねい通販」という通販サイト も運営しています。主力商品は“はがくれすっぽん”を使用した『すっぽん小町』で、ご愛飲いただいているお客さまの多くは女性です。
通販は対面でお客さまにお会いすることはできませんが、だからこそ「顔なじみの喫茶店や美容院のような関係性を作る」ということを大切にしています。ただ商品を売るだけではなくて、届いた時にほっこりしてもらいたい。お手紙やお電話でも、まるで友人とのやりとりのようにあたたかいような…。
深野さん 例えば、普通のコールセンターだと効率が重視されると思うのですが、当社は1時間ほどお客さまと雑談をしたりするのは普通です。非効率かもしれません。でも、それよりお客さまとの関係を大切にする社風です。
花房 1時間もですか?それはすごい関係性ですね。1時間電話で雑談とか、僕は友だちでもキツいかも(笑)。
一同 たしかに(笑)。
深野さん あとは、社内にお客さまを呼んだり、主力商品の『すっぽん小町』の生産地にお客さまを招待するツアーをしたりと、実際にお会いできる機会を積極的に作っています。
戸田さん 「1人でも多く、1円でも高く」ではなく、「1日でも長く」に徹底的にこだわる、そんな会社です。
和田 初めて御社に伺った時は、そのこだわりに驚きました。なかでも、そのこだわりを実現するために「売上目標がない」というのが一番衝撃でした。
戸田さん 売上目標がないのは、「お客さまにそもそもニーズがないのに、売上を目標として掲げることがおかしい」という会社の考えに基づいています。無理な売上目標がなくなれば、メンバーはより目の前のお客さまにいかに喜んでいただけるかに集中できる。
もちろん、メールの開封率やコンバージョン率、サイトの直帰率など、他社が見ておられるような数字は見ますよ。ただ、それもお客さまのお気持ちや行動を想像するためにしか使っていなくて、それが部門KPIというわけではないです。
和田 メールだけでなく、広告やそのほかの活動でも、売上目標はないんですよね。
戸田さん はい。でも「ある広告金額に対してこれだけのCPO以上は使っちゃいけない」っていう採算性というか投資効率はシビアに見ます。ただ、●件取れとか、●万円売れとかいう目標はない。無理やりサイトに来ていただいても、お客さんと良い関係性は築けない。この辺のこだわりは、ちょっと変わった会社だと思います。
花房 御社の活動や姿勢は、無理やりマーケティング用語に置き換えると『エンゲージメント』とかになると思うんですが、何かそれとは違って独自性がありますよね。
松澤 そうそう。私は、CRMで有名な『ザッポス のCS』や『リッツカールトンのサービスを超える瞬間』を思い出しました。やっぱり、『エンゲージメント』のようなカタカナの概念ではなく、独自の理念を持ってその会社だけでやっておられるものなんですよね。『ていねい』とか『おせっかい』とか、ひらがなで、人の温度や湿度があるようなことばでしか表現できない。
一同:わかる(笑)。
花房 ちなみに、僕ら営業のモットーは「徹底的におせっかい」なんですが(笑)、だからかな、初めてお会いした時から意気投合する点が多くて。お会いしてすぐにWebアンケートをお手伝いさせていただきましたよね。で、あらためてきちんと全体のマーケティングプランをご提案させていただくために御社の購買データなどをお預かりし、僕らなりに分析をしました。
■シナジーマーケティング担当者(左から:西日本事業部 営業グループ 和田、同グループ サブマネージャー 花房、コピーライター 松澤)
これまで積み上げてきた継続率を全部覆すぐらいのマイナスインパクト
戸田さん シナジーマーケティング(以下、シナジー)さんに分析いただいた結果や弊社の知見を持ち寄り、お互い議論していくなかで、【『すっぽん小町』を購入してから180日間の定期中止率】に課題があることが見えてきました。そして、それにかかわる顧客接点のなかでも、最も影響力が大きいのは、僕らが「10日前メール」と呼んでいる自動配信のフォローメールだとわかったんです。
尾中さん 「10日前メール」は、お客さまに定期コースの商品のお届けを伝えるテキストメールで、商品発送の約10日前に自動配信されているものです。『すっぽん小町』の定期コースは、3種類。1カ月毎、2カ月毎、3カ月毎に届けるコースがありますが、なかでも2カ月コースのお客さまが最も数が多く、そのぶん中止のインパクトが大きかったんです。
戸田さん これをやることで、年間で数千万円規模のマイナスになっていることもわかった。これまで積み上げてきた継続率を全部覆すぐらいのインパクトだったんで、全体を見ている僕からしたら衝撃でした。これで全部台無しにしてるんじゃないかと思ったら、もう泣けてくるなと…(笑) 普通の通販なら、やらなくていいメールですよね。
