【連載:定着の壁 第3回】4割が、週の半分以上を“作業”に使っている。ノンコア業務と業務停滞が、現場の思考時間を奪う構造

こんにちは。シナジーマーケティングの和田直之です。
前回は、業務環境そのものが離職意向につながっている実態を見てきました。
特に、過度な期待、コア業務に時間を割けない不満、相談相手の不在が、現場の継続意欲を削る大きな要因になっていることがわかりました。
では、その「時間を割けない」という感覚は、何から生まれているのでしょうか。
今回の第3話では、現場の時間を奪っているものの正体、つまりノンコア業務の多さと、日々の小さな業務停滞に焦点を当てます。
全5回で扱うテーマ
全体を通して扱うテーマは、次の通りです。
- 第1話:熟練前提ではない現場で、なぜ定着設計が重要になるのか
- 第2話:業務環境が離職意向につながる構造
- 第3話:ノンコア業務と業務停滞が思考時間を奪う問題
- 第4話:引き継ぎ・孤立・支援不足が定着を阻む理由
- 第5話:現場に定着する組織は何を重視すべきか
第3話:ノンコア業務と業務停滞が思考時間を奪う問題
マーケティングや広報の仕事というと、企画、戦略立案、コンテンツ制作、顧客理解、施策改善など、比較的“考える仕事”のイメージが強いかもしれません。
もちろん、それは間違っていません。
ただ、実際の現場では、それらの本来業務に十分な時間を使えていないケースが少なくありません。
業務時間の4割が“作業”に費やされている現実
今回の調査では、
ノンコア業務(操作・設定・エラー対応・マニュアル調査など)が業務時間に占める割合
についても聞いています。
その結果、「80%以上」8.7%と「50%〜70%」31.3%を合わせて、40.0%が業務時間の半分以上をノンコア業務に費やしていることがわかりました。

この数字はかなり示唆的です。
約4割の実務者が、企画や判断ではなく、操作や設定、確認、エラー対応、マニュアル調査といった作業に、業務時間の半分以上を使っている。
しかも「80%以上」、つまり“ほぼ作業で終わる”層も1割近く存在しています。
ここで重要なのは、ノンコア業務がまったく不要だと言いたいわけではない、ということです。
どんな仕事にも一定の運用作業は必要です。
問題は、その比率です。
専門性を発揮すべき人材が、本来の企画・思考・改善に十分な時間を使えず、日々の運用や確認に大半を取られているとしたら、それは単なる忙しさではなく、業務配分の歪みです。
こうした歪みが積み重なると、現場の感覚はどうなるでしょうか。
「忙しい」のに、手応えがない。
一日中動いているのに、本来やるべき仕事が進まない。
成果が出ないわけではなく、成果を出すための時間が足りない。
この感覚が、前回見た「コア業務に時間を割けない不満」へとつながっていきます。
「小さな停滞」が思考の余白を奪い取る
さらに、ノンコア業務の負荷は、単に時間を奪うだけではありません。
それはしばしば、業務の停滞とも結びついています。
今回の調査では、
ツールのマニュアルやヘルプを見ても解決できず、業務が止まったり、どうすればよいかわからなくなった経験があるか
も聞いています。
結果は、「よくある」5.7%、「たまにある」34.6%で、合計すると40.3%が何らかの業務停滞を経験しているというものでした。

この結果は、少し丁寧に見る必要があります。
たしかに、59.7%は「ほとんどない」「全くない」と答えており、多くの場面では大きな停滞なく対応できているとも言えます。
つまり、現場が完全に機能不全に陥っているわけではありません。
ただし、問題はそこではありません。
完全に止まるほどではないが、部分的につまずく場面が一定頻度で存在することが重要なのです。
操作に迷う。
設定の意味がわからない。
エラーの原因が追えない。
ヘルプを見ても、今の自分のケースに当てはまらない。
こうした“小さな停滞”は、一つひとつは短くても、積み重なると大きなロスになります。
そして厄介なのは、このロスが分断されて見えにくいことです。
会議で可視化されるほど大きな問題ではない。
しかし、現場では確実に日々の時間を削り、集中を切り、判断の余白を奪っていく。
これが、ノンコア業務と業務停滞が組み合わさったときの怖さです。
現場が本当に求めているのは「休息」以上の“価値創造”
ここで興味深いのが、「もし使いやすいツールによって業務時間が大幅に削減できたら、その時間を何に使いたいか」という問いへの回答です。
最も多かったのは「コンテンツ制作」28.5%、次いで「企画・戦略立案」24.9%でした。
「休息(リフレッシュ・残業削減)」23.4%も上位ですが、それを上回ったのは創造的な業務です。

この結果は、現場の本音をよく表しています。
担当者は、ただ休みたいだけではありません。
もちろん休息も重要です。
ただ、それ以上に、本来やるべき仕事に時間を戻したいと考えています。
コンテンツを作りたい。
戦略を考えたい。
新しい施策に挑戦したい。
学びたい。
顧客や現場と対話したい。
これらはすべて、マーケティングや広報の価値の源泉になる仕事です。
つまり現場は、「仕事量を減らしたい」というより、“作業”を減らして“価値を生む仕事”に戻りたいのです。
ここが非常に重要です。
ツールやAIの導入価値は、単なる効率化ではありません。
本当に問うべきなのは、削減できた時間をどの業務へ再配分できるかです。
もし削減した時間が、また別の作業で埋まるなら、現場の実感は変わりません。
一方で、その時間が企画、改善、顧客理解、仮説検証に戻るなら、現場の手応えは大きく変わるはずです。
現場を疲弊させないために、今考えるべきこと
第3話で押さえておきたい結論は、ここです。
現場を疲弊させているのは、派手な障害ではない。
細かい作業と小さな停滞の積み重ねが、思考時間を奪っている。
ノンコア業務の多さも、マニュアルで解決しきれない小さな停滞も、1つずつ見れば些細に見えるかもしれません。
しかし、それらが積み重なることで、現場は本来業務に使うべき時間を失い、成果より前に“余白”を失っていきます。
それが、疲弊と離職意向の土台になります。
では、なぜこうした負荷が、担当者交代のたびに再生産されてしまうのでしょうか。
次回は、引き継ぎ課題、属人化、孤立に焦点を当てます。
引き継げない、相談できない、だから続かない。
そんな「定着の壁」を、もう一段深く見ていきます。
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