でも、「事前のお知らせがほしい」「便利になった」と言ってくださるお客さまがいる。僕らは、お客さまとお金でつながっていたいんじゃなくて、人としてつながっていたい。社内でも、シナジーさんとも、数ヶ月議論しました。でもやっぱり、ていねいであり続けたい。だから「10日前メール」も続ける、と決めた。
どうせやるなら、目的を果たしながら、もっとお客さんに寄り添うものにしよう、それはどうやったらできるのか、そのお手伝いをしていただきたくて、メールのライティングをお願いしました。
和田 そうですね。私たちもマーケティングの会社なので、数字的な観点を持ちながら、御社のそういう葛藤に寄り添い、そこまでして御社が大切にしたいものをどう表現していくのか、と悩みました。
尾中さん シナジーさんと一緒にいままでの「10日前メール」をあらためて見てみると、いろんな発見がありました。なんとなく、毎回お届けの度に同じ件名・同じ内容の自動配信メールが届くように設定をしていましたが、それもお客さまの目線で見るととても業務的に映ることに気づかされました。
松澤 メールの目的や、ていねい通販として大切にしたいことを詳しくお伺いした上で、まずはテクニカルに添削しました。
いったん、ていねい通販らしさをどう表現するかは横に置いて、メール固有の特性やライティングの観点からその時の「10日前メール」を拝見すると、そもそもメールの目的とメールの文章が一致していなかった。まずは、そこに着目しました。
【成功の秘訣①】メールで一番大切なのは、「目的」と「件名」
松澤 受信者の目に一番はじめに触れる部分なので、メールでは「件名」は本文以上に重要です。届いたメールを見る時、私たちはまずは件名から見ますよね。受信フォルダの件名を見て、メールの本文を読むかどうか取捨選択します。パソコンでもスマホでもこれは同じ。
松澤 修正前のメール(以下、旧メール)は、本来「10日後に商品をお届けします」と伝えることが目的のメールなのに、なぜか「変更はありませんか?」と問いかけている。しかも、この問いかけに反応してメールを開封する人はおのずと「変更の可能性が高い人」になってしまう。結果的に、意図せず変更(=商品発送の中止や解約)を促す結果になっていました。そのため、修正後のメール(以下、新メール)では、まずは件名を本来の目的である「お届けします」に合うものに修正しました。
【成功の秘訣②】メールの本文は、「件名とのつながり」が重要
松澤 次に、本文です。件名を見てメールを開封する受信者の行動に合わせ、本文も件名と文脈を整えました。
旧メール全体の文脈は…
- 件名 「変更はありませんか?」
- ↓
- 本文①「お届け準備に入ります。送る商品はこちらです。」
- ↓
- ②「変更はありませんか?」
- ↓
- ③「変更する方法はこちらです」
- ↓
- ④「ポイントでプレゼントの交換もできます」
- ↓
- ⑤「おまけや月刊誌も送ります」
という流れ。件名の「変更はありませんか?」に興味を持って本文を見たら、①がファーストビューを占拠していて変更についての情報がすぐに見つからず、受信者を迷わせてしまう構成でした。このように、本文でも意図せず、離脱や変更を促す形になっていたので、件名も本文も文脈をがらりと変えました。
新メール全体の文脈は…
- 件名 「もうすぐお届けします」
- ↓
- 本文①「もうすぐお届けします。送る商品はこちらです。」
- ↓
- ②「おまけや月刊誌も送ります」
- ↓
- ③「不明点やご要望、変更があればこちらに連絡してください」
- ↓
- ④「ぜひ飲み続けてください」
- ↓
- ⑤「追伸:飲み方のヒント」
このように、受信者が開封する意図や動機を変え、本来の目的を伝える文脈に修正しました。また、⑤のような、1通目をお送りするタイミングである「飲み始めてから約2カ月後」によくお問い合わせがあるようなQ&A的なTIPSも盛り込みました。
【成功の秘訣③】ていねい通販「らしさ」をメール配信方法や文章で体現
尾中さん 私たちは、松澤さんに「ていねいに、人となりが見えるメールにしてほしい」とお願いしましたよね。
松澤 はい。これが一番難しかった(笑)。結果的に、「尾中さんが本当に丁寧に書いて、送っている」ような内容や文体、配信方法にしました。送信元を尾中さんの個人名に変えたり、原稿も尾中さんになりきって書いたりしました(笑)。
深野さん 会社からのメールなのに「追伸」を入れるというのは、ちょっとびっくりでした。でも、そのことですごく手紙っぽくなって、ていねい通販らしさも出た。
松澤 文章ってとても面白くて、本当に読めば書いた人の「人となり」が見えますよね。それは文章の細部だけでなく、全体の文体や構成にも表れる。文章構成を考えるなかで「追伸」を入れたのも、尾中さんだったらこうするかもなと思ったから。尾中さんって、『周りまで元気にするチャキチャキママさん』という感じで、いつも笑顔でおしゃべりも大好き!な、イキイキした方じゃないですか。
尾中さん なんか照れますね(笑)。
松澤 だからきっと、お客さまにもイキイキ接しておられるんだろうと。目の前のお客さまのために、あれもこれも伝えたい。でも、メールでは目的に合わせて伝える情報を取捨選択しなきゃならない。だったらもう「追伸」に書いちゃおう!と、尾中さんなら思うかもと。
もちろん、配信方法は構成以外にも、「人となり」や「あたたかさ」「ていねいさ」を盛り込むために、文体やことば選びでも工夫しました。また、同じ考え方で、2通目、3通目もリライトしました。
戸田さん 松澤さんの知見に基づいて「絶対こうした方がいい」ということは、曲げずに言っていただけたんで、それが成果につながったと思います。また、実際にそれをやってみて、僕らの知見にもつながったことが多かった。すごいプロフェッショナルの方とやれてるんだなと思いました。
尾中さん その方が良いと思っても「なんとなく違う」「なんとなくていねい通販っぽくない」と感じることがありました。それをお伝えすると、くみ取ってくださり、納得できる代案が出てきたのもすごかった。
松澤 ありがとうございます。それ、絶対書きます(笑)。
花房 御社のメール開封率は全体的に見てもものすごく高いので、元からお客さまとのつながりがすごく強い。そんなお客さまがいて、その場所で求められている「らしさ」を体現できたからこそ、成果につながったんだと思います。だから多分、他社で今回僕らがやったような施策を丸パクリしても、同じ結果にはならないはず。テクニカルなものは転用できますが、「らしさ」を表現する方法は千差万別だから。そもそも、数字のマイナスインパクトが大きい「10日前メール」を続けるという判断が最も御社らしいですし (笑)。
【定量的な成果】定期中止率・メール解除率は新施策の方が良い結果に
深野さん 今回、1~3通目の「10日前メール」を修正しました。これは2017年12月時点の結果ですが、初回の結果は11月頃に出ています。赤いセルが良かった方の結果なので、11月も12月も新メールの方がかなり良いです。メールの解除と定期の中止は、どちらも新メールの方が良く有意差も出ました。開封は、文脈そのものを変えたこともあり、有意差もそこまで大きくはないので特に気にしていません。
この結果で年間の定期中止率をシミュレーションすると、メールを3本修正しただけで、約2000万円の定期顧客の解約を回避できると結論づけられました。
和田 11月頃に初めてそのお話を聞いた時、私と花房、松澤で大騒ぎしました。
戸田さん 僕も思わず「ライティングだけでこんなに変わるんや!」と言うた(笑)。
松澤 それを聞いた時が一番うれしかったです…。
【定性的な成果】お客さまからの返信メールに変化が!それが一番うれしい
戸田さん でも、僕たちが一番うれしかったのは、数字面での成果じゃない。それは、尾中個人に宛ててお客さまからの返信がき始めた。そこでの、お客さんのことば使いが大きく変わったことです。
尾中さん いままでは、返信があっても「発送止めてください」みたいなドライな感じだった。でも、新メールにしてからは、ほっこりした会話になりました。「尾中さん、わざわざ教えてくれてありがとう。でも、変更お願いしてもいいですか」みたいな。メールから私の存在が感じられるから変わったんだと思います。
戸田さん これこそCRMの神髄というか、まさに僕らが求めていたことです。ただの「業務連絡」から「コミュニケーション」に変わる。その瞬間を体感できたのが、一番うれしかった。ちなみに、その返信メール、報告用にまとめてあるので、いまお見せできますよ。
和田・花房・松澤 見たい!
一同 おおおー!ほんまや!
和田 時間をかけてこの返信メールを書いてくださっているのが手に取るようにわかる文章ですね。うれしいなあ。こういうお客さまからのリアルな反応が見られると、より御社が大切にしている価値観や独自の考え方を理解しやすいので助かります!
戸田さん これからも僕らの価値観をもっとご理解いただいて、それを体現する方法を御社のノウハウとあわせて教えほしい。それを積み重ねていけば、もっとお客さまと関係性を深められるはずなので、これからも一緒にもっといろんなものを形にしていけたらなと思います。
シナジー一同:ありがとうございます!!
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